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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第十三話 食料を守る自警団を作ったら、村の鍛冶屋が泣きながら剣を渡してきた

共同倉庫が襲撃されてから、三日が過ぎた。

アルト村の広場には、三つの村から集まった男たちが並んでいた。

その数、三十二人。

手にしているのは、鍬や木の棒。

中には、錆びた剣を持っている者もいた。

「……これで全員か?」

エリクが尋ねた。

ハインツが頷いた。

「今、村を離れて見張りに参加できるのは、これだけだ」

「……少ないな」

「仕方あるまい。畑を放り出すわけにはいかん」

エリクは黙った。

確かに、その通りだった。

食料を守るために自警団を作っても、農作業が止まれば意味がない。

そのとき。

「だったら、交代制にすればいい」

悠真が言った。

「交代制?」

「はい。昼間は農作業をして、夜は順番に見張るんです」

ハインツが頷いた。

「それなら何とかなるな」

悠真は続けた。

「それから、武器を持って戦うことだけが警備じゃありません」

「どういうことだ?」

「見張り台を作る。鐘を設置する。倉庫の周囲を明るくする。怪しい人が来たら、すぐに村中へ知らせる」

エリクは目を輝かせた。

「なるほど!」

「一番大切なのは、襲われる前に気づくことだよ」

だが、夜番の表を作ると、すぐに不満が出た。

「うちは病人がいる。夜中まで見張れば翌日の畑が駄目になる」

「若い者ばかり危険な役を押しつけられるのか?」

エリクは返事に詰まった。

剣を握る覚悟だけでは、人は動かない。

悠真が提案した。

「夜番に出られない家は、灯油や薪、炊事で支える。農繁期は見張りを短くする。危険を見つけたら追いかけず鐘を鳴らす」

「逃げる犯人を見送れってのか?」

「犯人を捕まえるために、畑を耕す人を失うわけにはいかないよ」

エリクはその言葉を、最初の団則に書き加えた。

自警団に入れば、畑を耕す人手が減る。

エリクは当番表を何度も書き直した。

年寄りは見張り、若者は交代で巡回し、鍛冶屋は壊れた農具の修理を優先する。

「守るために畑を捨てたら、何を守ったことになる」

こうして、三村共同自警団が結成された。

初代の団長には、エリクが推薦された。

「……俺が?」

少年は驚いた。

「まだ若いぞ?」

ハインツは笑った。

「だからこそだ。お前は誰よりも食料を守ろうとしている」

「でも、剣なんて使えない」

「それなら、覚えればいい」

声がした。

振り返ると、一人の大柄な男が立っていた。

鍛冶屋のガルムだった。

「……ガルムさん」

ガルムは布に包んだものを差し出した。

「持っていけ」

エリクが布を開く。

中には、一本の剣があった。

古いが、丁寧に手入れされている。

「……これは?」

「俺の息子の剣だ」

エリクは顔を上げた。

ガルムは静かに続けた。

「去年の冬、息子は食料を探しに隣町へ向かった」

沈黙。

「……帰ってこなかった」

エリクは剣を見つめた。

「……そんな」

「道端で倒れていたそうだ。腹が減って、歩けなくなったらしい」

ガルムの声が震えた。

「剣なんて持っていても、飢えには勝てなかった」

誰も何も言えなかった。

ガルムはエリクの肩に手を置いた。

「だから、この剣で人を殺すな」

「……え?」

「食料を守れ。人を守れ」

ガルムは涙を拭った。

「俺の息子が守れなかったものを、お前が守ってくれ」

エリクは、剣を両手で受け取った。

「……分かった」

深く頭を下げる。

「必ず守る」

その日。

エリクは自警団長となった。

だが、彼が最初に命じたのは、剣の訓練ではなかった。

「まず、倉庫の屋根を直そう」

村人たちは顔を見合わせた。

そして、笑った。

「……そうだな!」

食料を守る戦いは、壊れた倉庫の修理から始まった。

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