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オブシディオン  作者: 空飛ぶワイン
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110/224

第110話 同じ人間

ガルの家へ道具を届けると、母親が食事に誘ってくれた。


「ありがとう。でも、家で待ってるから」

ポルフィラが答えるとガルは道具を受け取った。


「ドランさんにも礼を伝えてくれ」


「うん」

いつものやり取りだった。家族の仕事を手伝い、友達と話す。天馬の民も同じように暮らしているはずなのに、自分たちは野蛮な者だと思われている。

私たちの何を知って、そう思うのだろう。

ポルフィラは家へ戻りながら考えた。


*


森の館でクラウスが王の返答を伝えた。

「ロデリクの命令は認められた。不当な罰は他の領主も改めてよいそうだ。だが竜の民の身分は変えない」


ポルフィラはうなずいた。

「罰が減るのは嬉しいです。でも、私たちを人だと思っていない役人なら、また同じことが起きませんか」


「ああ。命令されたから殴らないだけでは、考えは変わらない」


レオノーラが言った。

「私たちの領地でも、竜の民を人間だと思わない者は多いわ。そこを変えなければ」


テオバルトもうなずいた。

「教科書で野蛮な者だと習い、本人たちを知らずに育つ。城に仕える者も同じだ」


「私たちも家族や友達を大切にしています。そういう暮らしを知ってほしいです」

ポルフィラが言うとクラウスは答えた。


「まず家臣と役人に私から話す。竜の民も私たちと同じ人間であり、蔑んでよい相手ではないと」


「領主様に言われたから、うなずくだけの人もいると思います」


「いるだろう。だから話すだけで終わらせない。村人の事情を聞かずに命令していないか、その後の仕事ぶりも確かめる」


*


テオバルトが続けた。

「家臣にも村の暮らしを知ってもらいたい。村人が何を考え、どう家族を支えているかを、自分で聞く機会が必要だ」


ポルフィラは少し考えた。

「村へ来る人が増えたら、怖がる人もいます。仕事を休んで相手をしろと言われるのも困ります」


「先に村の者と相談する。話したくない者は断ってよい。もてなしもさせない」


「断っても罰されないと、分かるようにしてください」


「ああ。それは私たちが責任を持つ」


レオノーラが言った。

「家族や仕事のことなら、私たちにも身近な話だわ。知らないから怖いと思っていた人も、共通するものに気づくかもしれない」


「でも、役に立つから大切にする、という話にはしたくありません」

ポルフィラは顔を上げた。

「働けない人もいます。その人たちも、ひどい扱いを受けていいわけではないです」


「ええ。同じ人間として大切にする。そのことを伝えるわ」


クラウスが二人を見た。

「村を知ってもらうだけでは足りない。子供に教える者にも話す必要がある」


「そうね」

レオノーラが答えた。

「教科書に載っているという理由だけで、一方的な教育をしないで、教師たちにも竜の民の暮らしを知ってもらいたいわ」


「国の歴史の説明と違う、と反発されるだろう」

テオバルトが言うとクラウスはうなずいた。


「それでも、今生きている者を一度も知らずに、野蛮な相手だと教え続けてよいとは思わない」


すぐに信じてもらえるとは限らない。三人とも、それは分かっていた。


ポルフィラは言った。

「私一人を見て、竜の民は皆こうだとも決めないでください。ほかの村には違う暮らしの人もいます」


「分かった。一人の話だけで分かったつもりにはならない」

クラウスが答えた。


*


三家は、まず自領の家臣と役人へ話すことを決めた。村との相談を進め、天馬の民の教育に携わる者にも声をかける。

王への解放の申し出は取り下げない。領内でも、竜の民への見方を変えるために動く。


レオノーラが言った。

「決まりが変わっても、人々が竜の民を嫌ったままなら暮らしはよくならないわ。解放を受け入れる人を増やしていきましょう」


ポルフィラはうなずいた。


クラウスはリュシエンヌから問い合わせが来たことにも触れた。

「会う返事はした。ただ、何をどこまで話すかは決めていない。まず相手の考えを聞く」


「では、今の取り組みは三家で始めるんですね」


「そうだ」


*


帰り道、ポルフィラはオブシディオンへ話した。

〈領主の方々が、天馬の民の考えを変えるために動くって。私たちも同じ人間だと、知ってもらうんだって〉


〈すぐには変わらないだろうな〉


〈うん。でも、父さんたちを何も知らずに嫌わないでほしい。話す前から、言葉の通じない相手だと決めつけないでほしい〉


〈その願いを伝えたのだな〉


〈伝えたよ〉


村への道が見えてきた。


父も母も友達も、労働力として守られるのではなく、一人の人間として大切にされてほしい。

王の答えは変わっていない。争いへの恐れも消えていない。それでも今日は、三家と一緒に始めることが決まった。

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