第165話 覚醒、そして……
魔王四天王の一人である激怒のジャークが、エルトリア王国に攻めて来た。
そして、ジャークはイフリートに変身し、現在はこれと交戦中。
しかし、イフリートの纏う炎のオーラを前に、僕たちの攻撃は妨げられていた。
すでに城内はボロボロであった。
「これでも食らえ!!」
イフリートは、火炎爆弾を放つ。
セレーネが結界で防御する。
「チクショー、オレたちの攻撃が通じないなんてよぉ! 一体どうすりゃあいいんだよ!?」
僕はダメ元で、イフリートに向けて風斬刃を放つ。
すると、僅かだが炎のオーラに亀裂が入ったのが見えた。
しかし、その亀裂はすぐに閉じた。
もしかしたら……。
「どうやら、風の魔法で炎のオーラに僅かだが亀裂を入れることができるようだ。ルナ、僕が風斬刃でヤツの炎に亀裂を入れる。その隙に君の氷の槍をぶち込め!」
「でも、炎の熱で溶けちゃうよ!?」
「最大の魔力を込めろ。そうすれば、君の魔力なら溶けないはずだ!」
「わかったわ!」
僕はルナと連携して、イフリートに攻撃することにした。
「風斬刃!」
まず、僕が手筈通りに風斬刃を放つ。
すると、イフリートが纏う炎に再び亀裂が入った。
「今だ! ルナ、やれ!!」
「氷の槍!」
僕の合図で、ルナが氷の槍をイフリートに向けて放った。
しかし、炎の熱で槍が徐々に溶けはじめた。
「いっけええええええええっ!!」
ルナの放った氷の槍は、なんとかイフリートの胴体に突き刺さる。
「グオオオオオオオオオッ!!! 下等なムシケラどもが……よ、よくも、このオレに……!!」
大ダメージを受けたイフリートは激怒する。
「ここまでオレを怒らせたのは、テメェらが初めてだぜ。星の英雄たち、もうテメェらには容赦しねぇぜ!! インフェルノモード!!」
激怒したイフリートの炎はさらに激しくなった。
同時に、胴体の傷も塞がってしまった。
こいつ、やはり再生するのか。
「こいつはヤバそうだぜ……!」
「これでお前らを容赦なく皆殺しにできるぜ。さあ、パワーアップしたオレの力、テメェらに存分に見せてやるぜ!!」
イフリートは火炎爆弾を六発撃ってきた。
「結界!」
セレーネが結界を張って防御する。
火炎爆弾は大爆発を起こした。
何とか防ぎきれたものの、結界にはヒビが入った。
「アトミックフレア!」
イフリートは次に、アトミックフレアを放ってきた。
炎の精霊サラマンダーの魔法だ。
しかし、イフリートは精霊と契約せずとも、この魔法を使うことができるようだ。
「オレが防御するぜ、聖盾!」
「よせ、ヒューイ!!」
ヒューイが盾で僕たちを庇った。
僕はそんな彼を制止したが、すでに遅かった。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
ヒューイは大爆発を防御しきれずに、大ダメージを受けてしまった。
「ヒューイさん! 今回復を……!」
ところが、ヒューイを回復しようとしたセレーネが、イフリートの火球を受けて負傷してしまった。
「きゃああああっ!!」
「ヒューイ! セレーネ!!」
「これで、後はお前ら二人だけだな」
「くそっ、風斬刃!」
僕は風斬刃をイフリートに向けて放つ。
しかし、炎のオーラには全く傷がつかなかった。
「くっ、やはりダメだ! さっきよりも、防御力が上がっている!」
「当然だろう! もはやお前らの攻撃など、一切効かないぜ!」
イフリートはそう言うと、右手を前に出して次の攻撃を行おうとした。
「インフェルノ!!」
激しい炎がこちらに迫ってきた。
そこで、僕は急いで結界を張った。
炎はなんとか防ぐことができた。
しかし、イフリートが纏う炎のオーラを突破することはより困難になった。
そのため、圧倒的な火力を誇るイフリートを前に、僕たちは防戦一方となった。
「さあ、ここらで引導を渡してやろう!」
そして、イフリートは口から激しい炎を吐き出した。
「うおおおおッ!?」
僕はエクスカリバーを前に構え、せめてもの防御を行った。
すると、炎が聖剣の宝石に吸い込まれた。
「なにぃ!?」
「一体、何が起きたんだ?」
「それはあたしのお陰ね!」
「誰だ!?」
声がして、僕は辺りを見回した。
「ちょっと、どこ見てんのよ? こっちよ、こっち!」
上を見ると、金髪ポニーテールの小さな妖精がそこにいた。
「妖精!?」
「えっ、なになに? あっ、かわいい妖精さん!」
