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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第五十七話 元兵士に畑を与えたら、昔から住んでいた農民たちが怒り始めた

ヴァルシア王国。

北部農業開拓地。

「……ここは、俺たちの土地だ!」

一人の農民が叫んだ。

目の前には、元兵士たちが立っていた。

「……何だと?」

元兵士の一人が顔をしかめた。

「この土地は、王国から与えられたんだ!」

農民は怒鳴った。

「王国が勝手に決めただけだ!」

沈黙。

周囲には、緊張した空気が漂っていた。

元兵士たちは、戦争から帰ってきた。

仕事がない。

土地もない。

だから、王国は開拓地を与えた。

だが、その土地の一部は、以前から周辺の農民たちが放牧や薪集めに使っていた場所だった。

正式な所有権は、王国にあった。

しかし、生活のために利用していた人々がいた。

「……どうするんですか?」

ルドルフが悠真に尋ねた。

悠真は、しばらく考えた。

そして、「……まず、両方の話を聞きましょう」

「……両方?」

「はい」

悠真は続けた。

「元兵士たちも生活しなければならない。でも、昔から使っていた人たちの生活も守らなければなりません」

ルドルフは頷いた。

農民の代表は、擦り切れた土地台帳を差し出した。

「祖父の代から耕している。紙が古いからといって、なかったことにされるのか」

元兵士は唇を噛んだ。

「俺たちは国から、この土地をもらったと聞いた」

悠真は台帳と新しい配分図を重ねた。

境界線が、確かに同じ畑を横切っていた。

「どちらかが嘘をついたわけじゃない。王国の調査が足りなかったんです」

ルドルフはその場で配分を保留した。

「先に古い権利を確認する。開墾できる未利用地を探し、必要な農具と最初の種は国が支援する」

「待つ間、何を食べる」

元兵士の問いに、ルドルフは言葉を詰まらせた。

「共同作業の日当を、備蓄から支払う」

完全な解決ではない。

だが、誰かの暮らしを奪って別の誰かを救う方法だけは、選ばずに済んだ。

「……確かに」

その日。

村長会議が開かれた。

農民たち。

元兵士たち。

王国の土地管理官。

そして、悠真とルドルフ。

全員が集まった。

農民の代表が言った。

「この土地で、何十年も家畜を放牧してきたんです!」

元兵士の代表が答えた。

「俺たちは、王国からここを耕せと言われた!」

悠真は頷いた。

「……分かりました」

そして、地図を広げた。

「まず、実際にどこを使っていたのか確認しましょう」

調査の結果。

土地の一部は、共同放牧地だった。

別の一部は、薪を集める森だった。

さらに、長年使われていなかった荒れ地もあった。

悠真は提案した。

「共同放牧地は、できるだけ残しましょう」

農民たちが顔を上げた。

「……本当か?」

「はい」

悠真は続けた。

「元兵士たちには、利用されていない荒れ地を優先的に開拓してもらいます」

元兵士が尋ねた。

「……でも、荒れ地は耕すのが大変だ」

悠真は頷いた。

「だから、王国に農具と開拓費用の支援を求めましょう」

ルドルフも頷いた。

「私から正式に申請します」

さらに。

悠真は続けた。

「放牧地の一部を畑に変える必要がある場合は、利用していた人たちの同意と代替地の確保を条件にしましょう」

長い議論が続いた。

だが、最終的に、双方は合意した。

元兵士たちは、荒れ地の開拓を始めた。

農民たちは、共同放牧地を守ることができた。

ルドルフは、ほっと息を吐いた。

「……よかった」

悠真は頷いた。

「……そうですね」

そのとき。

一人の元兵士が、農民に声をかけた。

「……なあ」

「何だ?」

「開拓を手伝ってくれないか?」

農民は驚いた。

「……俺が?」

「ああ。俺たちは、畑のことをほとんど知らない」

男は頭を下げた。

「教えてほしい」

農民は、しばらく黙っていた。

そして、「……仕方ねえな」

苦笑した。

「鍬の持ち方から教えてやるよ」

二人は笑った。

かつて、争いかけた人々が。

今、一緒に畑を耕し始めた。

ルドルフは古い利用地図と新しい配分図を村の壁に貼った。

「この森は誰のものだ」

「王国のものだ」と役人が答えた。

農民の老人は首を振る。

「冬の薪を拾い、牛を放したのは俺たちだ」

元兵士も言った。

「畑がなければ、俺たちは帰る場所がない」

ルドルフは二人を見た。

「どちらも失わせないため、放牧地を残し、開墾する区域を引き直す。収穫までの仕事も用意する」

「そんなに簡単には決まらんぞ」と老人が言った。

「だから、ここで決めず、明日も話します」

悠真は口を挟まなかった。

誰かの生活を線一本で消さないことこそ、改革の第一歩だった。

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