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飢えた王国 IF ~五個のジャガイモから始める、誰も飢えない国づくり~  作者: レモンティー


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第百一話 洪水で王国の食料が減ったので、ユリウスは貴族たちに倉庫を開放するよう命じた

王都アルディア。

王宮。

「……被害報告です」

財務大臣が、書類を差し出した。

王太子ユリウスは、静かに受け取った。

【ルーデン川流域】

【住宅被害 多数】

【農地浸水 広範囲】

【備蓄倉庫 一部損傷】

【食料輸送路 複数箇所で寸断】

ユリウスは、深いため息をついた。

「……食料の残量は?」

財務大臣が答えた。

「王国全体では、通常消費量の約三か月分です」

沈黙。

悠真は、報告書を見つめた。

三か月分。

しかも、次の収穫も期待できない地域がある。

「……厳しいですね」

悠真が呟いた。

財務大臣は頷いた。

「……ああ」

そのとき。

宰相が口を開いた。

「……殿下」

ユリウスが顔を上げた。

「何だ?」

「地方貴族の倉庫には、まだ食料が残っています」

ユリウスは、眉をひそめた。

「……どれほどだ?」

「正確な量は、まだ把握できていません」

「……なぜだ?」

宰相は答えた。

「私有財産として、報告を拒む貴族もおります」

ユリウスは、しばらく黙った。

そして、「……調査せよ」

大臣たちが顔を上げた。

ユリウスは続けた。

「王国全体の食料状況を把握する」

「ただし、正当な備蓄まで無条件に没収するつもりはない」

財務大臣が頷いた。

「……では?」

ユリウスは答えた。

「まず、保有量を申告させる」

「必要な食料を確保したうえで、余剰分の供出を求める」

「適正な補償も行う」

悠真は頷いた。

「……それがいいと思います」

だが、数日後。

貴族たちの間で反発が広がった。

「……我々の財産を奪うつもりか!」

「王国の失政ではないか!」

「なぜ、我々が負担しなければならん!」

王宮では、貴族会議が開かれた。

ユリウスは、静かに立ち上がった。

「……諸君」

貴族たちが顔を上げた。

ユリウスは続けた。

「王国は、危機にある」

「寒冷化」

「食料不足」

「洪水」

「避難民の増加」

「このままでは、多くの民が飢える」

一人の貴族が叫んだ。

「……だからといって、我々の食料を!」

ユリウスは、静かに答えた。

貴族の一人が叫んだ。

「私有財産を奪うのか」

ユリウスは答えた。

「無制限に奪うつもりはない。数量を確認し、必要分を買い上げ、支払えない分は記録して補償する」

「王家の倉庫はどうする」

「最初に開ける」

会議室が静まった。

命令を出す者が自分の倉庫を閉ざしていては、誰も従わない。

数日前のことを、ふと思い出した。

貴族の一人が立ち上がった。

「我が家の備蓄は私財です。王命でも、無償で渡すわけにはいきません」

ユリウスは怒鳴りかけて、言葉を飲んだ。

「では、王国が買い上げる。数量と品質を公開し、支払いの記録も残す」

「財源は?」

「宮廷の改修費を止める」

広間がざわついた。

財務大臣が深く頭を下げる。

「殿下、それでも足りません」

「ならば、王家の予備費も使う」

悠真はその横顔を見つめた。

命令するだけの王ではない。

自分の取り分を減らす覚悟を持つ王が、そこにいた。

「諸君の家族を飢えさせるつもりはない」

そして、「だが、倉庫に余剰食料がある一方で、隣の村の子供が飢えているなら、王国として放置できない」

貴族たちは黙った。

ユリウスは続けた。

「必要量は残す」

「供出には補償を行う」

「輸送も王国が手配する」

「そして、供出した食料の使途は公開する」

一人の老貴族が、静かに尋ねた。

「……殿下」

「何だ?」

「我々が協力すれば、民は助かるのですかな?」

ユリウスは、しばらく考えた。

そして、「……必ず全員を救えるとは、約束できない」

会議室が静まり返った。

ユリウスは続けた。

「だが、何もしなければ、確実に助けられない者が増える」

老貴族は、静かに頷いた。

「……なるほど」

そして、「我が領の倉庫を、調査していただこう」

ほかの貴族たちも、少しずつ頷いた。

こうして、王国の緊急食料供出制度が始まった。

だが、その夜。

王宮の奥で、病床の国王アルベルト三世が、ユリウスを呼んだ。

「……ユリウス」

「父上!」

国王は、静かに言った。

「……話がある」

ユリウスは、寝台の横に膝をついた。

国王は、ゆっくりと続けた。

「王国の未来についてだ」

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