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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第四十六話 借金で畑を失う農民が増えたので、村同士で助け合う組合を作った

ベルナ村。

村長の家。

悠真、ハインツ、エリク、そして周辺の村長たちが集まっていた。

「……農業組合?」

一人の村長が尋ねた。

悠真は頷いた。

「はい」

「何をする組織なんだ?」

悠真は紙を広げた。

「まず、種芋と種子を共同で確保します」

「……共同で?」

「はい。村ごとに余った種を融通し合います」

エリクが頷いた。

「アルト村でも、種芋を分けられます」

悠真は続けた。

「それから、農具や荷車も共同で使います」

ハインツが腕を組んだ。

「……なるほど」

「さらに、水路の修理など、大きな費用が必要な仕事は、村同士で資金を出し合います」

一人の村長が尋ねた。

「……だが、金が足りなければ?」

悠真は答えた。

「組合の共同資金から貸し付けます」

「……利息は?」

「運営費をまかなえる範囲で、低く抑えます」

村長たちは顔を見合わせた。

「……そんなことができるのか?」

悠真は頷いた。

「できます。ただし、最初から大きな金額は貸せません」

そして、続けた。

「返済できない年があっても、すぐに土地を取り上げるのではなく、事情を確認して返済計画を見直します」

エリクが口を開いた。

「それなら、農民も安心して畑を増やせる」

悠真は頷いた。

「そうだね」

ハインツは、しばらく考えていた。

そして、「……わしは賛成だ」

一人の村長が尋ねた。

「本当に、うまくいくと思うか?」

ハインツは答えた。

「分からん」

そして、笑った。

「だが、三年前もそうだった」

村長たちが顔を上げた。

「五個のジャガイモを見せられて、村が救われるなど、誰が信じた?」

最初の会合で、一つの村長が立ち上がった。

「うちの村ばかり種を出して、隣村が返さなかったらどうする」

会場が静かになった。

悠真は答えた。

「貸し借りを記録します。ただし不作の年に無理に返させれば、組合の意味がありません」

「では、踏み倒し放題か」

エリクが口を開いた。

「畑を見に行けばいい。困っているのか、隠しているのか、話を聞こう」

ハインツは頷いた。

翌朝、種芋の貸し出しを申し込む列に、一人の老人が並んでいた。

「返せなかったら、畑を取り上げられるのか」

悠真は書式を裏返し、空白の欄を指した。

「収穫が悪かった場合は、村の立会人と一緒に事情を確認します。取り立てるためじゃなく、次の作付けを守るための記録です」

「立会人が領主の味方だったら?」

その問いには、すぐ答えられなかった。

エリクが言った。

「村の代表を一人、借りる側から選ぼう。異議があれば王都にも届くようにする」

悠真は頷き、書式を書き直した。

助けるつもりの制度も、受け取る人が怖がるなら未完成だった。

「貸す村も借りる村も、帳簿を見る権利を持たせよう」

その日の議論は日暮れまで続いた。

出資額、投票権、役員の任期、帳簿の公開、凶作時の返済猶予。

全員が納得したわけではなかった。

それでも、翌朝、最初の種芋の袋が村境を越えた。

袋には村名と重さが書かれていた。

善意を続けるために、約束を形にしたのだった。

沈黙。

ハインツは続けた。

「それでも、やってみた」

そして、悠真を見た。

「今度も、やってみればいい」

その言葉に、村長たちは頷いた。

こうして。

ベルナ村を中心に、最初の農業組合が設立された。

名称は。

【北西部農業協同組合】

参加村落、十二。

参加農家、およそ三百戸。

最初の共同資金は、決して大きくなかった。

だが、その組合には、一つの原則があった。

農民が食料を作り続けられることを、何より優先する。

数週間後。

ヴァレン商会。

アコギは、報告書を読んでいた。

「……農業協同組合?」

部下が頷いた。

「はい。複数の村が共同で種芋を管理し、農具を貸し借りしているようです」

アコギは眉をひそめた。

「……商会から借金をしなくなるのか」

「その可能性があります」

アコギは、しばらく黙っていた。

そして、「……面白い」

静かに笑った。

「ならば、組合そのものを買収できないか調べろ」

部下は驚いた。

「……組合を?」

農民の代表が立ち上がった。

「改革で収穫が増えても、種を買う金がなければ俺たちの畑は空のままだ」。

悠真は発言を遮らず、翌年の収穫で返せる種子貸出制度を議題に加えた。

返せない年の扱いまで決めるのに、会議はもう一日かかった。

「そうだ」

アコギは帳簿を閉じた。

「農民を一人ずつ相手にするより、まとめて相手にした方が早い」

商人の次の狙いは、農業組合だった。

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