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オブシディオン  作者: 空飛ぶワイン
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第103話 話を聞く席

ロデリクは森の館に入ると、クラウスの隣にいるポルフィラを見た。


窓際にはレオノーラも座っている。家臣が下がるとクラウスが紹介した。

「領内の村で暮らしているポルフィラだ。国の始まりを聞いて、私たちへ伝えてくれた」


ロデリクは椅子へ座った。

「私に会いたいと望んだのは君だそうだな」


「はい。昔の話だけでなく、今の村の暮らしも知ってほしかったんです」


「国の始まりを知って、暮らしを変えたいと思ったのか」


「その前からです。家族や友達が、何も悪いことをしていないのに怯えて暮らすのを変えたいと思っていました」

ポルフィラはロデリクを見た。

「昔の話が本当かどうかは、確かめてください。でも、それが分かるまで対応を変える必要はない、と思わないでほしいです」


ロデリクは腕を組んだ。

「君たちが苦しんでいることを、私が知らないと思っているのか」


「知っていても、我慢するしかないと思っておられるかもしれません」

ポルフィラは少し間を置いた。

「王都では、ご自分の領地を理由もなく調べられることに反対されたと聞きました」


「ああ」


「私たちも、家族や村に罰が向くのを恐れています。おかしいと思っても、黙るしかないんです」


ロデリクの指が止まった。

王の前で意見を述べたために、領地へ役人を送られるかもしれない。そのことに自分は異議を唱えた。村人は自分よりはるかに弱い立場で、もっとひどい恐怖を抱えている。


ポルフィラが続けた。

「ロデリク様にも、領内の人たちがそんな扱いを受けてよいのか考えてほしいです」


ロデリクは視線を落とした。

「今まで命令に従わせる側からしか見ていなかったのかもしれん」


ポルフィラは返事を待った。


しばらくして彼が顔を上げた。

「すぐに君の望む答えは出せない。だが、その話は覚えておく」


*


ロデリクはクラウスとレオノーラを見た。

「国の始まりを語った相手を教えてくれ。三家が信じた理由も聞きたい」


ポルフィラは二人へ目を向けた。どこまで話すかは事前に決めてきた。

「エルディオと繋がっていた竜です」


ロデリクの目が見開かれた。

「竜だと?」


「はい。今も生きています。私は会って話を聞きました」


ロデリクはクラウスを見た。

「本気で言っているのか」


レオノーラが答えた。

「私も会ったわ。竜は実在するの」


「昔話ではなかったのか……」

ロデリクは二人の顔を見た。誰も笑ってはいない。


クラウスが言った。

「その証言で、国の始まりを知った。領主の役目を考え直したのは、それが理由だ」


「竜の力があれば王に対抗できると考えたのではないのか」


「竜で王を脅すために申し出たのではない。人々の扱いを改めるのは、我々が果たすべき務めだと考えた」


ロデリクは黙った。

三家が王の前で引かなかった理由は分かった。だが、竜の実在まで聞かされるとは思っていなかった。

「自分の目で見たい」


ポルフィラはうなずいた。

「会ってよいと返事をもらっています」


「竜と言葉を交わせるのか」


「私は話せます。ロデリク様の質問を伝えて、返事をお話しします」


レオノーラが付け加えた。

「竜の声はポルフィラにしか聞こえないの。あなたにも、直接は聞こえないわ」


ロデリクはしばらく考えた。

「では、まず実在するか確かめる。証言を信じるかは、そのあとで考える」


「はい」


「このことは誰にも話さない。三家に味方するかどうかも、まだ決めない」


クラウスがうなずいた。

「それでいい。自分で確かめて判断してほしい」


ポルフィラは少し息を吐いた。


自分の望みは伝えた。次はロデリクが竜を見て話を聞く。そのあとに何を考えるのか、ポルフィラも知りたかった。

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