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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第五十九話 国境市場で農民が作物を売ろうとしたら、商会の許可が必要だと言われた

三か月後。

国境交易市場。

「……許可証?」

エリクが尋ねた。

市場の受付係が頷いた。

「はい。市場で農産物を販売するには、ヴァレン商会の取引許可証が必要です」

エリクは眉をひそめた。

「……どうして?」

「市場の規則です」

「……でも、ここは両国の市場だろ?」

「はい」

「だったら、農民が自由に売ってもいいんじゃないのか?」

受付係は、困った顔をした。

「……規則ですので」

エリクは、しばらく黙っていた。

そして、「……悠真に相談する」

翌日。

悠真は、市場の規則を確認していた。

【取引許可証発行手数料】

【倉庫利用料】

【指定輸送業者利用義務】

【販売価格の事前申告】

受付の前では、農民が荷車を止めたまま立ち尽くしていた。

「許可証の手数料を払えば、今夜の宿代がなくなる」

隣の農民が小声で言う。

「作物を持ち帰れば、傷んでしまう」

エリクは怒鳴りかけて、口を閉じた。

受付係も、命令された規則を読んでいるだけだった。

「この市場以外で売ることは禁止されているのか?」

係は書類を確かめた。

「商会の敷地内だけです」

悠真はエリクを見た。

「だったら、村が共同で使える場所を探そう。ただし、通行の邪魔にならず、秤も同じものを使う」

「簡単に客が来るかな」

「最初は来ないかもしれない。それでも、農民が値段を決められる場所が必要だ」

悠真は、受付係の説明だけでは法的な権利関係までは分からないと気づいた。

「……なるほど」

エリクが尋ねた。

「……どうする?」

悠真は答えた。

「まず、確認しよう」

「……何を?」

「この市場が、商会の私有地なのか。それとも、王国から特別な権利を与えられているのか」

カールが頷いた。

「……重要だな」

調査の結果。

市場の土地は、両国政府が共同で使用を認めた区域だった。

だが、施設の大半はヴァレン商会が建設していた。

つまり。

商会には施設利用料を設定する権利がある。

しかし、国境での交易そのものを独占する権利までは与えられていなかった。

悠真は頷いた。

「……なら、別の取引場所を作れますね」

エリクが驚いた。

「……別の市場?」

「うん」

悠真は笑った。

「商会の市場を使いたい人は使えばいい」

そして、「使いたくない人は、別の場所で取引すればいい」

カールは頷いた。

「……確かに」

こうして。

農業組合の代表者たちは、国境の別の場所に集まった。

そこには、大きな建物もなかった。

倉庫も少ない。

荷車置き場も、簡素なものだった。

だが、一つだけ、決めたことがあった。

誰でも、決められた公平な条件で取引できること。

だが、看板を掲げるだけでは荷は届かない。

商会側は運送人に、共同市場へ荷を運べば今後の契約を見直すと告げていた。

「うちの馬車を出す」と一人の農民が言った。

「帰りの荷がなければ赤字だぞ」

「それでも、最初の一台がなければ、誰もここへ来ない」

エリクは運賃を帳簿に書き、赤字の負担を組合で分ける案を出した。

自由な市場にも、自由を守るための費用が要った。

その市場は、こう名付けられた。

【国境共同市場】

エリクは、看板を見つめた。

「……なんだか、地味だな」

悠真は笑った。

「最初は、そんなものだよ」

そのとき。

一人の農民が、荷車を引いてやってきた。

「……ここで、ジャガイモを売れると聞いたんだが」

エリクは笑った。

「はい!」

そして、「いらっしゃい!」

国境共同市場の、最初の取引が始まった。

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