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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第七十五話 王都で食料の買い占めが始まったので、悠真が倉庫の在庫を全部公開した

王都アルディア。

中央市場。

「……麦がない!?」

一人の女性が叫んだ。

商人は首を振った。

「売り切れです」

「昨日はあったでしょう!」

「今朝、全部売れました」

女性は顔をしかめた。

「……誰が買ったの?」

商人は答えた。

「大きな商会が、まとめて……」

その言葉に、周囲がざわめいた。

「……買い占めだ!」

「食料を隠しているんじゃないか!」

「また飢饉になるぞ!」

人々の不安は、一気に広がった。

王宮。

「……市場が混乱しています!」

大臣が報告した。

国王アルベルト三世は眉をひそめた。

「……食料が足りないのか?」

財務大臣が答えた。

「王都の備蓄倉庫には、まだ十分な在庫があります」

「では、なぜ価格が上がる?」

悠真が口を開いた。

「……不安です」

国王が顔を上げた。

「不安?」

「はい」

悠真は続けた。

「人々は、食料がなくなると思っているんです」

「だから、必要以上に買ってしまう」

「すると、本当に市場から食料がなくなる」

財務大臣が頷いた。

「……悪循環か」

悠真は頷いた。

「はい」

そして、「王都の食料在庫を公開しましょう」

大臣たちが驚いた。

「……在庫を!?」

「そんなことをすれば、商人たちが……!」

悠真は首を振った。

「軍事上の問題がある倉庫の場所や詳細は公開しません」

そして、続けた。

「でも、市民が何日分の食料を確保できるのかは、知らせるべきです」

国王は考え込んだ。

「……なるほど」

悠真は続けた。

「さらに、王都の備蓄を少しずつ市場へ放出します」

財務大臣が尋ねた。

「……価格は?」

「通常時の価格を参考に、極端な高騰を抑える水準で販売します」

悠真は続けた。

「ただし、無制限に売れば、裕福な人が全部買ってしまいます」

国王が頷いた。

「……確かにな」

「だから、当面は一世帯ごとの購入量を制限します」

財務大臣は、しばらく考えた。

そして、「……実行できる」

国王は頷いた。

「よかろう」

その日の午後。

王都の広場に、大きな掲示板が設置された。

【王都食料供給状況】

【備蓄食料あり】

【今後の定期放出予定】

【購入数量制限】

【価格情報を毎日更新】

人々は、掲示板を見つめた。

掲示板の前に集まった市民の中から、鋭い声が上がった。

「倉庫に麦があるなら、なぜ昨日は買えなかった!」

悠真は管理官に視線を向けた。

管理官は震える声で、備蓄は一度に売るものではないと説明した。

「それなら、いつ、どこで、いくらで買えるかも書いてください」

一人の母親が言った。

「在庫の数だけ見せられても、今夜のパンは焼けない」

悠真は息をのんだ。

透明性とは、数字を貼るだけでは足りない。

その日のうちに、販売所別の放出予定、購入上限、病人への優先配給を掲示した。

翌日には苦情を書ける箱も置いた。

「隠さないことと、届くこと。両方が必要なんだな」

エリクは頷いた。

「どっちかだけじゃ、また疑われる」

「……食料は、まだあるのか」

「明日も売るらしい」

「それなら、今日全部買わなくてもいいな」

少しずつ、混乱が収まり始めた。

だが、その夜。

一人の商人が、王都の倉庫を訪れていた。

「……全部買いたい」

倉庫管理官が驚いた。

「……全部?」

商人は頷いた。

「今ある麦を、すべてだ」

管理官は首を振った。

「できません」

「金なら払う」

「それでも、できません」

商人は顔をしかめた。

「……なぜだ?」

管理官は、壁に貼られた規則を指さした。

【緊急時の備蓄食料は、指定された配給・販売計画に従って放出する】

商人は、舌打ちした。

「……面倒なことを」

そして、立ち去った。

だが、その男の背後には、別の買い占め組織が動いていた。

市場の外では、価格が下がると信じて昨日の麦を売った農民が、今日の値上がりに青ざめていた。

悠真は公開した在庫表の横に、次の放出日と予定量も貼らせた。

「数字を見せるだけじゃ駄目だ。明日どうなるか分からなければ、人は今日買い占める」

それでも、噂を利用して利益を得ようとする者は消えなかった。

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