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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第九十一話 避難民のために新しい村を作ったら、地元の住民が食料を奪われると反対し始めた

アルディナ王国北部。

国境近くの平原。

「……ここに村を作る?」

エリクが尋ねた。

悠真は頷いた。

「うん」

目の前には、広い土地があった。

かつては軍の補給基地だった場所。

今は使われていない。

近くには川が流れ、古い道路も残っていた。

「……ここなら、避難民が暮らせるかもしれない」

悠真が言った。

エリクは頷いた。

「畑も作れそうだな」

「うん。ただし、土の状態を調べないとね」

その後、王国は避難民のための新しい集落を整備する計画を発表した。

住宅。

共同倉庫。

井戸。

診療所。

学校。

そして、小さな畑。

だが、計画が発表されると、近隣の村で反対運動が起きた。

「……冗談じゃない!」

村人たちが叫んだ。

「俺たちの食料だって足りないんだ!」

「避難民が来たら、もっと不足する!」

「仕事も奪われるぞ!」

エリクは、集会所で村人たちの声を聞いていた。

一人の男が叫んだ。

「……お前たちは、俺たちの暮らしを考えているのか!」

エリクは、静かに答えた。

「……考えています」

男は顔をしかめた。

「だったら、避難民を受け入れるな!」

エリクは、しばらく黙った。

そして、「……俺も、十年前は飢えていました」

村人たちが黙った。

エリクは続けた。

「だから、避難民の気持ちが分かります」

「でも、皆さんの不安も分かります」

男が顔を上げた。

エリクは続けた。

「食料が足りなくなるのは怖い」

「仕事がなくなるのも怖い」

「知らない人が大勢来るのも、不安だと思います」

村人たちは黙っていた。

エリクは、地図を広げた。

「だから、新しい村を作るだけでは終わらせません」

「……どういうことだ?」

エリクは説明した。

「新しい水路を作ります」

「道路も修理します」

「共同倉庫も増やします」

「そして、避難民にも仕事をしてもらいます」

男は眉をひそめた。

「……俺たちの仕事を奪うんじゃないのか?」

そのとき、地元の農民の一人が立ち上がった。

「俺の息子も、去年は腹を空かせていた。避難民を嫌っているわけじゃない」

男は荒れた手を開いた。

「ただ、井戸が一つしかない。水を分けたら、うちの畑が枯れる」

悠真は用意していた計画書を閉じた。

「先に井戸を掘ります。水量を測って、足りなければ入植人数を減らします」

「それなら、俺たちも工事に出る」

エリクは驚いて男を見た。

反対の声の裏には、守りたい生活があった。

数字を確かめずに善意だけを押しつけてはいけない。

エリクは首を振った。

「地元の人も、同じ条件で雇います」

「……何?」

「道路や水路が整えば、皆さんの村にも利益があります」

エリクは続けた。

「さらに、食料の備蓄は新しい村だけでなく、この地域全体で増やします」

村人たちは、顔を見合わせた。

エリクは、静かに言った。

「避難民だけを助けるんじゃありません」

そして、「この地域に暮らす人たち全員が、生き延びられるようにしたいんです」

長い沈黙。

やがて、一人の老人が口を開いた。

「……昔、俺たちも助けてもらった」

村人たちが振り返った。

老人は続けた。

「十年前、食料が足りなかったときだ」

「ベルナ村から、ジャガイモが届いた」

エリクは頷いた。

老人は、静かに言った。

「……今度は、俺たちが助ける番かもしれんな」

その言葉に、村人たちは少しずつ頷いた。

避難民の家を建てる場所には、昔から地元の子供たちが遊ぶ草地があった。

「空き地じゃない」と住民が言った。

悠真は図面を丸めた。

「では、どこなら双方が暮らせるか、もう一度決めましょう」

避難民の代表も口を開いた。

「私たちだって、誰かの場所を奪いたくて来たんじゃありません」

会議は夜まで続いた。

最後に決まったのは家の位置だけでなく、井戸と学校を共同で使うことだった。

こうして、新しい集落の建設が始まった。

名前は――。

希望村。

だが、建設が始まって間もなく、王都から緊急の知らせが届いた。

【国王アルベルト三世、病に倒れる】

エリクは、手紙を握りしめた。

「……陛下が?」

悠真も、顔を上げた。

王国を支えてきた国王が、倒れたのだった。

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