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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第八十九話 温室で苗を育てたら収穫が増えたので、今度は水が足りなくなった

アルト村。

初夏。

「……育ってる!」

エリクが叫んだ。

試験用温室で育てた苗は、外の畑へ移されていた。

寒さの影響を受けたものもあった。

だが、適切な時期に植え替えた苗の一部は、順調に成長していた。

悠真は頷いた。

「……よかった」

エリクは笑った。

「これなら、収穫を増やせるかもしれないな!」

「うん」

悠真も笑った。

「ただし、まだ試験段階だよ」

そのとき。

村長が、慌てて駆け寄ってきた。

「……悠真殿!」

「どうしました?」

「水が足りません!」

悠真は固まった。

「……え?」

村長は続けた。

「今年は雪解け水が多かったのですが、その後、雨が少なくて」

「畑へ流す水が不足しています!」

悠真は、空を見上げた。

冷害。

そして、少雨。

作物にとっては、厳しい条件だった。

「……なるほど」

エリクが尋ねた。

「……どうする?」

悠真は、しばらく考えた。

そして、「……水の使い方を見直そう」

数日後。

村の集会所。

悠真は、農民たちに説明した。

「まず、畑ごとの水の必要量を調べます」

一人の農民が尋ねた。

「……全部の畑に同じ量を流すんじゃないのか?」

悠真は首を振った。

「作物や土の状態によって、必要な量は違います」

そして、水路の取り分を決める会議で、下流の農民が立ち上がった。

「上流が苗を増やせば、こっちは飲み水も足りない!」

悠真は図面を畳んだ。

水を節約する方法を教えれば済むと思っていたが、誰が先に使うかを決めなければ争いは終わらない。

「飲み水を最優先にします。畑への取水は時間帯を分け、使った量を記録しましょう」

上流の村長が不満そうに言う。

「記録係は誰が出す?」

「両方の村から一人ずつ。数字が違えば、現場で確かめる」

最初の週、畑に回せる水は期待より少なかった。

だが下流の井戸が枯れることはなかった。

「水は増えていない」

悠真は言った。

「だから、奪い合わずに済む決め方を作るんだ」

悠真は、ひびの入った水路を指さした。

「水路から漏れている水も調べましょう」

村長が頷いた。

「……確かに、古い水路がある」

悠真は続けた。

「さらに、土の表面を覆って水分が蒸発しにくくする方法も試します」

農民たちは頷いた。

その後、水路の補修が始まった。

壊れた部分を直す。

水漏れを減らす。

畑ごとに水を流す時間を決める。

そして、乾燥しやすい畑では、適切な被覆材を使って土の水分を保つ。

数週間後。

「……水が長持ちする!」

農民たちが驚いた。

エリクも頷いた。

「……すごいな」

悠真は笑った。

「新しい水を作ったわけじゃないけどね」

エリクは首を傾げた。

「……どういうこと?」

悠真は答えた。

「無駄にしていた水を減らしたんだ」

エリクは頷いた。

「……なるほど」

一週間後、上流の農民が記録板を指さした。

「うちは約束を守ったのに、苗が枯れた」。

下流の農民は目を伏せた。

悠真は成功だとは言えなかった。

井戸を守った代わりに失われた苗がある。

二つの村は翌年の作付け面積を減らし、乾燥に強い作物を試すことを決めた。

水の争いは、一度の会議で消えるものではなかった。

だが、そのころ。

王都では、さらに深刻な問題が起きていた。

寒冷化によって農村の収入が減り、食料を買う金を失った人々が増えていたのだ。

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