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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第四十五話 農民に金を貸して畑を増やしたら、返済できない村から土地が消え始めた

アルディナ王国北部の村に、農業資金を貸す商人が現れた。

「種芋も農具も水路の修理費も貸します。返済は収穫後で結構です!」

農民たちは喜んだ。

畑を広げたくても、最初の資金がなかった。

若い農民トルンも契約書に印を押した。

「これで、娘に腹いっぱい食べさせられる」

妻のマーヤは細かな字の並ぶ紙を見た。

「返せなかったら、どうなるの?」

「収穫後に返せばいいんだ。雨さえ降りすぎなければ」

だが半年後、長雨が続いた。

芋は腐り、トウモロコシは実らなかった。

商会の係員が村に来た。

「返済期限です」

「来年まで待ってくれ。水路を直すために借りた金だ」とトルン。

「契約には、返済不能の場合、農地を担保として引き渡すとあります」

「そんな字は読めなかった」

係員は視線を落とした。

「私にも勝手に期限を延ばす権限はありません」

翌週、三軒の畑に商会の杭が立った。

子供は七人。

そのうち一人は熱を出していた。

夕方、トルンは農具を荷車に積んだ。

娘が小さな鍬を抱えた。

「お父さん、明日からどこの畑に行くの?」

「……まだ決まっていない」

「じゃあ、この鍬は持っていかなくていい?」

トルンは答えられなかった。

妻が鍬を受け取った。

「持っていこう。使う場所を、また探すんだから」

そこへエリクが来た。

「畑を失ったら、次は何を育てるんですか」

「何も。俺は遊ぶ金を借りたわけじゃないのにな」

エリクは契約書を見た。

土地だけでなく、次の収穫にも商会の権利が及ぶと小さく書かれていた。

「これを読めたんですか」

トルンは首を振った。

「印を押せば種が買える。それしか聞いていない」

エリクは三軒の名前と家族の人数を書き、悠真に送った。

数日後、悠真が到着した。

商会の係員は契約書を広げた。

「借金は消えませんよ」

「消せとは言いません」と悠真。

「ただ、説明した記録を見せてください。担保に取る土地の範囲も、返済の計算も」

係員は本店への照会を約束したが、杭を抜くとは言わなかった。

村の会議でも意見は割れた。

「困っている家を助けたい。でも、うちも余裕はない」と農民が言う。

「借りた者だけ救うなら、借りずに我慢した家が損をする」

トルンはうつむいた。

「その通りだ。俺にも責任がある」

悠真は答えた。

「責任を曖昧にしないためにも、支援と借金の話を分けましょう。子供の食事は今夜必要です。契約の妥当性は調査して決める」

村は緊急食料を家族人数に応じて配り、空き地の一部を一季節だけ貸すことにした。

支援を受ける家には共同作業への参加を求めたが、病人のいる家には免除を設けた。

それでも、トルンの娘は尋ねた。

「借りた畑は、もう帰ってこないの?」

悠真は簡単に「帰ってくる」と言えなかった。

「取り戻すために調べる。戻らない場合にも、耕せる場所を探す。でも、約束できないことは言わないよ」

数日後、本店から届いた回答には、契約説明を行ったという記録がなかった。

悠真はそれを証拠として領主の役所へ持ち込み、差し押さえの手続きが適切だったか審査を求めた。

係員は初めて頭を下げた。

「私が説明すべきでした」

トルンは言った。

「謝ってくれるなら、まず杭を立てる前に話を聞いてほしかった」

審査が終わるまで杭は残った。

だが、その隣の空き地では、トルンが娘に鍬の持ち方を教え始めた。

「ここは、うちの畑じゃない」

「そうだ。でも、土を耕す手まで取られたわけじゃない」

悠真はその光景を見つめた。

食料を作れるようにするだけでは足りない。

作り続ける権利を守らなければ、飢えは形を変えて戻ってくる。

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