第164話 炎の魔人
激怒のジャークが復活し、エルトリア王国へ襲撃に来ていた。
ニーナ王女がジャークに襲われそうになっていたため、急いで助けることにした。
「ニーナ王女は今すぐ安全な場所に逃げてください!」
「は、はい!」
僕の言葉を受けて、ニーナ王女はすぐに避難した。
「ファイン・セヴェンス、あのときの恨み……今ここで晴らしてやるぜ。オレの真の力、今こそテメェらに見せてやるぜ! ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
激怒のジャークが雄叫びを上げると、全身を炎のような赤いオーラは勢いがさらに激しくなった。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ……!!」
やがて、炎のオーラは全身を覆い尽くした。
それからして、ジャークは姿を変えた。
全身は炎のように真っ赤で、長身かつ筋肉質な身体つきである。
頭には二つの大きな角が生えていた。
この姿は【炎の魔人】か。
「待たせたな……」
「別に待っていないぞ」
「ハァァァ!? テメェ、ナメてんじゃねぇぞ!! その減らず口、二度と聞けねぇようにしてやるぜ!!」
ジャークは僕の言葉で激怒する。
変身しても、短気な性格はそのままなようだ。
とりあえず、鑑定してみることにする。
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・イフリート(♂) LV:88
種族:悪魔
HP:5200/5200
MP:4800/4800
力:3200
魔力:3500
器用さ:720
素早さ:780
防御:2200
耐魔:2500
魔法:炎魔法LV.EX
スキル:フレイムブレス、炎のオーラ、無詠唱、自己再生
特性:火属性吸収、水属性弱点
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イフリートは炎魔法を得意としており、レベルもEXと表示されている。
本来、魔法レベルの上限は10のはずだが、おそらくそれを上回る魔法を発動できるに違いない。
その代わりに、他の魔法は使えなくなっているようだ。
「こいつはなかなか強そうだな!」
「いいか、みんな。アイツには炎属性の攻撃は効かない! だが、その代わりに水属性の攻撃が弱点だ!」
「おう!」
「オッケー、わかったわ!」
「すでにグロウと戦ったから分かっていると思うが、オレら四天王は魔界と契約することによって、力を授かってるんだぜ。この姿を見たが最後! テメェらはオレの業火で容赦なくケチョンケチョンのメッタメタにし、跡形もなく消し炭にしてやるぜ!!」
僕たちは、激怒のジャーク改め、イフリートに攻撃を仕掛けることにした。
「まずはオレがいくぜ!」
ヒューイはそう言って、先制攻撃を仕掛ける。
「おりゃあああああああああッ!!」
ヒューイはいつも通り、雄叫びをあげながら走っていく。
そして、強烈な一撃をお見舞いする。
斧はイフリートの胴体に命中した。
ところが、ヒューイの攻撃は通じていなかった。
「あちいぃぃッ!!」
ヒューイは火傷を負ってしまった。
どうやら、イフリートの纏う炎を受けてしまったようだ。
「大丈夫か、ヒューイ!?」
「ああ、なんとかな……」
「ヒューイさん、今回復します」
「サンキュー、助かったぜ」
セレーネが回復魔法で、ヒューイを治療した。
「バカが、猪突猛進が過ぎんだよ!」
「ここは私に任せて、氷結剣!」
ルナが氷結剣を放った。
ところが、イフリートには全く効いていなかった。
「そんな!? どうして……」
「バカな、水属性はアイツの弱点だろ!? 何で効いてねぇんだよ!?」
「確かに冷気はオレの弱点だぜ。だが、冥土の土産にお前らに教えといてやるぜ。オレにはいかなる攻撃をも防御するバリアーがあるんだぜ」
「【炎のオーラ】か!」
「ああ、そうだぜ。ゆえに、テメェらのいかなる攻撃もオレには通用しねぇんだよ!」
なるほど、あの炎のオーラがイフリートを守っているのか。
あれを解かない限り、ダメージを与えるのは不可能そうだ。
