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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第二十五話 避難民が増えすぎたので、ジャガイモを配るだけでは足りなくなった

三日後。

アルト村に集まった避難民は、二百人を超えていた。

「……食料が減るのが早い」

ハインツが帳簿を見つめた。

悠真も頷いた。

「人数が増えましたからね」

エリクが尋ねた。

「あと、どれくらい持つ?」

悠真は計算した。

「今の配給量なら、備蓄の一部は一か月ほどで尽きるかもしれない」

「……一か月」

エリクは黙った。

せっかく食料を増やした。

母親も助かった。

共同倉庫の前には、鍋を持った人々が長い列を作っていた。

「昨日より薄い」

一人の男の呟きに、配給係の少女が顔を伏せた。

悠真は鍋の中を覗き込んだ。

水を増やしただけでは、腹は満ちても力が出ない。

「子供と病人の分は別に取ろう。働ける人には炊き出しや水汲みを手伝ってもらう」

「働けない老人はどうする?」

「働けないことを理由に、食事を減らさない」

エリクが頷いた。

「それを決めておかないと、強い奴から取っていく」

避難してきた女性が遠慮がちに手を挙げた。

「私は針仕事ができます。破れた毛布を直してもいいですか」

別の男も言った。

「井戸の修理なら、やったことがある」

悠真は初めて、避難民を『助けるだけの人』として見ていたことに気づいた。

「お願いします。ここを、一緒に暮らせる場所にしましょう」

列の空気が、ほんの少し変わった。

村人たちも飢えずに済むようになった。

だが、避難民が増えれば、また食料不足が起きる。

「……どうする?」

エリクが尋ねた。

悠真は答えた。

「まず、全員が必要な食料を把握しよう」

「……必要な食料?」

「子供、老人、病人、農作業をする人。必要な量は同じじゃない」

悠真は帳簿を広げた。

「それから、避難民にもできる仕事を手伝ってもらおう。ただし、体力が戻ってからね」

ハインツが頷いた。

「なるほど」

悠真は続けた。

「畑を増やす。水路を修理する。食料を保存する。共同炊事場を増やす」

エリクは拳を握った。

「俺もやる!」

そのとき。

一人の避難民が進み出た。

「……俺は大工だ」

悠真が振り返った。

「大工さん?」

「ああ。家も倉庫も建てられる」

別の男が手を上げた。

「俺は農民だ」

さらに、一人の女性が言った。

「私は、保存食を作るのが得意です」

悠真は驚いた。

避難民は、ただ食料を消費するだけの存在ではなかった。

技術を持っている。

経験を持っている。

働く力を持っている。

「……そうか」

悠真は笑った。

「みんなで、村を大きくしましょう」

配給所の前には、朝から長い列ができた。

先に並んだ者だけが受け取れる仕組みでは、歩けない老人が取り残される。

エリクは番号札を破り、家ごとの人数と体調を記録し直した。

「平等に並ばせることと、公平に配ることは違う」

その日から。

アルト村は、避難民を受け入れるために変わり始めた。

共同住宅。

炊事場。

貯蔵庫。

新しい畑。

そして、村の外れには、避難民たちが自分たちで建てた小さな家が並び始めた。

エリクは、その光景を見つめた。

「……村が大きくなってる」

悠真は頷いた。

「そうだね」

「……これなら、もっと人を助けられるかな」

「助けられると思う」

悠真は続けた。

「でも、食料だけじゃ足りない」

エリクが首を傾げた。

「……どういうこと?」

悠真は答えた。

「人が増えれば、水も、家も、仕事も必要になる」

エリクは黙った。

「……なるほど」

悠真は笑った。

「村を守るって、思ったより大変だね」

エリクも笑った。

「……本当だな」

配給所の前に並ぶ列は、日が暮れても短くならなかった。

悠真は最後尾まで歩き、避難民の数を数え直した。

帳簿に載らない幼児がいた。

途中で家族とはぐれた老人もいた。

「昨日の人数で配れば、今日来た人が食べられない」

エリクは札を配り直し、同じ人が二度受け取らないようにしながら、名前のない人も追い返さない方法を考えた。

その夜の配給は遅れた。

だが列の最後まで、湯気の立つ鍋が運ばれた。

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