↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
73/120

第七十三話 食料を満載した荷馬車で北部へ向かったら、村へ続く橋が流されていた

アルディナ王国北部。

山間の街道。

「……止まれ!」

カールの声が響いた。

食料を積んだ荷馬車が、次々と停止した。

悠真は先頭の馬車から降りた。

「どうしました?」

カールは前方を指さした。

「……橋がない」

「え?」

悠真は川へ駆け寄った。

そこには、本来あるはずの石橋がなかった。

増水した川が、激しく流れている。

橋の両端だけが残り、中央部分は完全に崩落していた。

「……そんな」

エリクが呟いた。

カールは地図を広げた。

「この橋を渡れば、あと半日でノルド村だった」

悠真が尋ねた。

「迂回路は?」

「山を回る道がある」

「それなら!」

「だが、雪崩で塞がれているらしい」

沈黙。

エリクが、荷馬車を振り返った。

二十台の荷馬車。

積まれているのは、麦、豆、乾燥トウモロコシ、保存食。

北部の三つの村へ届ける予定だった。

「……どうする?」

エリクが尋ねた。

悠真は、しばらく考えた。

そして、「……村には、あと何日分の食料がありますか?」

カールが答えた。

「最後の報告では、十日分ほどだ」

悠真は頷いた。

「なら、橋を架け直す時間はありませんね」

「……ああ」

そのとき。

護衛の兵士が叫んだ。

「隊長!」

「何だ!」

「対岸に人がいます!」

悠真が顔を上げた。

川の向こう。

数人の村人が、こちらへ手を振っていた。

「……助けてくれ!」

声が聞こえた。

「村に、食べ物がないんだ!」

エリクは拳を握った。

「……悠真」

「うん」

悠真は川を見つめた。

水は激しく流れている。

荷馬車で渡ることは不可能だった。

だが、上流には川幅の狭い場所がある。

悠真はカールに尋ねた。

「……ロープはありますか?」

カールが頷いた。

「ある」

「対岸へ渡せますか?」

「弓で細い綱を送ることなら、試せる」

悠真は頷いた。

「まず細い綱を渡して、太い綱を引いてもらいましょう」

カールは川を見つめた。

「……人を渡すつもりか?」

「いいえ」

悠真は首を振った。

「人は危険です」

そして、壁に打ち付ける雪解け水の音を聞きながら、カールは地図を裏返した。

「橋の修理を待てば、四日はかかる」

「村の備蓄は三日です」

川幅は普段の倍に広がり、橋脚だけが水面から突き出していた。

御者が言った。

「戻りましょう。ここを渡せば荷馬車ごと流されます」

悠真は対岸の煙を見た。

村には人がいる。

「食料を小分けにして、上流の浅瀬を探します。ただし危険なら渡りません」

カールは偵察を出し、避難できる住民から先に誘導した。

荷馬車一台の勇気で解決できないことがある。

だから、人数と時間をかけるしかなかった。

悠真の言葉に兵士が顔を見合わせた。

カールは荷を量り直させ、食料の一部を小分けにした。

対岸の浅瀬を探す斥候、仮設の綱を張る工兵、馬を休ませる者。

役割を分けた。

「全部を一度に渡すな。人間が流されたら、食料も届かん」

最初に渡ったのは、軽い乾燥豆の袋だった。

最後の袋が岸に着くまで、悠真は息を詰めて見守った。

「橋は直す。でも今日は、まず食べてもらう」

その夜、カールは修理用の木材と職人を手配する書状を書いた。

「食料だけを、向こうへ送ります」

数時間後。

川の両岸に、丈夫な綱が張られた。

滑車を取り付けた小さな荷籠が、川の上を移動する。

「……行くぞ!」

兵士が叫んだ。

最初の荷籠が、ゆっくりと対岸へ向かった。

中には、乾燥トウモロコシと豆。

対岸の村人たちが、息を呑んで見守った。

そして、「……届いた!」

歓声が上がった。

エリクは笑った。

「やった!」

悠真も、ほっと息を吐いた。

だが、運べる量は限られていた。

二十台の荷馬車を空にするには、何日もかかる。

カールが言った。

「……これでは足りん」

悠真は頷いた。

「分かっています」

そして、地図を広げた。

「橋の修理と並行して、別の道も探しましょう」

カールは頷いた。

「工兵を呼ぶ」

エリクも言った。

「俺は、村の人たちと食料の配分を決める」

悠真は笑った。

「頼むよ」

その夜。

ノルド村では、久しぶりに温かい豆のスープが配られた。

だが、食料を受け取った村長は、震える声で言った。

「……助かった」

そして、「でも、隣の村には、もう三日分しか残っていない」

悠真は顔を上げた。

「……三日?」

村長は頷いた。

「子供たちから、食事を減らし始めている」

悠真は、拳を握った。

まだ、助けなければならない人々がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。