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オブシディオン  作者: 空飛ぶワイン
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102/230

第102話 始まりを問う者

ロデリクがヴェルディアの城を訪ねてきた。


家臣が下がると、彼はクラウスへ尋ねた。

「なぜ今になって、三家で王に申し出たのだ。王領の村のことは前から知っていたはずだろう」


「ああ。だが最近、国の始まりについて知らなかったことを聞いた。それで自分の務めを考え直した」


クラウスは国の興りを話した。


ロデリクは黙って聞き、話が終わってから尋ねた。

「アズレインも、その一族から分かれたのか」


「そう聞いている」


「そんな話は、うちには伝わっていない」


「私たちも知らなかった。祖先が領地を任されたのは、領民の話を聞いて争いを収めるためだったそうだ」


ロデリクはクラウスを見た。

領地は領主の座とともに引き継いだものだった。誰をどこへ置き、何をさせるかを決めるのも当然の権利だと思っていた。

「その話を聞いて、竜の民の扱いを改めるのも領主の務めだと考えたのか」


「そうだ。これまでは王が認める範囲で改善してきた。だが、国の決まりが人を苦しめているなら、その決まりを変えるよう求めるべきだと思った」


ロデリクは窓へ顔を向けた。自分の領内にも竜の民の村がある。そこで暮らす人々を、国の始まりと結びつけて考えたことはなかった。

「その話は誰から聞いた」


「今ここでは名を明かせない。相手にも確かめる必要がある」


ロデリクは顔を戻した。

「名も聞けない相手の話を信じろと言うのか」


「無理に信じてもらうつもりはない。三家が動いた理由を聞かれたから答えた」


「分かった。だが、誰が何を知っていて語ったのかは確かめたい」


クラウスはうなずいた。

「どこまで話せるか相談して返事をする」


ロデリクは少し考えてから言った。

「今日聞いたことは、今は王へ伝えない。先に話の出所を確かめる」


「ああ」


「まだ三家に賛成したわけではないぞ」


「分かっている。確かめてから判断してくれ」


ロデリクは席を立った。

ユリウスに言われて王へ賛成するつもりはなかった。だが三家の言うことも、ただ受け入れるわけにはいかない。知らなかった過去を、まず自分で確かめたかった。


*


知らせを受けたポルフィラは森の館へ向かった。


クラウスとレオノーラが待っていた。ロデリクとのやり取りを聞くと、ポルフィラはうなずいた。

「話をした相手に会って、確かめたいんですね」


「ああ。竜のことはまだ伝えていない」

クラウスが答えた。


レオノーラがポルフィラへ尋ねた。

「どう伝えたらよいと思う?」


ポルフィラは少し考えた。

オブシディオンを見れば、竜がいることは分かる。けれど国の始まりの話より、竜の脅威を気にするかもしれない。

「先に、私がロデリク様と会いたいです」


「何を話すつもりだ」


「私が国の始まりを直接聞いたことと、村の暮らしを変えたいと思っていることです。オブシディオンと会う前に、私の話を聞いてほしいんです」


クラウスはうなずいた。

「この館で会えるようにしよう。私の領内で暮らす者の話を聞く場として招く」


レオノーラが続けた。

「あなたの家族についても尋ねるかもしれないわ」


「村で育ったことは話します。生みの家族や一族のことは話しません」


「それでいいわ。竜の存在を伝えることと、あなたの出自を明かすことは別だから」


ポルフィラは二人を見た。

「ロデリク様が竜に会いたいと言ったら、オブシディオンにも確かめます」


「ええ。こちらだけで対面を約束しないようにしましょう」

レオノーラが答えた。


誰から聞いたのか疑うのは当然だと、ポルフィラは思った。自分も相手を確かめ、話を聞いて少しずつ信じられるようになったのだから。

ロデリクにも、自分で確かめて考えて欲しかった。


*


村へ帰る道で、ポルフィラはオブシディオンへ呼びかけた。

〈ロデリクという領主が、国の始まりを誰が話したのか知りたがっているの〉


〈私のことを教えるのか〉


〈先に私が会って話す。そのとき、あなたから聞いたと伝えてもいい?〉


〈よい〉


〈会いたいと言われたら、会ってもらえる?〉


〈話を聞きたいのであれば、会おう〉


ポルフィラは息を吐いた。

〈ありがとう。相手にも、会ってから自分で考えてほしいと伝えるね〉


〈ああ〉


道の先に村の屋根が見えてきた。畑から帰る人々の声がする。


ポルフィラはロデリクへ何を話すか考えた。

昔の歴史だけではなく、今の村で生きる自分の言葉を伝えよう。家族や友達を思って抱いてきた願いを、領主にも聞いてほしかった。

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