第133話 村に残された家族
王の調べを受け持つ者がアウレリス領へ入った。
ユリウスは迎えた家臣に、必要な案内をするよう命じた。断れば、王の命令に従わぬ領主がもう一人増えることになる。
調べの者は村へ向かい、三人の家族が何を言われ、どんな扱いを受けたかを確かめた。
家族は生きていた。家も、まだ元のままだった。
ただし、家族を通して逃げた三人を戻らせようとする動きはあった。
*
村の一軒で、ユリウスの家臣が報告を書いていた。
世話役の女性の家族が、戸口の近くに立っている。
「帰ってきたら、城へ申し出るよう伝える。そう約束したと記してよいな」
「そんな話はしていません」
家臣の手が止まった。
「おまえたちも、このままでは困るだろう。逃げた者たちが戻って事情を話せば済むことだ」
戸口から、別の声がした。
「その家族から話を聞きたい。少し席を外してもらおう」
王の調べの者だった。
ユリウスの家臣は椅子を立った。
「領主様へ提出する報告の途中です」
「王が家族の扱いを確かめるよう命じられた。今、聞いていた話も確認する」
ユリウスの家臣が外へ出ると、王の取調官は書きかけの報告を脇へ置いた。
「帰ってくるよう約束したのか」
「していません。無事だと知らせてほしいと、頼まれただけです」
声は小さかった。
「そのとおりに記す。違うことが書かれていれば、出す前に読み上げるから言ってくれ」
家族は、少し遅れてうなずいた。
*
三人の家族を罰してはならないという王の命令は、村を受け持つ係の者にも伝えられた。
家族に戻るよう働きかけさせること、家族を代わりに連れていくことも禁じる。
調べが終わるまで王から来た者が領内に留まり、村への出入りも確かめることになった。
村人たちは、その説明を聞いた。
天馬の民が一人来て命じたことを、別の天馬の民が来て止めた。どちらの言葉が確かなのか、まだ分からない。
それでも、その日、三人の残された家族が連行されることはなかった。
*
アズレインの宿舎へは、家族への加害を禁じ、王の取調官を村へ入れるという知らせが先に届いていた。
ロデリクの家臣が三人へ読み上げた。ポルフィラとリゼリアも一緒に聞いた。
「家族が無事だと、確かめられたんですか?」
世話役の女性の問いに、家臣は首を振った。
「その返事はまだです。まず王が出した命令をお知らせしました。調べが進めば、家族の言葉も届けてもらうよう求めています」
「私たちが生きていることも、伝えてもらえますか?」
「はい。今度の調べを通して、伝えるよう頼みます」
女性は、すぐには喜ばなかった。けれど、膝の上で握りしめていた手が少し緩んだ。
怪我をした男性が尋ねた。
「帰っても罰されないことになったんですか?」
「いいえ。あなた方への処罰は、まだ決まっていません。今は、ここで保護を続けます」
ポルフィラはその説明を聞いていた。
オブシディオンが来てくれた。それで家族の扱いまで変わり始めた。でも、三人はまだ家へ帰れない。
*
リゼリアはそのあと、三家から届いた文についてポルフィラに話した。
「王から、あなたと竜のことを聞かれているの。三家も、知っていたと答えたわ」
ポルフィラは顔を上げた。
「罰されるかもしれないんですか」
「王がどう判断するかは、まだ分からない。でも、あなただけに責任を負わせはしない」
リゼリアは、レオノーラから伝えてほしいと頼まれた問いも口にした。
「これから、どこにいたい? 今すぐ決めなくていい。ただ、私たちだけで行き先を決めたくないの」
ポルフィラは窓へ目を向けた。
オブシディオンは広場の端で伏せていた。王の兵も町の人も近づいてこない。食べ物を運ぶ者さえ、家臣が一緒でなければ宿舎へ来られなかった。
「家に帰りたいです」
言うと、胸の奥が痛んだ。
「でも、あの人たちを置いていくのも怖い。私が帰ったら、また連れていかれるのではと思って」
リゼリアはうなずいた。
「帰ることと、三人の保護をやめることは別よ」
ポルフィラは目を伏せた。
「父さんと母さんには、無事だと伝えたいです」
「何と伝えるか、一緒に書きましょうか?」
「はい。友達にも、私の言葉を伝えてほしいです」
リゼリアが紙を広げた。
ポルフィラは、しばらく考えてから話し始めた。
自分は無事でいること。
竜に助けを求め、戦いを止めてもらったこと。
まだ帰る日は決められないけれど、帰りたいと思っていること。
言葉にすると、また泣きそうになった。リゼリアは急かさず、一つずつ書き取った。




