第111話 家臣たちの反発
クラウスが家臣と役人を集めたのは、城の仕事が始まる前だった。
「これからは村人の話も聞いて判断する。役人に説明したことを、逆らったと決めつけるな」
村を担当する年配の役人が尋ねた。
「罰を減らすということでしょうか」
「それだけではない。竜の民も私たちと同じ人間だ。家族があり、暮らしがある。そのつもりで接してほしい」
部屋の空気が変わった。
役人は隣の者を見てから言った。
「王は身分を変えることをお認めになっていません」
「承知している。身分が違うからと事情を聞かずに殴ってよいのか」
「そうは申しません。乱暴な扱いは控えます」
「私が言いたいのは、手を出すなということだけではない」
クラウスは役人を見た。
「村人が何か説明したとき、最初から嘘だと思って聞いていないか」
役人はすぐには答えなかった。
「命令を嫌がる者もおります」
「嫌がる理由は聞いたか」
「毎回、言うことを聞いていては仕事が進みません」
「話を聞かなければ、こちらの命令に無理があったかも分からん」
役人は頭を下げた。納得していないことは、その顔を見れば分かった。
別の家臣が口を開いた。城で記録の整理を任されている若い男だった。
「私たちは、竜の民は野蛮だと教えられてきました。村へ行く者も、用心しているのだと思います」
「おまえは村人と話したことがあるか」
「ありません」
「では、本人を知らないまま恐れているのだな」
若い家臣は口を閉じた。
クラウスは声を抑えた。
「私も報告だけで知ったつもりになっていた。だから確かめたい。おまえにも、村の暮らしを見てきてほしい」
「私が、ですか」
「ああ。何かを命じるためでなく、そこで暮らす者の話を聞くために」
若い家臣はためらったあとでうなずいた。
年配の役人も同行することになった。役人は、城にいる者が一度村を見ただけで何が分かるのかと言いたげだった。
クラウスは二人に念を押した。
「村人を怒鳴ったり、見下す言葉を使ったりするな。言葉遣いにも節度を持て。仕事を続けてよいと約束するのだから、こちらの都合で止めさせるな」
二人は頭を下げた。
*
村へ話が届くと、皆はいい顔をしなかった。
管理者は村長やドランたちに、家臣が訪ねたいと言っていると伝えた。ポルフィラも鍛冶場でその話を聞いた。
「何を調べに来るんだ」
村の男が尋ねた。
「働きぶりを取り締まるためではないそうだ。暮らしを知りたいと」
「そう言って、気に入らないことがあれば罰するんじゃないのか」
管理者は首を振った。
「話したくない者は断っていい。家に招いたり、食事を用意したりする必要もないと、領主様から言われている」
男は黙った。領主がそう言ったと聞いても、言葉どおり信じられるわけではなかった。
ドランが尋ねた。
「こちらが聞きたいことを聞いてもいいのか?」
「構わないそうだ」
「なら、俺は鍛冶場で話す。仕事があるから手は止められんが、それでよければ」
管理者はうなずいた。
村長も口を開いた。
「村の者を集めて迎えることはしない。それぞれの仕事をしていていいのだな?」
「ああ。そのままでいい」
ポルフィラは二人の話を聞いていた。
知ってもらいたいと願ったのは自分だ。けれど、怖いと思う村人を無理に引き合わせていいわけではない。
「会わない人のことを、役人に悪く言われないようにしてほしいです」
管理者はポルフィラを見た。
「それも伝える」
*
家へ戻るとミレアが話を聞いた。
「父さんは話すのね」
「ああ。だが、おまえまで出てこなくていい」
「私はいつもの仕事をしているわ。話しかけられたら、そのとき考える」
ドランはうなずいた。
「無理に相手に合わすことはない」
父は道具の刃を確かめた。
「どんな者が来て、何を話すのか確かめよう」
家臣が来ても村はいつもの仕事を続ける。話すかどうかは一人ずつが決める。
訪問は、そうして受け入れられた。




