第170話 悪夢
僕たちはついに、魔王城に乗り込んだ。
魔王アガレスが悠々と玉座に座している。
「来たか、勇者ファイン。そして、その仲間たちよ」
「魔王アガレス、覚悟。世界平和のために、貴様を倒す!」
「来い。ここで決着をつけよう」
僕は腰から聖剣エクスカリバーを抜いた。
それに呼応するように、魔王は悠然と玉座から立ち上がった。
「出よ、魔剣レーヴァテイン」
凄まじい紫色の稲妻と共に、魔王の右手には漆黒の魔剣が顕現した。
「行くぞ、魔王!」
初めに、僕が魔王に向かって走る。
そして、聖剣を思いきり振り下ろした。
聖剣は魔族などの邪悪な存在を粉砕することができる。
その一撃は魔族の王である、魔王に対して有効だ。
しかし、聖剣は魔剣によって防御された。
「この程度か。勇者ファイン」
「まだだぞ!」
次第に魔王との戦いは激しさを増す。
互いの攻撃は未だ有効打とはならない。
ところが、僕は次第に押されはじめる。
魔王は一瞬の隙を突き、火炎爆弾を放った。
ヒューイは盾で炎の魔法をガードする。
「ぐおおおおおおおおッ!!!」
しかし、あまりの威力によってヒューイは吹き飛ばされてしまう。
ヒューイは床に倒れてしまった。
「ヒューイさん!!」
セレーネはヒューイを回復しようとした。
ところが、魔王はいつの間にかセレーネの背後に回り込んだ。
そして、背後から魔剣でセレーネの胴体を刺した。
セレーネは大量に血を流し、その場に倒れてしまった。
「ヒューイ、セレーネ!!」
「どこを見ている?」
魔王はいつの間にか、僕の背後へと瞬間移動していた。
そして、魔剣で斬撃を放った。
そこへ突如ルナが現れ、僕を庇った。
ルナは右腕を切断されてしまい、胴体にも深い傷を負ってしまった。
「がはっ……」
ルナは口から大量の血を吐いて倒れた。
「ルナ!!」
「逃げ……て、ファイ……ン」
「ルナーーーッ!!!」
ルナは静かに目を閉じた。
「至高……!!」
「回復などさせん!」
魔王は再び僕の背後へ瞬間移動し、魔剣を振り下ろした。
僕は聖剣で、魔王の魔剣を受け止める。
しかし、その直後に魔王は物凄いスピードで斬撃のラッシュを放った。
僕は防御しきれず、バラバラに切り刻まれてしまった。
「やったぞ! ついに星の英雄たちを倒したぞ!!」
魔王は僕たちを倒したことにより、大喜びする。
僕たちは、全滅してしまった……。
「……イン……! ファイン!」
「ハッ!!」
目が覚めた。
どうやら、今のは夢だったようだ。
飛んだ悪夢である。
そして、ルナが起こしてくれたようである。
「大丈夫? ずいぶんうなされていたみたいだけど……」
「ああ、大丈夫だ」
「よかった。そんなことより、大変よ。こっちに来て」
ルナに呼ばれて、窓の方へと連れていかれた。
外の様子を見ると、町中にクリーチャーの群れが現れた。
「アイツら、やはりこんなところにまで……!」
今喋ったのは、リーズ王女である。
そして、クリーチャー以外にも見たこともない魔物がいる。
巨大な一つ目に、下には無数の触手をぶら下げている。
そして、その一つ目は空中を浮遊している。
僕はその魔物を鑑定した。
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・エビルアイ LV:84
種族:悪魔
HP:780/780
MP:999/999
力:633
魔力:1196
器用さ:468
素早さ:658
防御:611
耐魔:996
魔法:闇魔法LV.8
スキル:破壊の眼光
特性:闇属性半減、光属性弱点
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「あいつ、エビルアイというのか」
一つ目の魔物の名前が判明した。
明らかにこの世に存在するような魔物ではない。
あれも“魔界”から召喚されたモンスターか。
そんなことを考えていると、屋根の上に気配を感じた。
相手もこちらの気配に気づいたようで、地上に降りてきた。
現れたのは、クリーチャーであった。
「シャアアアアアアアア!!」
クリーチャーは僕たちを見るや否や、けたたましく威嚇した。
そして、飛び付いてきた。
僕はすぐに聖剣を抜き、クリーチャーを切断した。
