カツテノキオク・Ⅰ
嘗て世界にまだそれ程人間が多く無く未だ『アルク』にしか存在しなかった時代
自然の中に人間と同じ様に高い知性を持った存在が数多く暮らしていた。
それらは、人間が生まれる遥か以前から其処に暮らしていて人間が生まれてからも、
積極的に関わろうとはせずに平穏な時を過ごしていた。
しかし、人間は複数人でコミュニティーを形成し定住の道を取るように成っていった。
やがて、初期に形成されたコミュニティーとは比べ物にならない程の大きな
コミュニティー・・・・・・『国』が生まれた。
コミュニティー内の人口は増大し、人は新たな土地を求める様に成った。
分かりやすく土地広げる事を求め、いまだ未開の地であった森の奥深くや
秘境と呼ばれる地に手を伸ばしていった。
すると必然的に、自然の奥深くに暮らす知性を持った彼ら人でない存在と
出会う事となり、人間は彼らとぶつかった。
彼らにとっては人間は確かに侵略者であったが、
人間にとって彼らは知性が有ったとしても人間程に進んだ生き物でなく、
所詮は獣にしか過ぎなかった。
彼らの多くは殺された、彼らの多くは捕獲され見世物にされた。
だが、人間が西の大陸『ドロキア』を発見した時、その流れは少し変わった。
『ドロキア』に住んでいた彼らは『アークガルド』に住む彼らとは違った。
人間と同じようにコミュニティーを形成していて更には、人間に似た姿をしていた。
ただ違うのは、彼らは人間には出来ない自然の力を使う事が出来た事位である。
かと言って、それらの力が強大だったかと言うと別段そうでも無く、
彼らにとっては唯の生活の術でしか無かった。
しかし、人間の『侵略』に対して彼らは自らと自らの土地を守る為
それを戦う為の手段として使った。
その事により人間の勢いは少しは弱まった・・・・・・・・・・・・が、人間と言うのは
欲望に塗れ、それでいて向上心の強い生き物である。
彼らの力を『魔法』と呼んだ人間はそれに抗う為の手段とし、長い時間をかけ
彼らの力の模倣である『魔術』を生み出した。
彼らの様に必要に駆られ生活の為の術を戦う為の術として使った訳ではなく、
最初から戦い殺す為の術として生み出された『魔術』によって状況は再び
人間側に有利となった。
だからなのか、漸くと言うべきなのか彼等もまた自分たちの力を
人間が『魔法』と呼ぶ自然の力を借りる術をキチンとした力として認識し、
それを突き詰め戦う為の術とした。
だが、そもそもからして心優しく温厚である彼らが戦う為の術を持ったところで
殺す事を考え其の為だけに術を持った人間には叶わなかった。
故に彼等は力を存在を場所を求めた、
自分たちを救ってくれる力を
自分たちを導いてくれる存在を
誰に汚される訳でも無く、誰に犯される訳でも無く
ただただ、自分たちの事を受け入れてくれるそんな場所を
ひたすらに願った彼らの願いを聞き届けたのは一体誰なのか、
『神』と呼ばれる存在か、彼らが普段から力を借りる『自然』か、
それは分からない・・・・・・・・・・誰も知らない、だが彼らの願いは聞き届けられた。
『アークガルド』には存在しない黒い髪、黒い瞳を持った少年が彼らの元に現れた。
初めの内は戸惑い続けていた少年は有る時そのあり方を変えた。
彼の中で何が変わったのか、それは彼自身にしか分からない、
ただ・・・・・・・・・・・少年は有る時を境に彼らの願いを叶える事を第一とした、
そして少年は、自ら『魔王』と呼ばれる事を選んだ。




