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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第十一話 商人が市場を潰そうとしたので、村人たちは共同倉庫を作った

王都。

アコギ・ヴァレンの商館。

「……市場だと?」

アコギは報告書を読み、眉をひそめた。

「はい。三つの村が共同で市場を開いています」

部下が答えた。

「領外販売ではないため、現在の命令では取り締まれません」

アコギは静かに帳簿を閉じた。

「……なるほど」

そして、笑った。

「ならば、別の方法を使おう」

数日後。

三つの村に、商会から通知が届いた。

『今後、商会による買い取りは、指定された集荷場でのみ行う』

『また、品質検査費および保管費を徴収する』

ハインツは怒った。

「また金を取るのか!」

悠真は通知を読んだ。

「……なるほど」

エリクが尋ねた。

「どうする?」

悠真は答えた。

「商会に頼らなくても、食料を保存できるようにしましょう」

「……保存?」

「はい。共同倉庫を作ります」

しかし、倉庫を建てると決まった途端、別の問題が持ち上がった。

「うちの村の木を使って、よその村の芋を守るのか?」

「だったら、倉庫はこっちに建てるべきだ!」

一人の農民が席を蹴った。

飢えを知る者ほど、自分の取り分を手放せない。

悠真は三つの村の収穫量を板に書いた。

「預けた量も、持ち出した量も、村ごとに記録します。鍵は三つ。各村の代表が一つずつ持ち、二人以上が立ち会わなければ開けられないようにしましょう」

「それでも、誰かが嘘をついたら?」

「そのときは帳簿と現物を照らします。俺を信じなくていい。確認できる仕組みを作りたいんです」

しばらくして、怒っていた農民が腰を下ろした。

「……だったら、うちからも木を出す」

全員が賛成したわけではない。

それでも、最初の一本が運ばれた。

三つの村の村人たちは、再び集まった。

今度は、食料を保存するための倉庫を建てることになった。

木材を集める。

石を運ぶ。

床を高くする。

風通しを良くする。

湿気がこもらないようにする。

悠真は説明した。

「ジャガイモは暗くて涼しい場所に保管します。長く置きすぎず、傷んだものを取り除きながら、順番に使います」

「トウモロコシは?」

「十分に乾燥させて、湿気や虫が入らないように保存します」

エリクは、倉庫の入口に木の板を取り付けた。

そこには、こう書かれていた。

【共同食料倉庫】

【種芋・種子の持ち出しは記録すること】

【食料の配分は村の代表者が共同で決める】

ハインツは感心した。

「……立派なものだな」

エリクは笑った。

「これなら、誰か一人が勝手に持ち出せない」

完成の日、三村の代表は鍵を一つずつ受け取った。

ハインツは鍵を掲げた。

「信用できないから分けるんじゃない。信用を一人の善意に任せないためだ」

悠真は、扉の横に記録板を掛けた。

そして、共同倉庫には、最初の食料が運び込まれた。

ジャガイモ。

乾燥トウモロコシ。

麦。

村人たちは、その光景を見て涙を流した。

「……食料を蓄えられる日が来るとはな」

ハインツが呟いた。

悠真は静かに答えた。

「まだ始まったばかりですよ」

完成した日の夕方、倉庫の床板が湿っているのを見つけたのは、建設に反対していた農民だった。

「これじゃ芋が傷む」。

彼は自分の家の余った石を持ち込み、床下に隙間を作り直した。

エリクは帳簿の最初の行に、預けた食料ではなく、その男の作業を書き込んだ。

倉庫を守るのは鍵だけではない。

その夜。

アコギの商館に、新たな報告が届いた。

『三村共同倉庫、完成』

『商会への依存度、さらに低下』

アコギは報告書を読み、しばらく黙っていた。

そして、「……面白い」

静かに笑った。

「ならば、倉庫そのものを狙えばいい」


挿絵(By みてみん)

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