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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第百十一話 大陸中に農業学校が増え始めたので、悠真は自分がいなくても世界が変わることに気づいた

十年後。

アルディナ王国。

王都アルディア。

「……また手紙が届きました!」

王立農業学校の職員が叫んだ。

悠真は、机から顔を上げた。

「……今度は?」

職員は答えた。

「西方の山岳王国からです!」

「……何だって?」

「新しい農業学校が開校したそうです!」

悠真は、笑った。

「……すごいな」

職員は続けた。

「東方の大公国でも、農業研究所ができました!」

「南方の都市国家では、食料保存の学校が!」

「ヴァルシア王国では、退役軍人向けの農業教育施設が増えています!」

悠真は、静かに頷いた。

「……そうか」

二十年前。

悠真は、この世界へやってきた。

五個のジャガイモと百粒のトウモロコシ。

それだけを持って。

だが、今。

大陸の各地に農業学校ができていた。

作物の研究。

種子の保存。

灌漑技術。

土壌管理。

食料加工。

災害対策。

さまざまな知識が、国境を越えて広がっていた。

その朝、悠真は一通の手紙を読んでいた。

遠い国の農業学校から届いた手紙には、悠真の知らない作物の絵が描かれていた。

『あなたの方法をそのまま使ったら失敗しました。

私たちは土地に合わせて変えました』

悠真は、その一文を何度も読んだ。

「……よかった」

エリクが首を傾げる。

「失敗したんだろ?」

「うん。でも、俺の言うことを疑って、自分たちで確かめたんだ」

窓の外では、生徒たちが議論しながら畑を歩いていた。

悠真は手紙を大切にしまった。

自分の名前が消えても、考える人が残る。

それが本当の成功だった。

その日の午後。

悠真は、久しぶりにアルト村を訪れた。

「……悠真!」

エリクが迎えてくれた。

すっかり大人になったエリクは、今では地域の農業組合をまとめる立場になっていた。

「……久しぶり!」

悠真は笑った。

エリクも笑った。

「……忙しそうだな」

「……まあね」

二人は、畑を歩いた。

そこには、さまざまな作物が育っていた。

ジャガイモ。

トウモロコシ。

麦。

豆。

野菜。

そして、寒冷地向けに選ばれた山麦。

「……変わったな」

悠真が呟いた。

エリクは頷いた。

「……ああ」

そして、「昔は、ジャガイモだけで精いっぱいだった」

悠真は笑った。

「……そうだね」

エリクは続けた。

「今は、作物の種類も増えた」

「倉庫もある」

「水路もある」

「農業組合もある」

「学校もある」

悠真は、静かに頷いた。

エリクは続けた。

「……お前がいなくても、みんなが考えるようになった」

悠真は、顔を上げた。

「……うん」

エリクは笑った。

「……寂しいか?」

悠真は、しばらく考えた。

そして、「……少しだけ」

エリクは笑った。

「正直だな」

悠真も笑った。

「でも……」

そして、「……すごく嬉しい」

エリクは頷いた。

「……だろうな」

悠真は、畑を見つめた。

自分がいなくても、作物は育つ。

自分がいなくても、農民たちは考える。

自分がいなくても、子供たちは学ぶ。

それは、悠真がずっと望んでいたことだった。

「……エリク」

「何だ?」

悠真は、静かに言った。

「俺、やっと分かった気がする」

「……何が?」

悠真は答えた。

「本当に大事なのは、俺が何を作ったかじゃない」

そして、「俺がいなくなったあとも、みんなが作り続けられることなんだ」

エリクは、静かに頷いた。

「……そうだな」

二人は、夕焼けを見つめた。

その向こうでは、子供たちが畑を走り回っていた。

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