「ならば、魔封じ!」
僕はディスペルで炎のオーラを解くことを試みた。
ところが、イフリートの周りを覆う炎は消えなかった。
「やはり効かない!?」
「当然だぜ。そんな安直な方法が通じると思っていたのか!」
「ならば、私が行きます。出でよ、水の精霊ウンディーネよ……」
魔封じが効かないと知るや否や、今度はセレーネが仕掛ける。
「偉大なる大波よ、万物を飲み込み無に還せ! ビッグウェーブ!」
セレーネが魔法を唱えると、大波がイフリートを飲み込んだ。
ところが、炎の熱のせいか大波は瞬く間に蒸発してしまった。
イフリートは全くダメージを受けることなく、その場に立っていた。
「バカが、何度やっても同じよ!」
弱点である水属性の攻撃も、炎のオーラによって完全無効化された。
「今度はこちらの番だぜ!」
「来るぞ!」
イフリートは僕たち攻撃を仕掛けようと右手を上げた。
「プロミネンス!」
イフリートの右手から、巨大な火の玉が顕現した。
セレーネが結界を展開した。
着弾時、火の玉は大爆発を起こし、衝撃が中まで伝わって来た。
とは言え、何とかイフリートの魔法を防御することができた。
「くっ、何て魔力……!」
「チッ! 結界で防ぎやがったか! 並みの魔法使いなら、防ぎきれず死んでいたぜ。さすがは勇者パーティーなだけのことはあるな。それだけは褒めてやる。だが、お前らは決してこのオレを倒すことはできねぇんだよ!」
イフリートはそう言うと、口からフレイムブレスを吐いた。
激しい炎が、僕たちに迫ってくる。
全員回避してその場から離れる。
「氷結剣!」
ルナが剣を頭上から振り下ろし、氷結剣を放つ。
しかし、炎のオーラによって氷の刃は溶かされる。
「そんな……!?」
「おめぇも学習しねぇな、小娘。氷を炎に近づけたら、当然溶けちまうだろうがッ!!」
「だったら、直接近づいて……!」
ルナはイフリートに向かって走る。
そして、両手で光輝の剣に魔力を込めた。
光の刃は、普段よりも長く大振りになった。
それをイフリートに対し、思いっきり振り下ろすルナ。
しかし、光の刃は炎のオーラによって弱められ、イフリートには届かなかった。
「そんな! ウソでしょ!?」
「効かねぇよ!」
イフリートは右手で火球を放つ。
ルナは回避が遅れてしまい、攻撃を食らってしまった。
「きゃあああああああああっ!!」
「ルナ!」
ルナは大ダメージを受け、そのまま吹き飛ばされてしまった。
「野郎!」
ヒューイが斧を構えてイフリートに挑む。
ところが、炎の一部がヒューイを襲う。
「ぐおおおおおおおおおおおッ!?」
ヒューイは大火傷を負ってしまった。
「大丈夫ですか、二人とも! 特級……!」
「させるかよ!」
「きゃああああああ!!」
セレーネが二人を回復しようとしたが、イフリートが放った火球によって阻まれ、負傷してしまった。
「大丈夫か、みんな!?」
「くっ、なんとか……」
「これしきのことで、やられるかよ……!」
「至高治癒!」
僕が賢者の力を使い、全員を回復させた。
ここは一か八か、あれに賭けるしかない。
「来たれ、雷雲!」
僕が剣を天高く掲げ、雷雲を召喚した。
「稲妻斬擊!」
剣を振り下ろし、暗雲から雷の剣を撃ち落とした。
激しい稲妻がイフリートを襲う。
ところが、相手には全く効いていなかった。
「やはりダメか!」
「これで分かったか? この炎はどんな攻撃をも無効化するとな! したがって、テメェらに勝ち目はねぇ! 大人しく諦めるんだな!」
イフリートは次の攻撃の準備を始めた。
「この技が避けられるか!? メテオバレット!」
イフリートの頭上には、六つの大きな隕石が浮かび上がった。
その隕石は、勢いよくこちらに飛んできた。
「皆さん、私のもとへ!」
セレーネが結界で防御する。
ところが、隕石の威力が強いせいか、ヒビが入り破られそうになった。
そこで、僕が追加の結界を展開した。
強い衝撃を感じる。
しかし、なんとか隕石を防ぎきることができた。
さすがは、魔王四天王の一人なだけはあって、圧倒的な魔力を誇っている。
そのイフリートを前に、僕たちは苦戦を強いられていた。




