第126話 三家の返答
王の使者が帰ったあとも、城外の宿舎には護衛がついていた。
翌朝、ロデリクはリゼリアを通して、ポルフィラの滞在を認めると伝えた。ただし宿舎を離れるときは、行き先を知らせてほしいという。
「私もここに残るわ。三家への知らせは、ロデリク様の使者に託したから」
リゼリアの言葉に、ポルフィラはうなずいた。
「王には、何と返すんですか?」
「今は引き渡せないと。三人から聞いた話と、怪我を確かめた結果も送る。家族を罰しないよう、ユリウス様に命じてほしいとも求めるそうよ」
ポルフィラは隣の部屋へ目を向けた。
怪我をした男性は足を休め、世話役の女性と村の係も家族の知らせを待っている。三人はまだ、王の返答次第で連れ戻される場所にいた。
*
アドリアンへ、父からの返事が届いた。
彼は先にロデリクへ文を見せてから、宿舎の三人に内容を伝えた。ポルフィラとリゼリアも同席した。
「父は、私に帰れと言っています。三人も連れてくるようにと」
世話役の女性が尋ねた。
「家族のことは、何か書いてありますか」
「家族からも事情を聞く、とあります。罰しないという返事はありません」
アドリアンは文を持つ手を下げた。
「私には、家族に迷惑をかけたくなければ考え直せと。私を戻らせるために、皆さんの家族を使うつもりなのだと思います」
怪我をした男性が、椅子から腰を浮かせた。
「俺が戻れば」
世話役の女性がその腕を支えた。男性は痛む足を床へつけられず、座り直した。
アドリアンが言った。
「戻れば家族を罰しない、とは書いてありません。私からも、ロデリク様からも、家族を責めるなと返します」
女性は男性の腕を離さなかった。
「私たちは帰りたいんです。でも、罰を受けに戻りたいわけじゃありません」
「はい」
ポルフィラは二人のそばに座っていた。
自分も帰ればいいと勧めることはできない。だけど家族も無事だと約束することはできなかった。
*
三家からの返答が届くと、ロデリクは家臣とリゼリアを呼んだ。
クラウスは保護の継続を支持し、王へ引き渡しの撤回を求めると答えていた。レオノーラとテオバルトも同じ申し出を出す。三人をユリウスへ返す前に、本人たちの訴えを聞くよう王へ求めるという。
レオノーラの文には、王が兵を出した場合に備えてほしいとあった。
家臣が顔を上げた。
「王の兵が来れば、門前で止めるだけでは済みません」
「王命を受け取ることと、三人を渡すことは別だ。来た者の指揮官を私の所へ通せ。宿舎へ直接入れるな」
ロデリクは警備を受け持つ家臣に命じた。
「兵同士で争いを始めるな。三人を連れ出そうとする者がいたら止め、私を呼べ」
「承知しました」
リゼリアが尋ねた。
「三人を、三領のどこかへ移しますか?」
「移しても、引き渡しを求められる相手が変わるだけだ。本人たちに事情を伝えてから決める。黙って他家へ送ることはしない」
ロデリクは三家の文を重ねた。
「味方してくれる家があるうちに、王の判断を変えていただきたい。兵を出されてからでは、ここで暮らす者も巻き込む」
*
その日の夕方、ポルフィラはリゼリアとともにロデリクに会った。
宿舎の一室で、護衛が扉の外へ下がるのを待ってから話した。
「王の兵が来るかもしれないと聞きました」
「まだ出発したという知らせはない。だが、備えはする」
「オブシディオンにも伝えていいですか?」
「かまわない」
ポルフィラはうなずいた。
「ここへ呼べば、竜がいると知られます。私と繋がっていることも。だから、すぐ来てほしいとは言えません」
ロデリクは急かさずに待った。
「でも、三人が連れ戻されそうになったら、止めてほしいと思うかもしれません」
「今は、私たちが王に訴えている。おまえが何とかしなければならんと決まったわけではない」
「はい。でも、私も考えておきたいです」
ポルフィラの隣でリゼリアが言った。
「私もシルヴァもいるわ。誰か一人に任せるつもりはない」




