↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地下迷宮ひとり歩き  作者: 夜朝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/60

21.五階 〜朱雀の次には白虎のもとへ〜

■地下迷宮 五階 ナイラ 治癒術師Lv4 商人Lv2


「はい?」


何だか必ず

引き止められる気がしてきた

ナイラである


困り顔で笑うと

くるりと踵を返して

朱雀のほうを向き直した


なんでしょう?

と彼女が問いかけると

朱雀は少し火勢を強めて言う


「君はその黒い髪は地毛だな?

 白虎姉さんの元へ赴くには

 相応しくない格好だ

 ──白く染めるか

 もしくは落ちないように

 まとめ髪にできないか」


「黒髪を白髪にするのは

 白いのを黒くするほど楽じゃないですよ

 まとめておきます」


でも何故?

髪の毛をまとめて団子を作り

そこにピンを差していく娘を見ながら

朱雀はややためらいながらも

手短に告げた


「白虎姉さんは白い虎──

 猫に似た大型の獣の姿をしているが

 あの毛は元々は黒かったんだ

 白くなったのは身の衰えからだと

 気にしている

 だから艶のある黒髪を見ると

 不機嫌になるのだな」


「……ぬ

 布も巻いていこうかな」


「ああ

 ターバン的なものがあるなら

 使うと良い

 僕からは以上だ

 ナイラ

 君の道行に幸いがあるように」


「ありがとうございます!」


ナイラは深々と辞儀をしてから

踵を返すともう立ち止まらずに

歩き出した


またいったん麒麟のそばに設置した

テントの中に戻るのだ


いっそのこと

本日の探索をここまでにして

白虎の元へは明日

向かうことにしても良い


懐中時計を見ると

もう夕方だった


いつの間にか

昼食を抜いてしまっていた


少し早いけど

晩飯にしようと

テント内に座り込んで

上半身だけ伸びをした


本日のメニューは

昼食と晩飯の合体なので

少し豪華にしようと思う


角切り肉を干したものを

乾燥した野菜を煮込んだ

ホワイトシチューに突っ込んで

ぐつぐつと具が柔らかくなるまで

テントの外に組んだ

炭火コンロで煮ていく


五階にくる前に一度

地上に戻っているから

まだ食材には余裕がある


しかし食べることが好きなぶん

料理も上手だったら良かったのに


ナイラはそっち方面のスキルは

からっきしでむしろヤムのほうが

上手かったくらいだ


今も煮込みこそすれ

味付けは市販のルーのみ投入したきり

時々焦げ付き防止に鍋をかき混ぜて

三十分ほど経っただろうか

ようやく鍋を火から下ろして

シチューを皿に盛った


それをスプーンでひと口

美味しいけど何か足りないなと考え

塩コショウを加えてみるも

ぱっとしない


よく分からないが不味くはないので

追求するのはやめて

汁を吸って柔らかくなった

野菜や肉を食べて

うんうんとうなずいた


充分美味しい

最後の一味が足りてない気も

しないではないが

充分美味しいから

よしとしておく


ナイラは治癒術師の長衣を脱ぐと

おしぼりで身を清めてから

眠りに就いた


 * * *


次の朝も

もちろん悪夢は見ない


この階には

戦闘を仕掛けてくるモンスターは

いないのだから


朝日だけは恋しかったが

懐中時計に組み込まれている水晶のパーツが

小さく振動して目覚めを促すので

寝過ごすことはない


ナイラは穏やかな寝覚めを迎えて

寝袋から頭上に腕を伸ばすと

ぐっと身体全体を伸ばした


昨夜の残りのシチューとパンで

朝食を済ませると

テントを畳まずに出発する


向かうのは白虎のところだ


白虎はその名の通り

白い虎の姿をしていた


かなり大きい

もし後ろ足で直立したら

ナイラの倍くらいの背丈になりそうな

白と銀色の縞模様


遠くからでも分かる

白銀のオーラは

近付けばいよいよ眩しく

目が焼かれるようだった


ナイラは目の前に手をかざしながら

あいさつのかたわら

交渉してみた


「白虎様ごきげんよう

 ところであなた様のご威光が眩しすぎて

 このままでは失明もあるかと

 畏怖しております

 大変申し訳ないのですが

 何とかもう少しそのオーラを

 抑えていただくことは叶いませんでしょうか」


「分かった……」


手をかざして目蓋を閉じていても

まだ眩しさに目が痛かったのだが

短いぼそぼそした返事が聞こえると同時

徐々に光量が絞られていき

やがて他の四神たちと同じくらいの

明るさにまで落ち着いた


「ありがとうございます」


手を下ろして目を開き

深めの辞儀をひとつ


「良いよ」


返事はそれだけ返ってきた


何となく会話が広がっていかない気がする

こちらと仲良くしてくれる気がない相手

ということなのだろうか


ナイラはもう本題を切り出して

さっさと用事を済ませて立ち去るべきか


それとも何か会話の糸口を探して

もっと情報を引き出すべきか


どうしたものか困っていた


だが

手土産を持ってきていたことを思い出して

ナップザックの中から取り出すと

両手で白虎へ向けて差し出した


「こちらは白虎様への献上品です

 よろしければ召し上がってください」


「わあレモン……大好き

 美味しいわ」


「はい

 麒麟様から白虎様は酸っぱいものが

 お好みだと伺いましたので」


「ありがとう……

 何かお礼をしなくては」


「良いんですよお礼なんて」


「そう?

 でも何かしたいわ」


ナイラは四神たちは皆

貢ぎ物に弱いのだなと

脳内で結論付けた


そして

この迷宮の攻略情報を

求めたのだが

白虎は残念そうに

目を伏せ首を振った


自分の知ることと

ナイラが知っていることには

そう差異はないだろうと言うのだ


やっぱりあれこれ話をする

つもりはないということだろうか


広がらないなあと

ナイラは寂しくなったが仕方ない

同意の意味で下げた頭をまた上げた


「そうですか

 残念

 そしたら麒麟様の謎を解く

 ヒントさえいただければ

 それで充分でございます

 すぐにお暇(いとま)します」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。