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英雄たちの物語 -The Hero's Fantasy-  作者: おおはしだいお
第4章 魔王復活~遥かなる旅へ
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第161話 鉄壁のヴァイス

 エルトリア城を出てから、数日が経過した。

 今、僕は森林地帯を馬で走っている。

 道は平坦で比較的に走りやすい。

 周囲に魔物がちらほらいるが、今は時間が惜しいので極力無視する。

 森に入ってから約1時間が経った。

 左右を山に囲まれた狭い地形となってきた。

 さらに走っていると、数人の屈強な男たちが立ちはだかっていた。

 そのうちの一人は、見覚えのある顔であった。

 ヴァイス・シュトロームである。


「来たか、ファイン・セヴェンス。あの時は一杯食わされたが、今回はそうは行かんぞ」

「ゲブ殿はどこにいる?」

「教える訳がないだろう」

「今は人間同士で争っている場合ではない。みんなで協力して魔王に立ち向かわなければならないんだ!」

「王国軍と協力しろだと? バカを言うな! 王族や貴族の奴らは、俺たち平民の活躍を蔑ろにしてきたのだぞ! そんな奴らと協力などできるものか!!」


 なるほど、ゲブやヴァイスたちはエルトリア王家に余程恨みがあるようだ。

 あの日、ニーナ王女を嵌めようとしたのも合点がいく。

 だが、今は人類同士で争っている場合ではない。

 全員で協力して魔王に立ち向かわなければならないのだ。


「ゲブ殿と話がしたい。通してくれ!」

「貴様だけは通すなとゲブ様から命令が出ている。どうしても通りたいと言うのならば、俺を倒してからにするのだな!」

「仕方ない、そうさせてもらう!」


 残念ながら、ヴァイスを説得することは不可能なようだ。

 僕とヴァイスたちは剣を抜き、臨戦態勢に入った。

 結局のところ、戦いを避けることはできなかった。


 だが、無益な殺生はできるだけ避けたい。

 そこで、僕は相手を無力化することにした。


睡眠(スリープ)!」


 眠りの魔法がヴァイスたちを襲う。

 ところが、彼らが眠ることはなかった。


「効かんな!」

「なに!?」

「こんな事もあろうかと、状態異常無効の腕輪を付けていたのだよ。あの時と同じ手は、もう通用せん!」

「どうやら、直接戦うしかないようだな。行くぞ!」

「来い、ファイン・セヴェンス! 正々堂々決着を付けよう!」


 そう言って、ヴァイスは武器を構える。

 同時に、部下たちが走って僕に接近してきた。


火球(ファイアボール)!」

「ぐわああああッ!!」


 僕は少しずつ相手の戦力を削っていくことにする。

 威力は抑えているので、死んではいないはずだ。


「チッ、バケモノめッ! だがッ!」

「今度はこちらの番だ!」


 僕は走りながら、牽制用の火球ファイアボールを撃つ。

 ヴァイスは盾で魔法攻撃を防ぐ。


 そして、僕は一気に近づいて聖剣で斬撃を放つ。

 ヴァイスは盾で防御するが、あまりの切れ味によって盾は真っ二つに切断された。


「なにッ!?」


 凄まじい切れ味だ。

 予想外の事態に、ヴァイスは驚愕していた。

 この隙を突き、僕は彼の胴体を狙って斬撃を放った。

 ただし、致命傷にならないように、急所は外しておく。


 聖剣の刃がヴァイスに到達した。

 ところが、その手応えはまるで鋼のように硬かった。


「スキル【鉄壁】!」


 ヴァイスはスキルを発動していた。

 自分の身体を硬化させることによって、防御力を格段に向上させているようだ。

 そして、ヴァイスがなぜ前線で壁役タンクを務めることができたのか。

 それがたった今、本当の意味で理解できた。

 このスキルがあったからこそ、ヴァイスは前線で戦い抜くことが出来たのだ。

 聖剣の一撃は完全に防がれてしまった。


「どうだ? 俺の【鉄壁】の硬さを味わった気分は。ゼオン帝国軍の攻撃を悉く無力化してきたのだ。例え勇者と言えども、俺の身体にはかすり傷一つ付けることはできん! そして、教えておいてやろう。俺の二つ名は【鉄壁のヴァイス】! 如何なる攻撃も、俺の前には無力なのだ!」


