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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第九十話 食料は倉庫にあるのに買えない人が増えたので、悠真は仕事と食料を同時に配る制度を作った

王都アルディア。

中央市場。

「……麦はあるんです」

商人が言った。

悠真は頷いた。

「はい」

「でも、売れないんです」

「……どうして?」

商人は、静かに答えた。

「買う金がない人が増えたんですよ」

悠真は、言葉を失った。

市場には食料がある。

倉庫にも備蓄がある。

だが、失業した人々には買えない。

「……そうか」

悠真は、静かに呟いた。

食料不足だけが、飢えを生むわけではない。

食料を買う手段を失っても、人は飢える。

数日後。

王宮。

「……公共事業?」

財務大臣が尋ねた。

悠真は頷いた。

「はい」

「また金がかかるのか!」

悠真は苦笑した。

「……かかります」

財務大臣は、深いため息をついた。

「……説明してくれ」

悠真は地図を広げた。

「今、王国には必要な仕事がたくさんあります」

「雪で壊れた道路の修理」

「水路の補修」

「備蓄倉庫の改修」

「住宅の断熱工事」

「森林の再生」

財務大臣は頷いた。

「……確かにな」

悠真は続けた。

「一方で、農業や商売が不調になり、仕事を失った人々がいます」

国王が顔を上げた。

「……なるほど」

悠真は続けた。

「なら、公共事業で雇用を作りましょう」

「賃金を支払い、人々が食料を買えるようにします」

財務大臣は考え込んだ。

「……食料を配るのではなく、仕事を与えるのか」

悠真は頷いた。

「働ける人には、そういう方法もあります」

そして、「ただし、病人や高齢者、子供など、働けない人には直接支援が必要です」

国王は頷いた。

「……よかろう」

こうして、王国緊急雇用計画が始まった。

一か月後。

王都郊外。

「……仕事がある!」

一人の男が叫んだ。

以前は荷運びの仕事をしていた。

だが、商業活動が縮小し、失業していた。

家には、妻と二人の子供がいる。

「……本当に雇ってくれるのか?」

現場監督は頷いた。

「もちろんだ」

道路補修に集まった男の一人が、配られた食料袋を突き返した。

「足が悪くて、みんなほど働けない。こんなものを受け取る資格はない」

エリクは袋を拾った。

「仕事をした人に食料を渡す制度です。でも、働けない人を飢えさせる制度ではありません」

悠真は役人に、二つの窓口を作るよう頼んだ。

働ける人には道路や水路の修繕の仕事を。

病人、高齢者、介護を担う家族には、労働を条件としない配給を。

財務大臣は帳簿を睨んだ。

「支出が増える」

「増えます。でも、病人まで働かせれば、もっと大きな代償を払う」

その男は袋を受け取り、しばらくうつむいていた。

「……治ったら、道具の手入れならできる」

エリクは笑った。

「そのときは、ぜひ頼む」

「……何をすればいい?」

「水路の補修だ」

男は、道具を受け取った。

「……分かった!」

その日。

男は久しぶりに賃金を受け取った。

そして、帰り道に市場へ立ち寄った。

「……麦をください」

商人が頷いた。

「はいよ!」

男は、麦袋を抱えて家へ帰った。

「……ただいま!」

妻が振り返った。

「……あなた?」

男は笑った。

「仕事が見つかった!」

そして、麦袋を差し出した。

「今日は、みんなで食べられるぞ!」

子供たちが歓声を上げた。

妻は、涙を浮かべた。

「……よかった」

数か月後。

王都では、道路や水路の修理が進んだ。

備蓄倉庫も改修された。

そして、仕事を失った人々の一部が、再び収入を得られるようになった。

財務大臣は、報告書を見つめた。

「……金はかかった」

悠真は頷いた。

「はい」

財務大臣は続けた。

「だが、道路が直り、食料輸送も改善した」

「……そうですね」

「市場での取引も、少し回復している」

悠真は笑った。

「よかったです」

財務大臣は、静かに言った。

「……無駄な支出ばかりではなかったようだ」

悠真は頷いた。

「はい」

だが、長い冬は、まだ終わっていなかった。

仕事と食料を結びつける制度が始まると、一人の女性が配給所に残った。

「子供の看病で働けません。それでも食べられますか」

悠真は制度の紙を読み直した。

そこには、働けない人のことが書かれていなかった。

「働ける人には仕事を。働けない人には別の支援を用意します」

「誰が決めるんです」

「一人の役人に任せません。相談できる窓口と、異議を申し立てる方法を作ります」

その日、窓口の外には杖をついた老人と幼い子を抱いた母親が並んだ。

工事に出られない二人にも、同じように食事が必要だった。

エリクは配給札に「労働免除」と書きかけ、筆を止めた。

「免除じゃない。最初から働けない人の分も制度に入れよう」

制度は完成したのではない。

ようやく、見落としていた人の声を聞いたのだった。

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