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オブシディオン  作者: 空飛ぶワイン
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214/283

第214話 領境へ向かう者たち

王都の西門を守っていた小隊から、レオンハルトへ手紙が届いた。

王都を離れた兵たちが、ヴィオレスタを目指しているという。

手紙を運んできた兵は、館の玄関で膝をついた。

「隊長たちは追手を避け、脇道を使いながら進むと申していました。殿下に、直接お会いしたいと」


レオンハルトには、よく知る隊長の字だった。

だが、リュシエンヌはすぐには面会を認めなかった。

「王兵の一隊が来るのです。手紙どおりの目的か、詰所で確かめさせます」


「分かりました。確かめられたら、私も詰所へ行かせてください。私の手紙を読んで、王都を出た者たちです」


リゼリアが、そばへ来た。

「私も行きます。シルヴァで上から周囲を見て、追手がいないか確かめます」


ポルフィラは椅子から立とうとした。


レオノーラが、その肩へ手を置く。

「あなたは休んでいて。私がヴェスペラと、館からの連絡を受け持つわ」


ヴィオレスタへ来た翌日から、脇腹の痛みが強くなっていた。

医師には、飛び続けた疲れが抜けるまで休むよう言われている。

ポルフィラは、寝具の上で右手を握った。

「何かあったら、知らせてください」


レオノーラはうなずいた。

レオンハルトは、自分の護衛と、リュシエンヌがつけた兵を伴って館を出た。


*


翌日の午後、領境の詰所へ王都からの兵たちが近づいていた。

まだ王領側の道にいる。

ヴィオレスタの兵が少し手前まで出て、持っていた手紙と小隊長の名を確かめた。


レオンハルトは、詰所の庭で待っていた。

坂の向こうに、見覚えのある隊長の姿が見える。

以前、王都で報告を聞いていたときより、頬が痩せていた。


その上空を、シルヴァが回っている。

リゼリアは、兵たちの後方へ目を凝らした。

道の曲がり角から、別の騎馬隊が現れた。

西門の小隊より、ずっと速い。


「追手よ!」

リゼリアはシルヴァを降下させた。


同時に、追撃隊の指揮官が声を張りあげた。

「西門の小隊、止まれ! 武器を捨てれば、その場では斬らぬ!」


小隊長が振り返る。

追手は、すでに後ろの兵へ迫っていた。

「走れ! 領境まで行け!」


離反した兵たちが駆け出した。

王の追撃隊も速度を上げる。馬の蹄が、逃げている兵のすぐ後ろへ迫った。


西門小隊の副長が、道の脇へ退いて剣を抜いた。

追手の馬へ向き直り、斬り下ろされる剣を受ける。

「先に行け!」


金属音が響いた。

副長の横を、仲間が走り抜けた。


*


レオンハルトは、詰所の庭から道へ出た。

ヴィオレスタ兵が、その前へ盾を並べる。

逃げてくる兵と、追う王兵。

どちらの装備にも王家の印がある。

近づく者を片端から斬れば、助けを求めた兵まで殺してしまう。


リゼリアは、領境の横にある草地へシルヴァを下ろした。

追撃隊の騎兵が一人、道を外れて逃亡者の前へ回り込もうとしている。

「そこを通らないで!」


騎兵は止まらなかった。

剣を構えたまま、シルヴァの脇を抜けようとする。


リゼリアは手綱を引いた。

シルヴァが向きを変え、前脚を振り上げた。

蹄が、騎兵の盾を打ち砕いた。

男は鞍から弾き出され、草地へ落ちた。

起き上がろうとして腕を動かしたが、再び体を沈め、そのまま動かなくなった。

後続の馬が急停止する。

その間に、道を走る離反兵が詰所へ近づいた。


「武器を下げた者から通せ!」

ヴィオレスタ兵の責任者が命じた。


小隊長が剣を鞘へ戻し、両手を見せる。

「王領の西門の小隊だ! 後ろに、まだ仲間がいる!」


ヴィオレスタ兵の列が割れ、離反兵を受け入れた。

小隊長が領境を越え、仲間たちを振り返る。

その中に、フェリクスの命令を受けた兵もいた。


*


フェリクスの手先の兵は、詰所の庭へ入ると、すぐにレオンハルトを見つけた。

王子のそばには護衛がいる。

今、剣を抜けば止められる。


背後で、また悲鳴が上がった。

追撃隊が、逃げ遅れた兵を捕らえていた。


レオンハルトが庭の入口へ近づく。

「止まれ! ここへ来た者は、私が話を聞く!」


追撃隊の指揮官が、王子を見つけた。

「殿下もお戻りください! 王命により、城へお連れします!」


ヴィオレスタ兵の盾と、追撃隊の剣がぶつかる。

門口へ人が集まった。

誰かが転び、助け起こそうとした兵までよろめいた。


手先の兵は、その混乱の中でレオンハルトへ近づいた。

「殿下、後ろへ。危のうございます」


レオンハルトが振り向いた。

男は王子の腕を取るふりをして、剣を抜いた。


「殿下から離れろ!」

叫んだのは、追手を振り切って戻ってきた西門の副長だった。

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