ところが、今の威嚇を聞いた他のヤツらがこちらに気づいた。
「ファイン、見つかっちゃったわよ!」
「仕方がない。こうなったらやるしかない!」
「おう!」
僕たちは魔物の群れと避けられない戦闘に入った。
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目の前には、クリーチャーやエビルアイといった異形の魔物たちが多数いる。
すでにこれほどの数のモンスターが来ているとは。
十中八九、ディアブロが僕たちにけしかけて来たのだろう。
完全に囲まれた。
全員、武器を構える。
「いいか、こちらの方が数的不利だ。よって壁を背にして戦え!」
「了解!」
「ヒューイ、守りは任せる」
「おう!」
「セレーネは後方支援だ。前に出るなよ」
「はい」
僕の指示で、仲間たちが配置につく。
大勢の魔物たちが広場に集まっており、全てがこちらに向いている。
対して、こちらは建物の壁を背にしている状況である。
そのため、背後からは攻撃されることはなく、防御するには向いている地形と言える。
その一方で、逃げ道は制限されており、敵を倒して正面突破するしかない。
よって、状況は有利ではなく、むしろこちらが不利と言える。
「まずは僕の魔法で一気に数を減らす。来たれ、雷雲!」
僕が聖剣を天高く掲げ、雷雲を呼んだ。
もはや魔力を温存している場合ではない。
手っ取り早く敵を減らすには、やはりこれしかないだろう。
「稲妻斬撃!」
無数の雷が、モンスター達を焼き払う。
この攻撃により、多数の魔物たちが消し炭になった。
しかし、まだ多くの敵が残っている。
そして、通常の魔法に比べて稲妻斬撃は長いクールタイムが発生する。
今更言うまでもないことだが、この魔法を連発することはできない。
残ったクリーチャーたちは一斉に走って向かって来た。
ヒューイが盾で防御しつつ、斧で反撃を行う。
ところが、クリーチャーは素早い動きでヒューイの攻撃を回避する。
「ちっ! なかなか素早いじゃねぇか!」
ヒューイはクリーチャーの俊敏な動きに苦戦する。
一方、ルナは素早い動きを駆使してクリーチャーの群れをなぎ倒す。
ルドラの騎士たちも応戦する。
リーズ王女やレベッカはなんとか善戦している。
しかし、その他の騎士たちはクリーチャーの素早い動きについて来れず、次々にやられてしまう。
やはりディアブロが召喚しただけあってか、並みの魔物よりも強い。
僕は単騎で敵に突っ込み、素早い動きで近くにいたクリーチャーを切り刻んだ。
魔物たちの敵意が僕に集まった。
「さあ、来い。僕が相手だ!」
クリーチャーたちは一斉に僕に向かってきた。
「高速化」
クリーチャーの動きは素早い。
そこで、補助魔法でスピードを上げておく。
次々に襲ってくるクリーチャーを、剣戟でどんどん倒していく。
すると、敵陣の後方から光線が飛んで来た。
僕は結界で防御する。
どうやら、巨大な一つ目……エビルアイが放った光線のようだ。
エビルアイに対して、稲妻矢を撃つ。
稲妻は巨大な目に直撃し、エビルアイは断末魔の声を上げて倒れた。
しかし、如何せん敵の数が多い。
ディアブロがここまで多くの魔物を投入してくるとは。
「ファイン様、下がってください。ここは私の魔法を使います。出でよ、天の精霊シルフ」
セレーネが天の精霊シルフを呼び出した。
「天の雷よ、我らに仇成す邪なる者を貫け、【ゴッド・サンダー】!」
シルフは凄まじい稲妻を放ち、全ての敵を焼き払った。
これにより、魔物の群れは全滅した。
「姫様、何とか魔物の群れを撃退することに成功したようです。しかし、同時に何名かの部下たちが犠牲になり、複数の負傷者も出ています」
「もともと人数の少ない私たちにとっては、かなりの痛手ね。またいつアイツらが襲ってくるか分からないから、これ以上の長居は危険ね。1時間の休憩は挟んだのち、夜明けとともに出発しましょう」
「はっ!」
「セレーネ、負傷者の手当を頼む」
「はい」
「君も長旅で疲れているだろう。出発まで休んでおけ」
「はい」
なんとか魔物の群れを殲滅することに成功した。
しかし、この戦いで何人かの騎士がやられてしまった。
だからといって、こんなところで諦めるわけにはいかない。
夜明けとともに、西の都市に向けて出発することになった。




