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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第四十八話 農業組合が成功したので、王国中の村から加入希望が殺到した

半年後。

北西部農業協同組合。

「……また加入希望です!」

若い事務員が叫んだ。

悠真が顔を上げた。

「……また?」

「はい!」

事務員は大量の書類を机に置いた。

「今月だけで、二十七の村から申し込みが来ています!」

エリクが目を丸くした。

「……二十七!?」

ハインツは笑った。

「大人気だな」

悠真は頭を抱えた。

「……ちょっと待ってください」

組合は、最初の十二村から始まった。

だが、種芋の共同管理。

農具の共同利用。

低利の融資。

収穫物の共同販売。

これらの取り組みが、周辺の村で評判になっていた。

特に。

借金で農地を失いかけていた農民たちにとって、組合は大きな希望だった。

「……全部受け入れられる?」

エリクが尋ねた。

悠真は首を振った。

「今の体制では無理だね」

「……どうする?」

悠真は考え込んだ。

そして、「……組合を増やそう」

エリクが顔を上げた。

「……増やす?」

「うん」

悠真は続けた。

「一つの組合で王国中の村を管理するのは無理だよ」

ハインツが頷いた。

「確かにな」

「だから、地域ごとに組合を作ってもらう」

加入希望の村から、泥の付いた長靴のまま農民が訪ねてきた。

「うちの村にも、組合を作れますか」

「作れます。でも、誰かが代わりに運営してくれるわけではありません」

悠真は帳簿を開いて見せた。

「毎月、数を数える人が要ります。間違いがあれば、みんなの前で訂正する人も」

農民は顔をしかめた。

「畑仕事より面倒そうだ」

エリクが笑った。

「そうだよ。だけど、畑を失うよりはいい」

手引書を持ち帰った村では、初めての集会が開かれた。

役員を決めるだけで半日かかり、数字を読める者が足りなかった。

それでも、秋には一袋の種芋が共同倉庫に納められた。

大きな制度は、王宮の命令だけでは育たない。

小さな村が、自分たちの一袋を自分たちで守ろうとするところから広がっていった。

エリクは首を傾げた。

「……別々に?」

「そう」

悠真は笑った。

「それぞれの地域で、自分たちの組合を運営するんだ」

そして、続けた。

「必要なときだけ、組合同士で協力する」

ハインツは腕を組んだ。

「……なるほど」

悠真は紙に図を描いた。

【村】

↓

【地域農業組合】

↓

【組合同士の連絡会】

エリクが頷いた。

「……これなら、王国中に広げられる」

悠真は笑った。

「そういうこと」

その日。

北西部農業協同組合は、ほかの地域で組合を作るための手引書を作成することを決めた。

内容は、難しいものではなかった。

組合員による投票。

帳簿の公開。

共同資金の管理。

返済困難時の対応。

種芋と種子の管理。

そして、一人の商人や貴族が、組合を勝手に支配できない仕組み。

手引書が完成する前夜、エリクは一枚の申請書を持ってきた。

「この村、組合に入るための保証金が払えないんだって」

悠真は筆を止めた。

成功した組合の規則が、いちばん困っている村を門前払いにしていた。

「保証金をなくせば、共同倉庫が維持できない」と事務員が言う。

「でも、このままじゃ助けたい村ほど入れない」とエリクが返した。

二人は夜明けまで帳簿を見直した。

保証金の一部を収穫後の分割払いにし、最初の年は共同作業で不足分を補う。

ただし倉庫の残高は毎月公開し、負担が偏れば翌年の規則を見直す。

「完璧じゃないな」と悠真は言った。

「だから、変えられるようにしておくんだろ」とエリクが答えた。

その手引書は、王国各地へ送られた。

数か月後。

アルディナ王国には、三十を超える農業組合が誕生していた。

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