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オブシディオン  作者: 空飛ぶワイン
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138/226

第138話 竜を頼って来た人々

オランデル領の境へ、竜の民の一行が来ていた。

王領の村から出てきた者たちだった。

竜が王の兵から村人を守り、三家も保護に協力した。仕事のために村へ来る者から、そう聞いたという。

竜のいる場所までは知らなかった。それでも三家の領地へ行けば、助けを求められると思ったのだった。


*


一行を止めたのは、オランデル側の領境を受け持つ役人だった。

事情を聞く間に、王領から追ってきた役人も到着した。この村人たちを元の村へ戻すよう求めている。

「村を出る許しは与えていない。こちらへ引き渡してもらいたい」

王領の役人が言うと、オランデル側の役人は首を振った。

「領主様へ知らせを送った。返事を待ってほしい」


道端に座っていた竜の民の男性が、顔を上げた。

「帰ったら、罰を受けます」


王領の役人は男性へ向き直った。

「勝手に村を出たのだから、調べるのは当然だ」


男性は口を閉じた。


オランデル側の役人は、王領の役人を道の反対側へ案内した。村人たちから離れた所で、返事を待つよう求める。

それから、一行のための水を運ばせた。


*


城で報告を受けたレオノーラは、オランデル家の家宰へ命じた。

「今日は戻さないで。屋根のある所で休ませ、足を診てもらって」


家宰が尋ねた。

「王領の役人には、何と答えさせますか」


「私が王へ申し入れると伝えて。現場だけで引き渡しを決めないように」


家宰は指示を書き留めてから、顔を上げた。

「アズレインの三人と違い、今回は許しなく村を出ています。王は戻せと命じるかもしれません」


「ええ。何があって出てきたのか、本人たちの話も聞く必要があるわ」

レオノーラは続けた。

「聞き取りは、オランデル側で選んだ者にさせて。追ってきた王領の役人は同席させないでほしい」


「承知しました」


「食事と寝床を用意したことも、私から王へ報告する」

レオノーラは指示の文へ自分の名を記した。


*


城から戻ったオランデルの使者が、領境の担当役人へレオノーラの指示を渡した。

一行は近くの休憩所へ案内された。保護の手配を任されたオランデルの家臣も、休憩所に留まった。


食料を届けに来たのは、領内で食べ物を売る天馬の民の男性だった。

男性は戸口から中を見て、足を止めた。

「荷は、ここへ置けばいいのか」


オランデルの家臣が外へ出た。

「ここで受け取る。用意してくれて助かった」


「頼まれた人数分は持ってきた」

男性は荷を渡すと、家臣に中へ運んでもらい、自分は帰っていった。


少しあと、同じ道沿いで商いをする女性が来た。彼女もオランデル領で暮らす天馬の民だった。

布に包んだパンを、先ほどのオランデルの家臣へ差し出す。

「これも渡してくれるかい。昼間、この人たちが道端に座っていたのを見たから」


家臣は包みを受け取った。

「代金は、いくらだ」


女性は首を振った。

「今夜の分くらい、構わないよ」


部屋の中で休んでいた竜の民の男性が、その声に顔を上げた。領境で、帰れば罰を受けると訴えた男性だった。

「ありがとうございます」


女性は戸口から彼を見た。少しぎこちなくうなずき、部屋には入らずに帰った。


オランデルの家臣がパンを切り分けると、竜の民の男性は両手で受け取った。


*


クラウスはレオノーラから届いた文を読み、翌日、森の館でポルフィラへ内容を伝えた。

王領から来た人々は、今もオランデル側の保護を受けている。追ってきた役人へは渡していないという。


ポルフィラはクラウスに尋ねた。

「オブシディオンの所へ行けば、助けてもらえると思ったんですか」


「三家の領地なら、保護を頼めると考えたようだ。竜がどこにいるかは知らなかった」


「私、そんなことが起きるとは……」

あの広場では、三人を連れていかれないようにしてほしかった。その出来事を聞き、自分たちも助かるかもしれないと村を出た人々がいる。

「帰されたら、その人たちも罰されるかもしれないんですね」


クラウスはうなずいた。

「レオノーラは王へ保護を続けたいと申し入れている。人数が増えた場合の食べ物や仕事、住む場所についても、三家で相談を始める」


「王との面会が実現したら、その人たちのことも話したいです。戻れと命じる前に、なぜ出てきたのか聞いてほしい」


「レオノーラへ伝える。本人たちの言葉を王へ届けられるかも相談しよう」


*


森の外へ行くと、オブシディオンが顔を上げた。

ポルフィラは角に手を掛け、鱗へ足を置いた。前より迷わず頭の後ろへ座れるようになっていた。

その日は飛ばず、竜が伏せたまま話をした。

〈あなたが三人を守ったと聞いて、王領の村から出てきた人たちがいる〉


〈どこにいる〉


〈レオノーラ様の領地。今は帰さずに休ませてもらっている。でも王は、元の村へ戻せと言うかもしれない〉

ポルフィラは角へ背を寄せた。

〈王と会えることになったら、その話もしたい。あの三人だけで終わらないんだね〉


〈会うために、おまえだけで行くことはないぞ〉


〈うん。条件を確かめてから、あなたと決める〉

ポルフィラは草地の向こうへ続く道を見た。

〈帰したあとで罰されたと聞くのは嫌だ。どう守ればいいか、私も考えたい〉

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