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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第六十九話 腐った食料を隠す役人が多いので、失敗を報告した人を褒める制度を作った

王都。

王宮。

「……失敗を報告した者を、評価する?」

財務大臣が尋ねた。

エリクは頷いた。

「はい」

大臣は眉をひそめた。

「……どういうことだ?」

エリクは説明した。

「倉庫で食料が傷んだとき、すぐに報告すれば被害を小さくできます」

「……確かにな」

「でも、報告しただけで罰せられるなら、隠したくなる人が出ます」

大臣は黙った。

エリクは続けた。

「だから、早く発見して、正確に報告した人は評価するんです」

悠真も頷いた。

「いい考えだね」

財務大臣は腕を組んだ。

「……だが、不正まで許すわけにはいかんぞ」

エリクは頷いた。

「もちろんです」

そして、紙を広げた。

【備蓄管理評価制度】

・品質異常を早期発見した場合は評価する

・正確な報告を行った場合は評価する

・被害拡大を防いだ場合は評価する

・故意の隠蔽や帳簿改ざんは処罰する

・通常の管理ミスは原因を調査し、再発防止を優先する

新制度の説明会で、一人の管理官が手を挙げた。

「早く報告した者を褒めるなら、わざと失敗して報告する者が出ませんか」

エリクは頷いた。

「だから、報告しただけで無条件に褒めるわけではありません。点検記録と現物を照らし、原因を調べます」

「失敗した責任は?」

「怠慢や横流しは別に調べます。ただ、正直に知らせた人まで同じ罰にしない」

会場の後ろで、若い倉庫番が小さく息を吐いた。

彼は先週、壁の湿りを見つけたが、上司に怒られるのが怖くて黙っていた。

翌朝、その倉庫番は初めて自分から点検表に赤い印を付けた。

古参の倉庫役人はなおも渋い顔だった。

「記録を公開し、複数人で確かめる。それが条件なら、試してみましょう」

エリクは頭を下げた。

改革は賛成の拍手だけでは進まなかった。

財務大臣は、しばらく読んでいた。

そして、「……なるほど」

悠真が笑った。

「いいですね」

エリクは少し照れた。

「……本当?」

「うん」

悠真は続けた。

「失敗をゼロにすることは難しい。でも、失敗から学ぶことはできる」

国王も頷いた。

「……採用しよう」

エリクの目が輝いた。

「ありがとうございます!」

こうして。

王国の備蓄管理制度が改められた。

数か月後。

王国第三備蓄倉庫。

「……報告します!」

若い管理官が、責任者へ駆け寄った。

「どうした?」

「倉庫の一角で、湿度が上昇しています!」

責任者は顔を上げた。

「……どれくらいだ?」

管理官は記録を示した。

「昨日から、急に上がっています」

責任者は頷いた。

「……よく気づいた」

すぐに点検が行われた。

原因は、屋根の小さな雨漏りだった。

早期に発見したため、食料への被害はほとんどなかった。

責任者は、管理官の肩を叩いた。

「……助かった」

管理官は驚いた。

「……怒られないんですか?」

責任者は笑った。

「なぜ怒る?」

「……異常を報告したので」

責任者は首を振った。

「異常を見つけたのは、お前の功績だ」

管理官は、ほっと息を吐いた。

その日。

倉庫の記録には、こう書かれた。

【雨漏りを早期発見】

【食料被害なし】

【発見者を表彰】

その日の夕方、管理官は古い帳簿を抱えて戻ってきた。

「実は、先月も似た染みがありました。怖くて報告しませんでした」

責任者の顔が強張った。

被害は少なかったが、隠した事実は消えない。

「今日見つけたことは評価する。ただし、先月の記録を直すことはできない。何が起きたか、そのまま残そう」

管理官は震える手で署名した。

褒める制度とは、何をしても許す制度ではない。

事実を話した人を守りながら、事実そのものを隠さない制度だった。

小さな制度変更だった。

だが、その積み重ねが、王国の食料備蓄を少しずつ強くしていった。

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