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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第七十一話 大凶作まであと二年のはずだったのに、夏に雪が降り始めた

二年後。

アルディナ王国北部。

六月。

「……雪?」

農民が空を見上げた。

白いものが、ゆっくりと落ちてきた。

最初は、灰かと思った。

だが、手のひらに乗せると、冷たかった。

「……雪だ!」

村人たちが叫んだ。

「六月なのに!?」

「どうなっているんだ!?」

畑には、まだ若いトウモロコシが育っていた。

ジャガイモの葉も、青々としていた。

だが、気温が急激に下がり始めた。

その夜。

畑に霜が降りた。

翌朝。

トウモロコシの葉は、黒く変色していた。

ジャガイモの地上部も、大きな被害を受けていた。

「……そんな」

農民たちは、立ち尽くした。

王都。

王立学術院。

「……予測より早い」

エドガーが呟いた。

悠真は、報告書を見つめていた。

「……北部で降雪?」

「はい」

エドガーは頷いた。

「六月としては、極めて異例です」

悠真は眉をひそめた。

「……冷害が始まったんですか?」

エドガーは首を振った。

「まだ断定できません」

そして、続けた。

「ただし、広い範囲で気温が低下しています」

悠真は、地図を見つめた。

アルディナ王国北部。

ヴァルシア王国北部。

山岳地帯。

各地で、低温の報告が届いていた。

「……まずいな」

悠真が呟いた。

エドガーが尋ねた。

「……どうしますか?」

悠真は答えた。

「備蓄量を確認します」

「……はい」

「それから、被害の少ない地域を調べます」

エドガーは頷いた。

悠真は続けた。

「今のうちに、食料輸送の準備を始めましょう」

その日の午後。

王宮で緊急会議が開かれた。

''雪が止んだ午後、悠真は農業組合の帳簿を机に広げた。

北部の麦畑三十七区画のうち、二十二区画で葉先が黒くなっている。

ジャガイモも、地上部が霜で傷んだ。

「被害率を一つの数字にまとめないでくれ」

「なぜです?」

「畑によって生き残り方が違う。今すぐ掘り返せば、助かる芋まで失う」

エリクは鉛筆を走らせた。

作物別、村別、標高別。

翌朝から巡回員が土を掘り、根の状態を確かめることになった。

「二年あると思っていた」

悠真の声はかすれた。

「でも、二年先に備えた倉庫が、今日の子供を救うかもしれない」

エリクは帳簿を閉じた。

「なら、今日できることからやろう」

国王アルベルト三世が尋ねた。

「……備蓄は、どれほどある?」

財務大臣が答えた。

「現在、王国全体で通常消費量の約十か月分です」

悠真は頷いた。

五年前。

備蓄は四か月分しかなかった。

それが、十か月分まで増えていた。

だが、「……十分ではありません」

悠真が言った。

国王は頷いた。

「……分かっている」

悠真は続けた。

「今年の収穫が大幅に減れば、来年の種も必要になります」

「……そうだな」

「さらに、家畜の飼料も不足します」

財務大臣は顔をしかめた。

「……問題が多いな」

悠真は頷いた。

「はい」

そして、「だから、今から動きます」

その日の夕方。

王国全土に、緊急の農業被害調査命令が出された。

だが、翌朝。

ヴァルシア王国から、さらに深刻な知らせが届いた。

【北部農業地帯】

【広域的な霜害】

【麦・ジャガイモ・トウモロコシに大きな被害】

【複数の村で収穫見込みが半減】

悠真は、報告書を握りしめた。

「……始まってしまったのか」

本来なら、あと二年の猶予があるはずだった。

だが、自然は、人間の予測など待ってくれなかった。

エドガーは観測日誌を机に並べた。

「予測は外れました。二年後と断言した私の責任です」

悠真は首を振らなかった。

「では、何を見落としたのか調べましょう。同時に、今日動かせる食料を数えます」

報告は次々届いた。

山沿いの村では畑が凍り、南部ではまだ収穫が見込める。

だが南部から北部へ続く道は細い。

「食料があっても、届かなければないのと同じだ」

悠真は道路の補修隊と備蓄管理者を同じ会議に呼んだ。

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