第169話 滅ぼされた王国
夜が明けて、サイドに向けて再び出発した。
現在は、森林地帯を馬に乗って駆け抜けているところだ。
しばらく進んでいると、スケルトンやゾンビといったアンデッド軍団に遭遇した。
「アンデッド!? こんなところにまで……」
ゾンビの服はボロボロになっており、その服装などから察するにルドラ王国の民だったと思われる。
そして、スケルトンは剣や弓などで武装している。
十中八九、ディアブロがけしかけてきたのだろう。
我々はアンデッド軍団との戦闘に入った。
僕が先制攻撃で風斬刃を放ち、複数体のアンデッドを同時に葬る。
その後、僕は素早く敵陣に突っ込んで接近戦をかける。
今後、長旅が予想されるため、できる限り魔力は温存したい。
「相変わらずやるな、ファイン! 今度はオレが行くぜ! クソザコアンデッド共、このオレ様が相手だ!」
ヒューイはそう言って、いつも通り斧を構えて突撃した。
「おりゃああああああああッ!! アンデッド共、オレの一撃を食らえ!!」
ヒューイは斧で横斬りを放ち、三体のアンデッドを同時に攻撃した。
圧倒的な破壊力によって、ゾンビ達の身体は上下真っ二つになった。
そして、その身体を支えられなくなって地面に倒れた。
「どうだ! オレの一撃を見たか!」
ところが、切断されたアンデッドたちの身体はすぐに再生されてしまった。
「なにッ!?」
「どういうことだ? アンデッドの身体が再生されることは今までなかったはず。 ……!」
「君たちに一つ言い忘れていたことがあった。ディアスで戦ったアンデッド達は斬っても斬っても、再生したのだ。それで私達はキリがなくなって逃げるしかなかったのだ……!」
赤髪の騎士レベッカはそのように話す。
そういえば、王帝戦争時に湿地帯で戦ったドラゴンゾンビは再生能力があったのを思い出した。
ということは、ディアブロがこのアンデッド達に魔法で再生能力を付与したに違いないだろう。
ルナが素早くアンデッドに近づき、剣で斬撃を放つ。
続けて、蹴りで別のスケルトンの頭を吹き飛ばす。
しかし、アンデッドたちの身体は元通りに戻った。
「やっぱり、こいつらすぐに再生するわ!」
しかし、一つ気になることがあった。
それは、僕の攻撃を受けたアンデッドは再生することなく消滅したことである。
もしかしたら……。
「ファイン、後ろ!」
考え事をしていると、ルナが僕の背後に敵が近づいて来ていることを知らせる。
だが、敵の気配にはすでに気づいている。
僕はすぐに振り返り、聖剣でスケルトンを切断した。
「ギャアアアアアアアアッ!!」
斬撃を受けたスケルトンは、断末魔を悲鳴をあげて消滅した。
「そうか。聖剣なら再生させることなくアンデッドを浄化できるのか!」
『そうよ! あたしは聖剣だから、アンデッド共なんか目じゃないわ!』
「よし、こうなったらこいつらは僕に任せてくれ!」
僕は聖剣を構えて、単騎敵陣に突撃する。
一人で突っ込むのは危険だが、現状こいつらに有効打を与えられるのは僕しかいない。
僕は聖剣で次々とアンデッドたちを斬り伏せていく。
しかし、一向に減らない敵を前に、次第に手を焼くことになる。
「数が多すぎる!」
「ファイン様、下がってください。私がアンデッドたちを殲滅いたします。いでよ、光の精霊ウィル・オ・ウィスプよ。聖なる光よ、邪なる者を浄化せよ……ホーリーライト!」
セレーネが光の精霊を呼んだ。
光を浴びたスケルトンやゾンビ達は断末魔の悲鳴をあげて消滅する。
聖なる力は、邪なるアンデッドには苦しいだろう。
僕たちは、なんとかアンデッド集団を殲滅することができた。
「ここまで来たら、この国はもう……」
リーズ王女はそのように呟く。
ここは、一刻も早く西の都サイドを目指すしかない。
■■■■■
ある日の晩、僕たちは一つの町にたどり着いた。
しかし、明かりはまったくなく、町は静寂に包まれていた。
「ここが、西の都市サイドですか?」
「いいえ。しかし、この町もすでに滅ぼされているとは……」
建物は破壊されており、町には痛々しさしか残っていなかった。
「ひどい有り様だな」
「静かに。この気配は……」
嫌な気配を感じた僕は剣を抜いた。
すると、うめき声が聞こえて住宅の影から次々とゾンビたちが現れた。
やはり、町にはアンデッドがはびこっていた。
いや、正確にはこの町の住人たちがゾンビに変えられたと言ったほうがよい。
「この町の元住民たちか。仕方がない、やるぞ!」
「おう!」
「ヒューイ、アンデッドたちをこの広場に引き付けられるか? 僕に考えがある」
「おう、任せろ!」
僕の指示で、ヒューイは斧と盾を構えて前進した。
「ルナも無理のない範囲で戦闘を頼む」
「ええ」
「セレーネは援護だ」
「わかりました」
ルナも剣を構えて、ダッシュで敵陣に向かう。
僕は聖剣でゾンビたちを次々に斬り伏せる。
動きは遅いので、背後さえ取られなければ問題ない。
聖剣で斬られたアンデッドたちはすぐに消滅した。
一方、通常の武器で攻撃したアンデッドは再生する。
しかし、今はこいつらを引き付けることが目的だ。
「彼らだけに戦いを任せる訳には行かないわ。私たちも戦闘に加勢するわよ!」
「はっ!」
リーズ王女たちを戦闘に加わった。
だが、アンデッドたちの数は一向に減らないどころか、逆に増えてきた。
「今だ! 全員後退しろ!」
僕の指示で全員が下がる。
そして、僕は聖剣を天高く掲げた。
「稲妻斬撃!」
アンデッドたちを広場に集め、稲妻斬撃で一掃した。
聖剣の効果を受けたアンデッドたちは全て消滅した。
「すごい。これが勇者の力か……」
まだ敵が残っているかもしれないので、僕は探知で周囲を確認する。
「探知。……周囲に敵の気配はありません」
「そう。なら今夜はこの町で休みましょう」
アンデッド軍団を倒したあと、僕たちはこの町で休息を取ることに決めた。
「ここもだいぶ荒らされているな」
「どうしたらこんな風になるのかしら」
「魔族が強力な魔法か何かを使ったことは間違いないだろう」
「ひどい……」
「予想はしていたが、やはりほとんど食料は残っていないな」
町で食料を調達しようと思ったが、予想通り食料は満足に手に入らなかった。
そして、すでに夜も更けているため、建物で睡眠を取ることにした。
ただし、敵がいつ襲ってくるか分からないため、交代で見張りを行うことにした。




