バレちゃった
「急に呼び出してごめんなさいね」
最近急に呼び出されることが多いなとマサキは思った。
今回はサラではなく、ミカミアカネに呼び出されていた。
まだレイと二人だった頃、マサキを強化してくれた例の実が取れたゲートで少し協力しあったのかアカネである。
後にイリーシャを助けることになる出来事でも、人を紹介してもらった。
ただその後は特に連絡を取ることもなかった。
回帰前にマサキが親しかったわけでもないし、連絡するような用事もない。
アカネの方もマサキに連絡してくるようなことなどなかったのである。
それなのに突然アカネから連絡があった。
「それで、何の用だ?」
「あら、冷たい言い方ね? デートのお誘いかもしれないでしょ?」
「はは、どこかで聞いたやりとりだな。まあ、ミカミさんのお誘いなら俺は受けるよ?」
「ごめんなさい、あなたは好みじゃないの」
「どうして俺が振られる方向に?」
誘ってきたのはアカネの方だ。
以前似たような会話をしてマサキがアカネのタイプでないことは分かっている。
でもアカネの方から誘うというのなら、と少し思った。
アカネは美人だ。
嫌だというほどの理由もない。
「冗談はさておいて、本題は?」
「あなたに聞きたいことがあるの」
アカネは運ばれてきたカフェラテを一口すすり、ジッとマサキの目を見る。
「聞きたいこと?」
マサキ自身、アカネに呼び出されて何の用事か考えた。
デートのお誘いでないことは分かりきっている。
だからといってアカネから連絡してくるような理由も全く思いつかなかった。
「最近巷を騒がせている覚醒者のこと、あなたは知っているかしら?」
「巷を騒がせる覚醒者?」
「マスクマン、と呼ばれる覚醒者よ」
「……ああ、知ってるよ」
アカネの言葉にマサキはドキッとする。
マスクマンを知っているどころか、その正体はマサキたちのことである。
「私はね……あなたがマスクマンなんじゃないかと思ってるの」
刺すような視線にマサキの心臓はさらに跳ね上がる。
どう答えるべきか分からなくて、マサキの顔は引きつってしまう。
いつかはバレるだろうと思っていた。
けれども実際に目の前でマスクマンだと突きつけられると動揺してしまう。
「理由を聞いてもいいか?」
取り繕うには少し遅かったかもしれないが、マサキは冷静を装うようにアイスコーヒーを飲む。
「最近話題になっている配信者さおりんって知ってるかしら?」
「さおりん? ……いや、知らない」
マサキは肩をすくめる。
「覚醒者の配信を行ってる子なんだけど……」
「意外だな。そんなの見てるんだ」
「いいえ、私はそんなものに微塵も興味ない」
動画配信、しかもさおりんなんて名前でやっているものをアカネが見ているとはマサキとしては意外だった。
しかしアカネの冷たい否定を聞くと、普段は決して聞いていないようである。
「ただ知り合いがね。たまたまこの間みせられたのよ」
「それがマスクマンとなんの関係が?」
「さおりんってのマスクマンの追っかけやってるのよ。正体を突き止めようとしてるの」
「……そうなのか」
「考察動画も上げていてね。相手の動きを止める強力なCC系スキルの持ち主……というがマスクマンの中の犬マスクらしいわね」
またしてもドキッとさせられる。
マサキの瞬間拘束は相手の動きを無理矢理止めるものでCC系スキルである。
実を他の人に取らせないようにするのに、アカネの協力が必要であった。
だから目の前でスキルを使っている。
生配信の中でも瞬間拘束は使ったことがある。
バレにくいようにはしているが、それでも見る人が見たら分かってしまうかもしれない。
「あなたでしょ? 最近話題の生配信マスクマンは」
「…………あの、ミカミさん?」
「ふん、安心しなさい。誰にもいうつもりないわよ」
下手に出ようとしたマサキの意図を察したようにアカネは鼻で笑う。
「知りたい人は多いでしょうね。マスクマンの正体……いえ、生配信の秘訣をね」
アカネも生配信の技術は気になる。
「でも私は配信なんてするタイプじゃないもの。もし仮に私が生配信の秘密を知って、それができるようになったら何させられるか……」
アカネはため息をついた。
生配信の秘密を知って、生配信ができるようになったらアカネが所属するギルドでも生配信を行うだろう。
見た目がいいアカネはきっと生配信に出させられる。
そうなったら厄介だと考えていた。
マサキにはお世話になった。
マスクマンの正体がマサキだと知れただけでアカネは満足である。
言ってしまえば本当に気になったからただ聞きにきたというだけなのだった。
「ただ気をつけなさいよ。さおりんっての私たちが攻略したゲートの覚醒者名簿を手に入れようとしているらしいわ。いつか見つかるかもね」
もう一つの理由として、マスクマンなら警告してやろうというところがあった。
「……気をつける。ありがとう」
「じゃあここのお代はあなた持ちね?」
「それぐらいいくらでも出させてもらいます」




