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悪役やるならこんな風に  作者: リボン会長


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49話

 

 扉の先に道は無かった。

 真っ暗闇を落下していく。

 スカートも髪もバッサバッサとなびき、手で抑えようにも2本では足りない。

 周りが見えないので捲れ上がっていてもまぁ良いかとも思ったが、この暗闇が狭いのか広いのかもわからない。どこかにすそや髪が引っかかりでもしたら大惨事だ。

 なんとかしてスカートと髪をまとめる。


「ファルファレルロ様、これ、いつまで落ちるんですか?」


 背中に張り付いたままの本に話しかける。


「いつまでも」


 返事を聞いて項垂れる。

 どうやらこれも試練のようだ。


「あーどーしよー」


 行動を起こさない限り地面に激突することが無い、それが分かっただけでも一安心。

 まず周囲を確認したい。そのためにも光魔法が使いたいけれど、それを手に入れるための試練だ。

 炎魔法を使ってみるか?狭い空間だった場合自分も燃えそうで非常に試したく無い。

 なぜ私は空を飛べるようになるらしい呪文イーエーリーを練習してこなかったのか。あ、いや、基礎呪文ちゃんと使えるようになってからって、ね、分かってる分かってる。


「いやそれにしたって周りにずっと人がいるんだもん。無理くない?」

「突然なんだ?」

「今だから声に出して言える。みたいな」

「ふーん」


 ファルファレルロはもう、私の独り言に突っ込んでも仕方がないことを学習している。流してくれるようになったので快適だ。

 そろそろこの落下を終わらせる方法を考えたい。

 スカートを抑える腕も疲れてきた。


「せめてホバリングしたい」


 ここでようやく気づいた。


 あるじゃん、方法。


 私は髪やスカートを抑えるのをやめ、背中に両腕を回す。


「ん?」


 と、ファルファレルロの声が聞こえたが無視して両手でしっかり握って掲げる。


「さあ飛ぶのだ!」

「おのれぇぇええええええ」


 ファルファレルロも叫ぶんだなぁ。がんばれがんばれ。


 普段、本が飛び回っている姿を見ているではないか。

 ちょうど良いファルファレルロを持っていることを思い出した私は、箒でも絨毯でもなく、本で空を飛ぶ。

 たぶん飛んでいる。


「ゆっくり落ちてます?」

「もうすぐ地面だ」

「え! あ、はい!!」


 顔を下に向けてみたが、やっぱり真っ暗で何も見えない。

 しかし先ほどまで「落ち続けていた」が、それが終わるとファルファレルロが言った。落下への抵抗か何かわからないが試練の1つを突破したと前向きに考える。

 いつ地面に足がつくのだろうとビクビクしていたが、ファルファレルロがさらに減速をしてくれたので怪我なく降りることができた。


「うっ」


 それとは別に、地面に足がついた瞬間から魔力を吸い取られた。

 試練の扉を呼ぶにもそこそこ魔力を使ったので、疲れもあってか吸い取られる感覚に気持ち悪さを覚える。

 ファルファレルロを両腕に抱え込んでその場に座り込む。


「まだ魔力に余裕があるはずだ」

「鬼! 悪魔!」

「悪魔だ」

「そうでした!」


 ファルファレルロの言う通り、まだ半分近く魔力は残っている。

 だが意識がある中で一度にここまで魔力を減らしたことがなかったので脱力感と気持ち悪さで立っていられない。


「う~ん、ほんとに無理」

「だらしがない」

「むっ」


 魔力の流れが止まり、一気に明かりが灯る。


「わっ」


 広い空間。

 まるでお城のよう。それこそ、色々なところが王宮に似ている。

 扉をくぐるまでいたサロンの雰囲気に似た、でも確実に違う黄色い部屋。


「ギルティネの居住」

「まじか」


 とんでもないところに来てしまった。

 バティン、ディリエル、カシモラル、たくさんの顔が浮かぶ。

 あれこれ聞かれて、どこまで答えられるだろうか。非常にめんどくさい。

 いやそれよりも、


「生きて帰れるの?」


 私の不安に返事をくれない。

 やるしかない。

 試練をやりきって、生きて帰るんだ。

 ファルファレルロを抱え直して立ち上がる。

 四方に設置された扉のうち1つがゆっくり開く。


「ここからどうぞ、って意味なんだろうけど、その前に地図」

「ふ~ん」


 私はファルファレルロをこじ開ける。


「地図があると、よく分かったな」

「王宮の古い地図はあるって言ってたじゃないですか。ならあるでしょ」

「地球という世界に住んでいる人間はみな、ハーゲンティのような性格なのか?」

「え? 知らないですよ、そんなの。私が生まれ育った日本っていう国はわりと慎重で堅実?な人が多かったです」


 私もそうでしょう? と続けたかったけれど、ファルファレルロが「周囲の人間たちが気の毒だ」なんて言ってきた。


 な〜んだって〜?


 言い返してやろうと息を吸い込んだあたりで地図が光った。


「あ、ここ、エントランスホールだったんだ」


 椅子などの家具類は見当たらないが、暖炉が置かれているのでてっきりどこかの部屋だと思った。洋館の造りが謎過ぎる。

 地図を指でなぞるためファルファレルロを床に置く。


「何をする」

「地図をじっくり見たくて?」

「これで良いだろう」


 ファルファレルロがホバリングする。

 そうだったそうだった。

 またファルファレルロの特徴が頭から抜けていた。


「うん、見やすい」

「ふんっ」


 地図に指を置き、開いた扉へのんびり向かう。

 心の声のすべてが伝わるわけではないが、喜怒哀楽は伝わってしまう契約だ。

 「恐怖をごまかしたい」「震えないように笑顔を作りたい」そんな緊張が伝わったうえで、ファルファレルロは私の茶番に付き合ってくれている。


 悪魔に対して変に情が湧いてしまうではないか。


 この感情も伝わっているのだろうか。

 なるべく余計なことを考えないようにしようと視界いっぱいに地図を映した。










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