第三話
突然表情と声を変貌させたシャロンに唯は戸惑いを隠せないでいた
「その・・・・『魔族』と言うのはどういう存在なんだ?」
「『魔族』は私達人間に遥かに劣りながら、その有り余る力で人間を殺す塵ですわ」
隠そうともされていない嫌悪と憎悪の感情、『セントアジール』一の美貌と言われる
シャロンの歪んだ顔は醜くも何処か美しく、唯はしばし見入ってしまう。
「では、私が呼ばれた理由は」
「はい、『魔族』が・・・・・いえ、『魔王』が貴方をユイ様をお呼びした理由ですわ」
唯の質問に今度は花が咲いた様な笑顔で答えるシャロン
彼女はその笑顔で何の迷いも無く
「ユイ様には、『魔王』を討って戴きたいのです」
言いきった。
Said Yui
「はぁ・・・・・」
この国の王女様、シャロンが去った後私の口からは思わずため息が出る。
彼女の『魔族』に対する思想と言うか、態度と言うか
・・・・・・・・・・・実際に『魔族』と呼ばれる存在を私自身がこの目で見た訳では
無いけれども、それでも彼女の口調とその表情から『魔族』が『人間』に
どう思われている存在なのかは少し分かった。
「しかし・・・・・・やはり彼女もこの世界の、この国の人間だって事か・・・・・・」
またため息をつきそうになる
シャロンは一切の迷い無く言った、「『魔王』を討て」と。
彼女自身にそんな気が無かったとしても、少なくとも私にはそう聞こえた
いや、聞こえてしまった。
彼女のあの言葉と笑顔は私が『勇者』としての役目を引き受け
『魔王』を討つものと決して疑っていないと分かってしまった。
「いや、ホントにままならないものだな」
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『セントアジ―ル』から遠く離れた何処かの空にソレは浮かんでいた。
この世界に存在するあらゆる自然の現象を無視したかの様に浮かぶ巨大な建造物
荘厳にして壮麗・・・・・・・・・その本来の持ち主を知る物からすれば
全く似合わず可笑しなモノに見えてしまうであろう白亜の城。
その城の緑が生え花々が踊る庭と呼ぶにはあまりに広すぎるそこの
はずれにある湖、そのほとりに少女は居た。
城と同じ白亜のテーブルに白磁の茶器、真っ白なカップに紅茶の色が良く映えている。
まるで精巧に“美”というものを形創ったかのような少女は静かに紅茶を啜る。
「クルジーク?」
「は」
少女の呼びかけにいつの間にか背後に立っていた黒い執事服を着た壮年の男性が答える
「遂に召喚された様ですね?」
「は、正確な確認は現在『殖える影』が行っている所ではありますが、
おおむね間違いないかと。」
「そう」
問いかけに対する男性の答えに満足したのか、
唇の端に小さな笑みを浮かべ少女は再び紅茶を啜る。
「では、『殖える影』が戻り次第『鐘の少女』と『賢の翅』を呼びなさい」
「畏まりました、お嬢様」
男性は自分の事を見ても居ない少女に対し深々と頭を下げると
初めからそこには居なかったかの様に消え失せた。
「うふ、ふふふ、漸く 漸くです。さぁすぐにでも御迎えに参りますわ我が主」
少女はそんな些細な事には一切目もくれず、それどころか思考の端にも置かず
その美しすぎる人形のような顔を歓喜と狂気に染め上げた。




