↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オブシディオン  作者: 空飛ぶワイン
PR
132/226

第132話 隠していた者たち

港を出た船でも、街道の宿でも、アズレインの竜の話がされた。

黒い天馬より大きい。

黒い火を吐いた。

王の兵が近づけなかった。

聞く者の多くは笑った。酒の席で作った話だと言う者もいた。それでも、違う道を通って来た者たちが同じ話をした。

竜へ近づいた娘がいたという話まで伝わり始めた頃、各領主のもとには王からの文が届いていた。


*


レオノーラは王の問いを読み終え、家宰へ渡した。

「竜のことを知っていたと答えるわ。ポルフィラを守っていることも」


「王へ知らせなかった理由は、何と」


「知られれば、娘がどんな扱いを受けるか分からなかった。だから知らせなかった。そのまま書いて」


家宰はすぐには筆を取らなかった。

「陛下のもとでは娘を守れぬと、申し上げることになります」


「ええ。何も知らなかったと答えることはできない」

レオノーラはロデリクの報告を見た。

娘は泣きながら竜にすがったという。

「帰りたいと思っても、竜を連れて行ける場所は限られる。あの子がどこにいたいか確かめて。私たちが勝手に移す話を進めないよう、ロデリクにも伝えてちょうだい」


*


クラウスの前でも、家臣が王への返答を待っていた。


「私は竜を直接見ていない。だが、ポルフィラから話を聞き、知っていた。それは隠さない」


「領内から出た娘であることも、答えますか」


「ヴェルディアで育ったことまでは答える。村の場所や家族の名は書くな。王に問われたこととは別だ」


年配の家臣が口を開いた。

「王がお調べになれば、いずれ分かります」


「だから、先に村の様子を確かめる。あの娘の家族だというだけで、勝手に問い詰める者を出すな」

クラウスは若い記録係を呼ぶよう命じた。

「エーベルトは村へ行ったことがある。家族へ伝えることができるか、本人にも聞く。私からの知らせと分かる形で行かせたい」


*


インディルでは、テオバルトがリゼリアへ文を書かせていた。

王から説明を求められたこと。竜を知っていたと認めること。現地で保護を続けるなら、リゼリアにも滞在してもらいたいこと。


家臣が尋ねた。

「リゼリア様の引き上げはお命じにならないのですか」


「今引き上げさせれば、残る者に危険を任せて帰れと言うことになる」

テオバルトは書き上がった文へ目を通した。

「ただし、本人の考えも聞く。家のために竜のそばへいろと命じるつもりはない」


*


アズレインでロデリクが答えた内容も同じだった。

竜は以前から知っていた。

娘の滞在は自分が認めた。

王の兵を迎え撃つために竜を待ち構えさせたのではなく、現場で抜刀に至り、娘が助けを求めた。

竜に王を攻めさせる約束などしていないと、最後に添えた。


*


ユリウスは、家族を罰するなという王の命令を読み返した。

「まだ、何も罰していないではないか」


家臣は答えずに立っていた。


息子とソレインは戻らない。頼った王の兵も、三人を連れてこなかった。さらに、王の調べを受けることになった。

ユリウスは別の報告を指した。

「ロデリクたちは竜を隠していたのだな」


「王から、四家へ説明を求められています」


「そのことを問題にすべきだ。王の兵を退かせる力を、黙って抱えていたのだから」


「元の村の報告も出すよう、命じられております」


ユリウスは机へ手をついた。

怪我で働けなかったと書いた報告だった。息子は、それを反抗者の話へ変えたことを知っている。

「……写しを用意しろ」


*


リュシエンヌは、家臣の集めた話と王都からの知らせを並べた。

四家が、竜と娘を守っている。


「こちらへも協力を求めてくるでしょうか」


家臣の問いに、彼女はうなずいた。

「来るかもしれないわ」


「お受けになりますか」


「まだ決められない。四家が何を知っていたか聞く必要がある」

リュシエンヌはクラウスへの文を用意させた。

国の始まりについて話そうとしたとき、彼は明かせないことがあると言っていた。

「あのとき伏せた話に、竜も含まれていたのか聞くわ」

四家に賛同するという返事ではない。だが、竜の話が嘘で済むのを待っていることもできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。