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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第五十一話 農業改革が成功したので、国王が悠真に大臣になれと言い始めた

王都アルディア。

王宮。

「……高橋悠真」

国王アルベルト三世が、静かに呼びかけた。

「はい」

悠真は頭を下げた。

国王は続けた。

「お前の働きによって、王国の食料事情は大きく改善した」

「ありがとうございます」

「ジャガイモとトウモロコシの普及」

「農業組合の設立」

「病害対策と輪作の導入」

国王は、報告書を閉じた。

「これほどの功績を上げた者は、そう多くない」

悠真は恐縮した。

「……いえ、俺だけの力ではありません」

国王は頷いた。

「分かっている」

そして、「そこで、提案がある」

悠真が顔を上げた。

「……提案?」

国王は微笑んだ。

「農業大臣にならぬか?」

沈黙。

悠真は固まった。

「……え?」

国王は続けた。

「王国全土の農業政策を、お前に任せたい」

「……ちょっと待ってください」

悠真は慌てた。

その場で、悠真は一つだけ確認した。

「大臣になれば、畑へ行く時間はありますか」

財務大臣が咳払いした。

「会議だけで一日が終わることもあるでしょう」

「では、現場で作物が枯れても、報告書が届くまで待つことになりますね」

王の顔から笑みが消えた。

悠真は続けた。

「村の人たちは、肩書で飢えをしのげません。政策を決める人と、土を触る人の間が遠くなったら、また間違えます」

カールが静かに頷いた。

「軍も同じです。机の上の兵糧と、兵士の腹の中の兵糧は違う」

国王はしばらく考え、悠真に現場視察の権限を与える案を口にした。

「俺、大学生ですよ!?」

国王は首を傾げた。

「……大学生?」

「えっと……学生です!」

「学問を修めていたのか」

「そうですけど!」

悠真は頭を抱えた。

「俺、政治なんて分かりません!」

国王は笑った。

「農業のことは、よく分かっているではないか」

「いや、それも、まだ勉強中です!」

国王は、しばらく悠真を見つめていた。

そして、「……ならば、どうしたい?」

悠真は考え込んだ。

王国全土の農業。

食料の生産。

流通。

備蓄。

農民の生活。

すべてを、一人で管理することなどできない。

「……陛下」

悠真は静かに言った。

「俺一人が大臣になっても、王国中の畑を見ることはできません」

国王は頷いた。

「……確かにな」

悠真は続けた。

「だから、地域ごとに農業を支える仕組みを作ってください」

「……仕組み?」

「はい」

悠真は紙を広げた。

「農業技術者を育てる学校」

「種子や種芋の品質を調べる施設」

「収穫量を記録する役所」

「食料備蓄を管理する部署」

「そして、農業組合同士をつなぐ連絡組織」

国王は、真剣な顔で聞いていた。

悠真は続けた。

「俺がいなくても、農業が発展する仕組みが必要なんです」

長い沈黙。

そして、国王は、ゆっくりと頷いた。

「……よく分かった」

悠真は、ほっと息を吐いた。

だが、国王は微笑んだ。

「では、お前を農業改革顧問に任命しよう」

悠真は再び固まった。

「……え?」

「大臣ではない。顧問だ」

「……いや、それも」

「必要なときだけ、意見を聞かせてくれればよい」

悠真は、しばらく考えた。

そして、農民代表の老人の言葉が、悠真の頭をよぎった。

「顧問になったら、村の話は誰が聞く」。

王に意見を届けられる立場になるほど、畑から遠ざかる。

だから悠真は、月に一度、各地の農民が失敗を直接報告できる場を設けることも条件に加えた。

国王は、その提案を受け入れた。

「……それなら」

小さく頷いた。

「できる範囲で、お手伝いします」

国王は笑った。

「決まりだな」

こうして。

高橋悠真は、アルディナ王国の農業改革顧問に任命された。

悠真は大臣の椅子よりも、村の畑で失敗を報告できる仕組みを求めた。

「俺が正しいと言えば全部通る国にはしたくありません」。

国王は苦笑し、役人と農民の双方が異議を申し立てられる窓口の設置を認めた。

本人は、あまり嬉しそうではなかった。

「……俺、ただジャガイモを育てたかっただけなんだけどな」

その呟きを聞いて、カールが笑った。

「今さらだな」

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