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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第百五話 隣国で食料を巡る暴動が起きたので、ルドルフは剣を抜かずに群衆の前へ立った

ヴァルシア王国。

王都ヴァルハイム。

「……パンを寄こせ!」

群衆が叫んでいた。

「子供が飢えているんだ!」

「倉庫を開けろ!」

「貴族だけが食べているじゃないか!」

市場には、数百人の市民が集まっていた。

寒冷化による凶作。

輸送路の寸断。

食料価格の上昇。

そして、政府への不信。

不満が、一気に爆発していた。

「……門を守れ!」

兵士たちが槍を構えた。

そのとき。

「……待て!」

一人の若い士官が叫んだ。

ルドルフ・ベルナー。

かつて、アルディナ王国への侵攻軍に所属していた中尉だった。

今は、帰還兵の農業復興事業に携わっている。

「……武器を下ろせ!」

兵士たちが驚いた。

「……中尉!?」

ルドルフは続けた。

「民に槍を向けるな!」

兵士たちは、戸惑いながら武器を下げた。

ルドルフは、群衆の前へ歩み出た。

「……皆さん!」

群衆が振り返った。

「……何だ、お前は!」

「軍人か!」

「また俺たちを殴るつもりか!」

ルドルフは、静かに答えた。

「……違います」

そして、「私は、皆さんの話を聞きに来ました」

群衆は、ざわめいた。

一人の女性が叫んだ。

「……話を聞くだけで、子供が助かるのか!」

ルドルフは、言葉を失った。

女性は続けた。

「三日も、まともな食事をしていないんだ!」

ルドルフは、拳を握った。

そして、「……申し訳ありません」

深く頭を下げた。

群衆が静まり返った。

ルドルフは続けた。

「私は、十年前の戦争でアルディナ王国へ行きました」

「食料を奪うために」

群衆が顔を上げた。

数日前のことを、ふと思い出した。

ルドルフは、群衆の前で空の手を上げた。

「私を信用しなくていい。ただ、倉庫の数を一緒に確かめてほしい」

「また嘘をつくつもりか!」

石が足元に落ちた。

兵士が剣の柄に手をかける。

「抜くな」

ルドルフは低く命じた。

「今日の配給は、まず子供と病人から始める。明日の分は、今ここで帳簿を公開する」

群衆の一人が叫んだ。

「明後日はどうする!」

ルドルフは目を伏せた。

「まだ足りない。だから隠さず、隣国に支援を求める」

沈黙の後、誰かが帳簿を受け取った。

「……だが、そこで知りました」

「飢えた人間同士が戦っても、食料は増えない」

沈黙。

ルドルフは続けた。

「だから、今は農業復興に携わっています」

「……それで?」

女性が尋ねた。

ルドルフは答えた。

「まず、倉庫の食料を調べます」

「そして、緊急配給が必要な家庭を確認します」

「……本当に?」

「はい」

ルドルフは頷いた。

「ただし、私一人では決められません」

「だから、皆さんの代表にも立ち会ってほしいんです」

群衆は、顔を見合わせた。

そのとき。

一人の老人が口を開いた。

「……倉庫を調べるなら、わしも行く」

ルドルフは頷いた。

「お願いします」

こうして、市民代表と軍の担当者による倉庫調査が始まった。

だが、調査の結果、衝撃的な事実が明らかになった。

王都の倉庫には、政府が発表していた量よりも、はるかに多くの食料が残っていたのだ。

ルドルフは、報告書を握りしめた。

「……誰が、隠していたんだ?」

ルドルフは剣を鞘に収めたまま、広場へ出た。

「我々の倉庫には何がある!」と誰かが叫んだ。

「足りない」とルドルフは答えた。

「だから今ある量を公開する」

怒号が上がる。

「足りないと言うだけなら誰でもできる!」

「そうだ。私が今日約束できるのは、明日の配給表と、隠さない帳簿だ」

彼はかつて命令に逆らって救った部下の顔を思い出した。

剣を抜かない決断は、あの日から続いていた。

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