第122話 反抗を認めさせろ
ユリウスは、村へ出す兵をまとめる家臣に命令を渡した。
連れてくるのは、怪我で荷を運べなかった男。その男への処罰をやめるよう訴えた村の世話役。そして、怪我は事実だと最初に報告した係だった。
「世話役も捕らえるのですか」
家臣が尋ねるとユリウスは答えた。
「処罰を決めるのは村人ではない。ほかの者をそそのかす前に押さえろ」
「係は、怪我を確かめて報告した者です」
「その報告が正しかったかも聞く。言い逃れはさせない」
家臣は文へ目を落とした。
「反抗を認めたら、どういたしますか」
「ほかの村へも知らせる。三家の真似をして訴えても、命令に逆らった罰は免れないとな」
ユリウスは机に残る王への報告案を見た。
息子の巡察を記した箇所は使えなくなった。代わりに、反抗した者を自分の兵で押さえたと報告すればよい。
「余計な騒ぎは起こすな。連れてきてから話させる」
家臣は頭を下げた。
*
出発の支度をする兵を、アドリアンが城の外で見つけた。
村の報告を読むことは止められていた。だが兵が荷車と縄を用意して出ていく姿は隠せない。
アドリアンは家臣を呼び止めた。
「どこへ行くのか?」
家臣はためらったが、村の名を答えた。怪我人の報告にあった場所だった。
「拘束するつもりか?」
「領主様の命令です。詳細はお尋ねください」
それ以上、家臣は答えなかった。
アドリアンは父の部屋へ戻った。
「怪我をした男を捕らえるのですか」
ユリウスは顔を上げた。
「命令に逆らった者の話を聞く」
「何を言っても反抗と決めるつもりではありませんか」
「口を出すなと言ったはずだ」
父は部屋の戸口へ目を向けた。家臣が近づいてくる。
ここで押し問答を続ければ、今度は自分が部屋から出られなくなるかもしれない。
アドリアンは言い返さず、退出した。
*
村へ兵が着くと、畑にいた者たちが道を空けた。
先頭の家臣は村の世話役を呼び、荷運びの男を連れてくるよう命じた。
「まだ足が治っていません」
世話役の女が答えた。
「荷車を出している。歩けとは言っていない」
家臣は兵へ指示した。
家から連れ出された男は、足をかばって戸口へ座り込んだ。兵が腕を引くと、女が間に入った。
「立てないんです。少し待ってください」
「おまえも来い」
女の手首に縄が回された。
荷車のそばにいた村の係が進み出た。
「私が足を確かめました。腫れもあり、荷を持って歩ける状態ではありませんでした」
「おまえにも命令が出ている」
家臣は文を示した。
係は自分の名を見て黙った。天馬の民である自分まで連れていかれるとは思っていなかった。
「領主様の前で説明すれば済むことだ。乗れ」
男と女を乗せた荷車へ、係も押し上げられた。
周りの村人は、誰も近づけなかった。男の家族が泣きながら何か言ったが、家臣は答えなかった。
*
アドリアンが空から村を見つけたとき、荷車はすでに動き始めていた。
ソレインの影が道を横切ると、村人たちが家の方へ駆けた。兵も顔を上げる。
アドリアンは村から少し離れた空き地へ降りた。
荷車には手を縛られた人がいる。隣で足をかばっている男が、報告にあった怪我人だろう。
思いとどまるよう頼んだ。なのに父はもう人を拘束していた。
ソレインが首を動かした。
〈どうする〉
アドリアンは荷車を見た。
〈止める。あの人たちの話を、ここで聞く〉