「あたしはエクスカリバーよ。見ての通り、聖剣に宿る妖精よ。ようやく出ることができたわ。やっぱり、あたしの見込み通りだったわ。アンタを選んで正解ね!」
「僕を選んだ?」
妖精の言葉に、僕は引っ掛かった。
「ええ、そうよ。アンタを見たとき、何て言うか、ビビッと来たのよ! アンタなら、あたしの力を存分に使いこなせるってね」
「なるほど、道理で僕にしか聖剣は抜けなかった訳だ」
「ええ、そうよ。そこのデカイのはともかくとして、そっちの女騎士のほうも、いろんな意味でまだまだ未熟ね」
「そんなぁ……」
「そういうワケで、ファインを選んだってワケ。あっ、そうそう。あたしの事は【エクス】って呼んでね! あんたのお陰であたしも成長できたみたいね。感謝するわ。そのお礼と言っては何だけど、成長したあたしの力を使えば、アイツと対等に戦えるはずよ。とはいえ、あたしもまだ本調子じゃないから、過信は禁物よ!」
エクスと名乗る彼女は、聖剣に宿る妖精だという。
「おしゃべりはそこまでだぜ。いずれにせよ、お前らにはもう勝ち目はねぇぜ!」
「さあ、ファイン! あたしの力を使って!」
「わかった。風斬刃!」
僕はパワーアップした聖剣の力を使い、もう一度剣技を放つ。
風の刃は炎のオーラを貫通し、イフリートに到達した。
「グオオオオオオオオオッ!!」
今の叫び声から察するに、イフリートにダメージを与えることが出来たようだ。
それに加えて、炎のオーラは先程よりも弱まった。
「すごい、一撃でダメージを……」
「やったわ! やっぱりあたしの見込んだ通り、アンタは凄いヤツね!」
「よくも……よくもこのオレにィーッ!! もう許さねぇッ!!」
イフリートはプロミネンスを放った。
「ファイン、聖剣をかざして防御するのよ!」
「ああ!」
僕はエクスに言われた通り、聖剣を前に出して防御した。
聖剣にはめ込まれた赤い宝石が、プロミネンスの炎を吸収した。
「氷結剣!」
僕は聖剣を振り下ろして剣技を放った。
氷の刃がイフリートを襲う。
「グオオオオオオオオッ!!」
イフリートは苦しそうな叫び声をあげた。
効果は抜群だ。
「今よ! アイツにトドメを刺すのよ!」
「ああ!」
僕は聖剣を天高く掲げた。
天井付近に雷雲が現れた。
「稲妻斬撃!」
雷雲から、巨大な稲妻の剣がイフリートを直撃した。
激しい稲光により、一瞬視界が遮られた。
ところが、イフリートはまだ生きていた。
それどころか、今の攻撃でダメージを受けた素振りは見せていない。
「なにッ!?」
「そんな! あたしの力を最大限使ったのに、どうして!?」
よく見ると、イフリートは炎のオーラを復活させて防御していた。
そして、今までの攻撃による傷もすでに回復していた。
「お前ら……今の攻撃で本当にオレを倒せると思っていたのか? 残念だったな。そんな訳ねぇだろうがッ!!」
イフリートはそう言うと、口から炎のブレスを吐いた。
ルナは僕を庇い、激しい炎に飲み込まれた。
「ルナ!!」
ところが、彼女はやられていなかった。
「エンジェルフォーム、解放!」
ルナの服装は純白のビキニアーマーに変わり、開放的な格好となった。
髪は金色がかった明るい茶色になり、髪型もウェーブのかかったロングヘアーに変わっていた。
また、背中には天使の翼を生やしており、頭上には輪っかも出ている。
そして、神々しい程に光輝くオーラを纏っていた。
「ルナ、その姿は……!?」
「よくわかんないけど、私の新しい力みたい! 力がみなぎってくるわ!」
「おしゃべりはそこまでだ。これで終わりにしてやる! インフェルノ!」
イフリートはインフェルノを放った。
「天使の結界!」
ルナは翼から無数の羽を散らした。
そして、イフリートの放った炎を完全に防御した。
「なにぃ!?」
イフリートは予想外の出来事に驚愕していた。
「すごい……イフリートの炎を完全に防御したぞ!」
「まだだ! 今度こそ、コイツでトドメを刺してやるぜ!!」
イフリートは次なる攻撃を仕掛けようとしていた。
そんなイフリートをよそに、ルナは周囲に展開していた天使の羽をイフリートに向けて発射した。
「天使の羽!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
イフリートはけたたましい断末魔の悲鳴をあげ、瞬く間に浄化された。
これで、ついに魔王四天王の一人である激怒のジャークを倒すことに成功した。




