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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第七十七話 アコギが保存食を大量生産したら、今度は荷馬車が足りなくなった

ヴァレン商会。

王都加工工場。

「……生産量が二倍になりました!」

工場長が報告した。

アコギは頷いた。

「よろしい」

目の前には、大量の保存食が並んでいた。

乾燥豆。

トウモロコシ粉。

麦の携帯食。

十分に乾燥させた加工食品。

それぞれ、製造日と保管条件が記されていた。

「……北部へ送れ」

アコギが命じた。

だが、工場長は、困った顔をした。

「……それが」

「何だ?」

「荷馬車が足りません」

アコギは固まった。

「……何?」

「軍も、農業組合も、食料輸送に使っていまして」

工場長は続けた。

「さらに、雪で通れない街道も増えています」

アコギは、深いため息をついた。

「……食料を作っても、運べないのか」

そのとき。

悠真が工場へやってきた。

「……アコギさん」

アコギは振り返った。

「……ちょうどよかった」

悠真は首を傾げた。

「……何がですか?」

アコギは、保存食の山を指さした。

「運べない」

悠真は、しばらく黙った。

そして、「……輸送計画を見直しましょう」

「……輸送計画?」

「はい」

悠真は地図を広げた。

「今、王都から北部へ直接運ぼうとしていますよね?」

アコギは頷いた。

「そうだ」

悠真は続けた。

「でも、途中の町に倉庫があります」

「……あるな」

「そこを中継地点にしましょう」

アコギが顔を上げた。

「……中継?」

「はい」

悠真は説明した。

「王都から中継倉庫までは、大型の荷馬車でまとめて運びます」

共同輸送の初日、荷車の列は街道で立ち往生した。

「軍の馬車が先だ!」

「こちらは病人の食料だぞ!」

怒鳴り声が交錯する。

カールは二人を制し、荷札を一枚ずつ確かめた。

「急ぐ順番は、持ち主の身分で決めない。届け先の残り日数で決める」

アコギは倉庫の壁に大きな板を掲げた。

行き先、積荷、到着予定、遅延理由。

誰でも見られる輸送表だった。

翌日、そりを引く北部の男が言った。

「この坂は車輪じゃ越えられねえ。峠の手前で積み替えろ」

軍の将校が渋い顔をしたが、実際にそりは雪道を進んだ。

悠真は思った。

食料を増やすだけでは足りない。

最後の一里を知る人の声が、命を救う。

「そこから先は、小型の荷車やそりを使います」

「山道が狭い場所では、人や荷馬が運べる量に分けます」

アコギは、地図を見つめた。

「……なるほど」

悠真は続けた。

「それから、荷馬車を空で戻さないようにします」

「……何?」

「帰り道に、北部から必要な物資を運べないか調べましょう」

アコギは考え込んだ。

「……確かに」

さらに。

悠真は言った。

「軍、農業組合、商会で、輸送予定を共有しましょう」

アコギは苦笑した。

「……競争相手同士で?」

悠真は笑った。

「今は、食料を届けることが最優先ですから」

アコギは、しばらく黙っていた。

そして、「……分かった」

静かに頷いた。

「やってみよう」

こうして。

王国初の大規模な共同食料輸送計画が始まった。

軍の荷馬車。

商会の荷馬車。

農業組合の荷車。

そして、北部のそり。

それぞれが役割を分担した。

数週間後。

北部への食料輸送量は、大きく増加した。

だが、増えた荷車の分だけ、南の村では薪と塩の運搬が遅れた。

「全部を食料に回せばいいわけじゃないのか」エリクが呟く。

カールは輸送表を引き寄せた。

「荷物の重さだけでは決められん。冬を越すのに何が必要か、村ごとに聞こう」

翌日の会議には、食料の担当者だけでなく、薪を扱う商人も呼ばれた。

だが、そのころ。

ヴァルシア王国では、さらに深刻な事態が起きていた。

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