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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第八十四話 薪が足りないので家の隙間を塞いだら、村人たちが暖炉の火を小さくできるようになった

アルト村。

冬を迎える前のある日。

「……寒い!」

クリスが叫んだ。

家の中にいるのに、息が白い。

エリクは暖炉へ薪をくべた。

「……今年は寒いな」

母親が頷いた。

「ええ。いつもより薪の減りが早いわ」

そのとき。

「お邪魔します!」

悠真が入ってきた。

後ろには、村の大工たちがいた。

エリクが首を傾げた。

「……何をするんだ?」

悠真は笑った。

「家を調べに来た」

「……家?」

「うん」

悠真は窓へ近づいた。

手をかざす。

冷たい風が入ってくる。

「……ここだ」

エリクが覗き込んだ。

「……何が?」

「隙間風」

悠真は続けた。

「せっかく暖炉で暖めても、ここから冷たい空気が入ってくる」

さらに、扉の下も調べた。

床板の隙間。

壁の継ぎ目。

屋根裏。

あちこちから冷気が入り込んでいた。

「……なるほど」

エリクが頷いた。

悠真は大工へ言った。

「まず、窓と扉の隙間を塞ぎましょう」

「承知しました」

「それから、屋根裏に乾燥した断熱材を入れたいです」

大工が尋ねた。

「……何を使います?」

「乾燥した藁や羊毛などを試しましょう。ただし、暖炉や煙突の近くには置かないでください」

大工は頷いた。

「火事になりますからな」

「はい。湿気がこもらないようにも気をつけましょう」

作業が始まった。

窓の隙間に詰め物をする。

扉の下に風よけを取り付ける。

屋根裏を補修する。

そして、暖炉の煙道も点検した。

数日後。

「……あれ?」

クリスが首を傾げた。

「暖かい」

エリクも驚いた。

「……本当だ」

母親は暖炉を見た。

「薪を、いつもより少なくしているのに」

悠真は笑った。

「熱が逃げにくくなったんです」

クリスが嬉しそうに言った。

改修の最初の夜、クリスは喜んで扉を閉めた。

「今日は風が入らない!」

ところが母親が眉をひそめた。

「煙が、少しこもっているよ」

悠真は慌てて窓を開けた。

暖炉の火は、空気がなければきれいに燃えない。

「隙間を全部塞ぐのは駄目だ。煙の出口と空気の入口は残す」

エリクは板に大きく書いた。

【煙突の点検】【換気口を塞がない】【就寝前に火を確かめる】

翌日から、講習では節約できた薪の量だけでなく、煙の逆流がないかも調べることになった。

「暖かくするために、人を苦しめたら意味がない」

悠真の言葉に、母親は笑った。

「失敗したなら、次の家では直せばいいんだよ」

「じゃあ、薪が長持ちするね!」

「うん」

悠真は頷いた。

「ただし、換気は必要だよ。煙が室内に入らないように、煙突もきちんと管理しないとね」

その後、アルト村では住宅の改修が広がった。

大工たちは、家ごとに隙間を調べた。

暖炉の煙道を掃除し、危険な家では修理を優先した。

さらに、村の集会所には大きな暖房設備が整えられた。

寒さの厳しい夜には、家で十分な暖を取れない人々が集まれるようになった。

一か月後。

村長が報告した。

「……薪の消費が減りました!」

悠真は顔を上げた。

「どれくらいですか?」

「改修した家では、例年の同じ寒さを想定した場合より、かなり少なく済んでいます」

悠真は頷いた。

「よかった」

だが、村長は続けた。

「ただし、全部の家を直すには、大工が足りません」

悠真は考え込んだ。

「……そうですよね」

そのとき。

エリクが口を開いた。

「……悠真」

「何?」

「村の人たちに、簡単な修理の方法を教えたらどうだ?」

悠真は顔を上げた。

「……なるほど」

エリクは続けた。

「難しい工事は大工に任せる」

「でも、扉の隙間を塞ぐくらいなら、俺たちにもできる」

悠真は笑った。

「いい考えだ!」

こうして、村ごとの住宅改修講習が始まった。

最初の講習で、窓を塞ぎすぎた家から煙が抜けなくなった。

「隙間を全部塞げばいいわけじゃない」悠真は顔を青くした。

鍛冶屋と暖炉職人を呼び、煙突と換気口を点検する手順を加えた。

暖かい家を作るつもりで、住む人を危険にさらしてはならない。

しかし、そのころ北部では、別の問題が起きていた。

薪を確保しようとした人々が、森の木を次々と伐り始めていたのだ。

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