 ヴァイスは大剣で攻撃してきたので、僕はすぐに回避する。


「無力? やってみないと分からないな!」


 僕はもう一度、ヴァイスに挑む。

 しかし、相手は不敵な笑みを浮かべながら、悠然と立っていた。

 自分の防御力に余程自信があるのだろう。


 そして、僕はヴァイスに肉薄して再度聖剣で攻撃した。

 やはり、その手応えは鋼のように硬く、刃が通らなかった。


「言ったはずだ。俺の前には無力だとな!」


 ヴァイスは大剣を振り下ろしてきた。

 僕は咄嗟に回避し、距離を取った。


「今度はこちらから行くぞ!」


 ヴァイスはそう言うと、走って僕に近づいて来た。

 その巨体は威圧感を放っていた。

 十分に接近したところで、ヴァイスは両手で大剣を振り下ろした。

 僕は防盾シールドで攻撃を防いだ。


「何てパワーだ!」

「未熟者め! 俺とお前とでは経験が違うのだよ!!」

「そうかもしれないな。だが、僕とて負けてられないんだよ!」


 僕は魔封じ(ディスペル)を使い、ヴァイスを斬った。


「ぐおおおおッ!?」


 ヴァイスの腹部に切り傷が入った。

 しかし、咄嗟に避けられたので傷は浅い。


「貴様、何をした!?」

「教える訳ないだろう」

「なるほど、やはり貴様は侮ることはできないようだな。ここからは本気で行かせてもらう。【鉄壁】!」


 ヴァイスは再び鉄壁を使い、自身の防御力を上昇させた。


「さあ、行くぞ!」


 ヴァイスはそう言うと、走って僕に近づいて来た。


稲妻矢サンダーアロー!」


 僕は指先から雷魔法を放つ。

 稲妻がヴァイスの胴体に直撃した。

 しかし、ダメージを受けた素振りは見せていない。


「やはり、魔法耐性もあるのか!」

「当然だ。俺はゲブ様の作戦を成功させてきた壁役タンクだぞ! 如何なる攻撃も俺には効かんぞ!」


 ヴァイスは僕に肉薄し、大剣を振り下ろした。

 当然、喰らう訳には行かないので僕は回避する。

 しかし、相手は攻撃を続ける。

 その動きは、巨体には見合わない素早さである。

 とは言え、さすがに僕ほど速くはないので、隙を突いて反撃する。

 だが、やはり聖剣の斬撃は効いていない。


「愚か者め! 何度やっても同じ事よ!」


 ヴァイスはそう言うと、僕を蹴ってきた。


「何て強烈な蹴りだ!」


 僕とヴァイスの間には再び距離ができた。

 相手はすぐに走ってこちらに向かって来る。

 僕は指先から稲妻撃サンダーボルトを放つ。

 どうせ下級魔法では効果がないだろう。

 ならば、手加減はもうやめだ。

 激しい稲妻がヴァイスを襲う。

 ところが、彼は悠然と立っていた。


「フハハハハ! 効かぬ! 効かぬわ!!」


 続けて、僕は氷の槍(アイス・ジャベリン)を三発撃った。

 しかし、ヴァイスの鋼鉄の身体には全く刺さらなかった。


「効かぬと言っているだろう!」


 上級魔法でもダメだった。

 ヴァイスはそのまま、ゆっくりと僕に向かって歩いて来た。


 さすがはゲブの作戦を成功させてきた壁役タンクと言うだけはある。

 どんな攻撃をも通さない圧倒的な防御力だ。

 ……ゲブの作戦? 待てよ。


 そう言えば、ゲブは高所などに待ち伏せて矢や魔法などによる、遠距離攻撃を仕掛けて敵を仕留めてきたという。

 ここは山に囲まれた狭い地形である。

 そうだとしたら、まずい!


