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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第七十八話 隣国から食料支援の要請が来たので、国王が自国の備蓄を分ける決断をした

王都アルディア。

王宮。

「……ヴァルシア王国から、正式な支援要請です」

外交大臣が報告した。

国王アルベルト三世は、書面を受け取った。

『北部地域において、冷害による収穫被害が拡大』

『国内備蓄の放出を開始したものの、山岳地帯への輸送が困難』

『アルディナ王国からの食料支援を要請する』

国王は、しばらく黙っていた。

そして、「……我が国の備蓄は?」

財務大臣が答えた。

「現在、通常消費量の約八か月分です」

悠真は顔を上げた。

五年前、四か月分だった備蓄。

それを十か月分まで増やした。

だが、冷害への対応ですでに二か月分を放出していた。

「……八か月か」

国王が呟いた。

大臣の一人が言った。

「陛下、支援は危険です!」

別の大臣も頷いた。

「我が国も不作なのです!」

「隣国へ送る余裕などありません!」

会議室がざわめいた。

悠真は、静かに口を開いた。

「……陛下」

国王が顔を上げた。

「何だ?」

「支援できる量を、計算しましょう」

「……計算?」

「はい」

悠真は続けた。

「王国全体の備蓄を、無制限に送るわけにはいきません」

「ですが、被害の少ない地域には余剰が残っています」

「その一部を、必要な地域へ送ることはできます」

財務大臣が頷いた。

「……確かに」

悠真は続けた。

「ただし、国内の最低備蓄量を下回らないことを条件にします」

国王は考え込んだ。

「……なるほど」

そのとき。

カールが口を開いた。

「……陛下」

「何だ?」

「十年前、ヴァルシア王国は食料を奪うために攻めてきました」

会議室が静まり返った。

カールは続けた。

「だが、今は違います」

「彼らは、正式に助けを求めています」

そして、王宮の会議では、賛成より先に反対が出た。

「我が国にも飢えた者がいる!」

財務大臣の声に、国王は頷いた。

「だからこそ、数を示せ」

悠真は備蓄のうち国内配給を優先する分と、国境へ回せる分を分けて説明した。

輸送途中の損耗も見込み、次月の収穫見通しが悪化すれば支援量を再審議する。

「これでも足りません」

悠真が言うと、国王は目を閉じた。

「ならば足りないと伝えよ。救える人数を偽って約束するな」

使者に渡された書簡には、支援量とともに共同監査の条件が記された。

ルドルフはそれを読み、何度も頷いた。

「助けてもらうだけではない。こちらも配った記録を残します」

十年前の敵国が、初めて同じ帳簿を開いた。

「それに応えることが、次の戦争を防ぐことにもなると思います」

国王は、しばらく黙っていた。

そして、「……よかろう」

静かに頷いた。

「国内の食料安全保障を損なわない範囲で、支援を認める」

大臣たちが頭を下げた。

悠真は、ほっと息を吐いた。

数週間後。

国境。

アルディナ王国から、食料を積んだ荷馬車が到着した。

迎えに来たのは、ルドルフ・ベルナーだった。

「……悠真さん」

悠真は笑った。

「お久しぶりです」

ルドルフは、荷馬車を見つめた。

「……本当に、届けてくれたんですね」

悠真は頷いた。

「はい」

ルドルフは、深く頭を下げた。

「……ありがとうございます」

悠真は首を振った。

「十年前、戦争を止めるために協力したじゃないですか」

ルドルフは顔を上げた。

悠真は続けた。

「今度も、同じです」

そして、「一緒に、飢えを乗り越えましょう」

ルドルフの目に、涙が浮かんだ。

「……はい」

かつて敵同士だった二つの王国。

その国境を、食料を積んだ荷馬車が越えていった。

国王は隣国への支援量を示した書類を見つめた。

「我が国にも、冬を越せるか分からぬ村がある」

悠真は頷いた。

「全てを渡すべきだとは言いません。余力と輸送路を確認し、期限を決めて送ります」

「それでも足りぬと言われたら?」

「足りないと伝えます。そのうえで、互いの種と技術を守る方法を考えます」

国王は署名した。

善意を続けるためにも、限界を隠さないことが必要だった。

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