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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第四十九話 ジャガイモが王国中に広がったので、今度は病気が大流行し始めた

翌年。

アルディナ王国南部。

「……おかしい」

農民が、ジャガイモの葉を見つめていた。

葉に、黒褐色の斑点ができていた。

「……何だ、これは」

数日後。

斑点は広がった。

葉が枯れ始めた。

茎も黒ずんだ。

そして、「……腐っている!」

収穫したジャガイモの一部が、腐敗していた。

農民たちは青ざめた。

「……どうする?」

「今年の収穫が……!」

その報告は、すぐにベルナ村へ届いた。

悠真は、手紙を読んで顔色を変えた。

「……病気?」

エリクが尋ねた。

「……何の?」

悠真は答えた。

「ジャガイモの病気かもしれない」

「……病気?」

「うん」

悠真は続けた。

「同じ作物を広い範囲で育てると、病気が広がったときに大きな被害が出ることがあるんだ」

ハインツが眉をひそめた。

「……そんなことが?」

悠真は頷いた。

「あります」

そして、静かに言った。

「ジャガイモは便利な作物です。でも、万能ではありません」

その日のうちに、悠真は南部へ向かった。

数日後。

被害を受けた村。

悠真は、畑を見つめていた。

葉の斑点。

茎の変色。

腐敗した芋。

「……これは」

悠真は息を呑んだ。

症状は、ジャガイモ疫病を思わせた。

病気の畑に着いた悠真は、すぐには作物に触れなかった。

「この畑から、ほかの村へ種芋を運びましたか」

農民が顔を青くした。

「先週、二袋だけ……」

「責めているんじゃありません。行き先を教えてください」

悠真は、病気の原因を断定できないことが怖かった。

黒い斑点だけでは、すべては分からない。

「まず、傷んだ芋を種にしない。疑わしい畑からの持ち出しを止める。道具も、畑を移る前に土を落とそう」

農民は唇を噛んだ。

「今年の分を全部捨てろっていうのか」

「いいえ。状態を分けて確認します。でも、腐った芋を保存庫に混ぜるのは危険です」

夕方、悠真は被害の地図を広げた。

隣の村ではまだ葉が青い。

だからこそ急がなければならなかった。

「一つの作物で飢えを救えたからって、一つの作物に命を預けちゃいけなかった」

その言葉は、誰に向けたものよりも、悠真自身への戒めだった。

ただし、悠真には病原体を確認する設備がなかった。

「……断定はできない」

エリクが尋ねた。

「……どうする?」

悠真は答えた。

「まず、被害のある畑から種芋を持ち出さないようにしよう」

「……種芋を?」

「うん。病気が広がる原因になるかもしれない」

悠真は続けた。

「傷んだ芋を種に使わない。感染が疑われる株や残渣は、ほかの畑へ移さず、適切に処分する」

ハインツが頷いた。

「……なるほど」

悠真は、畑を見つめた。

「それから、来年は同じ場所に続けてジャガイモを植えない方がいい」

エリクが首を傾げた。

「……どうして?」

「病気の種類によっては、畑に残った病原体や、取り残した芋から次の年も広がることがあるから」

悠真は続けた。

「そして、一番大事なのは……」

エリクが尋ねた。

「……何?」

悠真は答えた。

「ジャガイモだけに頼らないこと」

沈黙。

悠真は続けた。

「麦も、豆も、トウモロコシも、野菜も育てる」

そして、静かに言った。

「一つの作物が駄目になっても、ほかの作物で食べられるようにするんだ」

エリクは頷いた。

「……なるほど」

悠真は、被害を受けた畑を見つめた。

「……食料を増やすだけじゃ駄目なんだ」

そして、「何かが失敗しても、飢えない仕組みを作らないと」

その言葉に、エリクは深く頷いた。

病気の出た畑を前に、悠真は黙り込んだ。

同じ種芋を、同じ土地に、同じやり方で増やしてきた。

その成功が、病気の広がる道まで作っていた。

「俺が広めたからだ」

エリクが首を振る。

「救われた人もいる。でも、次は同じ失敗をしないようにしよう」

悠真は畑ごとの被害と栽培履歴を記録させた。

感染の疑いがある種芋は移動させず、麦や豆など別の作物も組み合わせる。

万能の作物などない。

その事実を、彼は初めて農民たちの前で口にした。

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