 そう思った直後、山から矢や火球(ファイアボール)と言った魔法が飛んできた。

 僕は間一髪のところ回避に成功する。

 なるほど、これが『ゲブの作戦』か。


「フン、間一髪のところで避けたか。それだけは褒めてやる。だが、これが我々の……ゲブ様の真の戦い方だ! 俺の鉄壁と、ゲブ様の巧妙な戦術! 我々はこの戦法でゼオン帝国の部隊を壊滅に追いやったのだ! 何人足りとも、生きては帰さん!」


 それからも、矢や魔法が立て続けに飛んできた。

 回避するのが精一杯で、ヴァイスに近づくことができない。

 嵌められたか……!

 ゲブは初めからこれが目的だったようだ。

 僕を排除することで、エルトリア王国軍との戦いを有利に進めるつもりだ。


 山からは矢と魔法が雨あられのように降り注ぐ。

 今のところ、一発も喰らっていないのが救いである。

 しかし、避けるのがやっとで、攻撃に転じることができない。


「さすがだな。だが、俺の存在を忘れたのか!?」


 ヴァイスがいつの間にか背後に回り込んできた。

 絶体絶命のピンチ。

 そして、ヴァイスは大剣を振り下ろした。

 ところが、誰かが突然前に出てきて僕を庇った。


「何!?」


 その大きな背中は見覚えがあった。


「助けに来たぜ、ファイン!」


 それは、ヒューイ・サウスリーであった。


「ヒューイ!? なぜここに……」

「オレだけじゃないぜ! セレーネやルナも来てくれたぜ!」


 振り返ると、ルナとセレーネも駆けつけていた。


「ファイン、大丈夫!? ケガはない?」

「ああ、大丈夫だ」

「よかった。でも、私たちを置いて行くなんて、水臭いじゃない!」

「心配かけてすまない」

「援軍か!? だが、たったの三人で我々に勝てると思うな!」


 ヴァイスがそう言うと、次の矢と魔法が発射された。

 しかし、ゲブの攻撃は空中で無効化された。


「なにぃ!?」


 セレーネが頭上に結界バリアーを張って防御してくれたのだ。


「ファイン様、私も援護いたします」

「ファイン、もう一人でどこかへ行っちゃダメだよ?」

「本当にすまなかった」

「私たちは【運命共同体】だからね! 私たち、どこまでも一緒だよ!」

「そうだぜ、ファイン。お前一人で、何でもかんでも背負い込むことないんだぜ!」

「みんな……ありがとう!」

「フン、仲間がいくら集まろうとも、俺の前には無力だと言うことを教えてやる!」


 ヴァイスはそう言って、再び大剣を構えた。


「ヒューイ、気を付けろ。アイツはどんな攻撃をも無効化する【鉄壁】のスキルを持っている。だが、僕に考えがある。ヴァイスの動きを少しの間だけ止めてくれるか?」

「おう! 任せろ!」


 ヒューイは斧と盾を構えてダッシュした。


「おりゃあああああああああ!!!」

「フン! 威勢だけはいいようだな。だがッ……!!」


 ヒューイは一気に近づいて斧を振り下ろした。

 一方、ヴァイスは大剣でヒューイの攻撃を受け止めた。


「鉄壁の防御力を持つ俺の前には、どんな攻撃も効かんのだよ!」

「ヘッ、お前なかなかやるじゃねぇか! 本当ならサシで勝負したいところだぜ! だが、生憎今回はそうも行かねぇんでな!」


 ヒューイとヴァイスが戦っている間に、僕は素早く回り込んだ。

 僕は魔封じ(ディスペル)を使って鉄壁を無効化した。

 そして、気づかれる前に聖剣で背後からヴァイスを斬った。


「バ、バカな……鉄壁の防御力を誇るこの俺が……」


 ヴァイスは血を流してその場に倒れた。

 とは言え、手加減しておいたので死んではいない。


「もうすぐ、エリーゼさんたちがここへやって来るわ」

「急ごう。何としてもゲブ殿を説得するんだ!」

「おう!」


 僕たちは斜面の緩やかな場所から回り込んで、山に登ることにした。

 こうしている間にも、魔王は陰謀を企てているに違いない。

 今は人類全体で魔王に挑まなくてはならない時だ。

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