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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第三十九話 国王が食料倉庫を開けろと命じたので、穀物商たちが一斉に慌て始めた

王都。

ヴァレン穀物商会。

「……国王の命令だと!?」

アコギは、報告書を読んでいた。

部下が頷いた。

「はい。王都の主要な食料倉庫について、在庫調査が行われます」

アコギは顔をしかめた。

「……余計なことを」

「さらに、軍への納入記録も再調査されるようです」

アコギは黙った。

しばらくして。

「……バルガス侯爵に連絡しろ」

「はい」

「王宮の動きを止める必要がある」

だが、その日の午後。

王国の監査官たちが、商会の倉庫へ到着した。

「国王陛下の命令により、在庫を確認する」

商会の責任者は青ざめた。

「……少々、お待ちください」

「待てない」

監査官は命令書を示した。

「開けなさい」

巨大な倉庫の扉が開かれた。

その瞬間。

監査官たちは、言葉を失った。

大量の袋。

積み上げられた木箱。

乾燥トウモロコシ。

麦。

豆。

保存食。

倉庫の奥まで、食料が詰まっていた。

「……これほどの量が」

監査官が呟いた。

悠真も、その場にいた。

「……すごい」

エリクは拳を握った。

倉庫の奥では、古い麦袋の陰に新しい木札が積まれていた。

出荷先を記す札だった。

「これは?」

倉庫番が目をそらした。

「値上がりを待っていた品です」

エリクは拳を握ったが、悠真がその手を止めた。

「怒るのは後。腐った袋がないか、先に調べよう」

備蓄を一気に市場へ出せば価格は下がる。

だが、保管状態を確かめずに配れば、病人を増やしかねない。

監査官は数量、品質、所有者を別々に記録した。

軍への納入疑惑がある袋は封印し、販売可能な在庫だけを仕分けた。

「明日には売れるのか」

エリクが尋ねた。

「全部は無理だ」

悠真は答えた。

「でも、明日から始めることはできる」

王都の人々に必要なのは、一日の奇跡ではなく、明後日も開く売り場だった。

「……これだけあれば」

言葉が詰まった。

王都の路地で、飢えていた子供たち。

アルト村へ逃げてきた避難民。

食料不足に苦しむ兵士たち。

その顔が、次々と浮かんだ。

「……どうして、売らなかったんだ」

エリクが呟いた。

監査官は、先ほど仕分けた袋の一覧と現物を照合した。

その結果。

王都の複数の倉庫には、一般販売に回せる食料が相当量残っていることが判明した。

しかも。

一部の食料は、価格が上がるのを待って出荷が止められていた。

監査官は報告書を書いた。

『食料不足の一因として、流通の停滞および在庫の集中が認められる』

その報告は、すぐに王宮へ届けられた。

国王は、静かに命じた。

「……緊急販売を開始せよ」

大臣が尋ねた。

「価格は、いかがいたしますか?」

国王は答えた。

「民が買える価格に抑えよ。ただし、生産者が来年の種を買えなくなるような価格にしてはならん」

大臣は深く頭を下げた。

「承知しました」

こうして。

王都で、初めて大規模な食料の緊急放出が始まった。

放出初日、列の先頭には裕福な家の使用人が並び、最後尾には幼子を抱いた母親がいた。

「早い者勝ちでは、また同じことになります」エリクが言った。

管理官は家族の人数と必要量を確認する札を作り、翌朝から配布方法を改めた。

倉庫を開く命令だけでは、食べ物は平等に届かない。

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