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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第百九話 大陸農業会議で食料の奪い合いが始まりそうになったので、悠真は「余っている国なんてありません」と言った

王都アルディア。

第一回大陸農業会議。

「……我が国には、食料を輸出する余裕がない!」

西方の代表が叫んだ。

「それはこちらも同じだ!」

東方の代表が反論した。

「寒冷化で収穫量が減っている!」

「ならば、技術だけ共有すればいい!」

「種子はどうする!?」

「種子まで渡したら、来年の作付けができなくなる!」

会議室は、騒然としていた。

悠真は、壇上で頭を抱えた。

「……まずいな」

隣にいたエリクが苦笑した。

「……畑の会議なのに、戦争が始まりそうだぞ」

悠真は頷いた。

「……本当だよ」

そのとき。

一人の代表が叫んだ。

「……アルディナ王国は、ジャガイモを大量に持っているのだろう!」

悠真が顔を上げた。

「……え?」

代表は続けた。

「ならば、我々に分けるべきだ!」

別の代表も頷いた。

「そうだ!」

「技術を公開するというなら、種芋も渡せ!」

悠真は、しばらく黙った。

そして、「……皆さん」

会議室が静まり返った。

悠真は、静かに言った。

「アルディナ王国にも、余っている食料はありません」

代表者たちが顔を上げた。

悠真は続けた。

「寒冷化で収穫量が減っています」

「洪水で農地も失いました」

「備蓄を使いながら、何とか暮らしています」

沈黙。

悠真は続けた。

「皆さんの国も、同じだと思います」

代表者たちは、黙った。

悠真は、静かに言った。

「……余っている国なんて、ほとんどないんです」

そして、「だからこそ、奪い合っても解決しません」

会議室が静まり返った。

悠真は続けた。

「今ある食料を、どう使うか」

「次の収穫を、どう増やすか」

「失敗したとき、どう助け合うか」

「それを話し合うために、皆さんに来ていただいたんです」

西方の代表が、静かに尋ねた。

「……では、具体的にどうする?」

悠真は、地図を広げた。

会議の席で、ある国の代表が言った。

「我が国には輸出する余裕がない」

別の代表も続けた。

「こちらも同じだ」

悠真は頷いた。

「だからこそ、余剰だけを交換する会議では足りません。種子の病気の情報、保存法、干ばつへの備え、輸送路の状況を共有しましょう」

「技術を教えたら、商売の相手が増える」と商人が言った。

「飢えたままの国は、買い手にもなれません」

会場は静かになった。

協力は善意だけでは続かない。

互いが生き延びる利益を見つける必要があった。

数日前のことを、ふと思い出した。

会議の休憩中、エリクは各国の代表を小さな実習畑へ案内した。

「ここには、三種類の種があります」

「どれが一番優れている?」

「場所によって違います」

エリクは寒さに耐える麦と、温暖地でよく実る豆を指さした。

「全部を一国で抱え込んでも、干ばつや霜が来れば失います。互いの失敗を知る方が、強いんです」

西方の代表が尋ねた。

「では、種を交換した結果が悪かったら?」

「その記録も交換しましょう」

会議室へ戻った代表たちは、輸出量の取り合いではなく、試験区の共同設置から話し始めた。

「まず、各国の食料生産と備蓄の状況を、可能な範囲で共有します」

「次に、作物ごとの栽培試験の結果を交換します」

「そして、種子は各国の翌年の作付けに必要な分を確保したうえで、少量から交換します」

東方の代表が尋ねた。

「……少量で意味があるのか?」

悠真は頷いた。

「あります」

「まず試験栽培を行い、その土地に適しているか調べます」

「いきなり大量に植えて失敗するより、安全です」

代表者たちは、少しずつ頷いた。

さらに、悠真は続けた。

「食料輸送路の情報も共有しましょう」

「どこで道路が壊れているか」

「どこに安全な倉庫があるか」

「どの地域で緊急支援が必要か」

西方の代表は、しばらく考えた。

そして、「……なるほど」

東方の代表も頷いた。

「……まずは、情報からか」

悠真は笑った。

「はい」

そして、「食料を分ける前に、知識を分けることから始めましょう」

会議室に、静かな拍手が響いた。

こうして、第一回大陸農業会議では、各国の農業情報を共有するための協定が結ばれた。

だが、そのころ。

王立農業学校では、さらに大きな発見が起きようとしていた。

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