第七話 七つの星
忘れられた聖域の最上部。
世界の始まりの場所。
リアンは第七の星核へ手を伸ばした。
その輝きは温かかった。
優しく。
どこか懐かしい。
まるで全ての命を見守る星空そのものだった。
「私は──」
リアンは静かに目を閉じる。
アストラルが見せた世界。
ゼルファードの願い。
仲間たちとの旅。
故郷。
出会った人々。
全てが脳裏を駆け巡った。
世界を維持する。
それは安全だ。
終焉は防がれる。
だが人々は永遠に檻の中だ。
世界を解放する。
それは自由だ。
だが終焉が流れ込み、多くの命が失われるかもしれない。
どちらも選べなかった。
どちらも正しい。
どちらも間違っている。
「だったら」
リアンはゆっくり顔を上げる。
「新しい道を作る」
アストラルの瞳が見開かれた。
『第三の道か』
「うん」
リアンは微笑む。
「最初からある答えを選ぶんじゃなくて」
「自分で答えを探す」
それが彼女だった。
迷いながら。
悩みながら。
それでも前へ進む。
アストラルは静かに笑った。
どこか嬉しそうだった。
『なるほど』
『だからお前だったのか』
そして一歩下がる。
『ならば受け取れ』
『最後の星を』
第七の星核が輝いた。
七色の光。
蒼。
紅。
白。
金。
銀。
紫。
そして透明な光。
それらが一つになりリアンへ流れ込む。
轟音。
世界が震えた。
七つの星核。
全てが共鳴する。
リアンの左手の紋章が完成した。
七つの星。
完全な継承者の証。
その瞬間。
彼女は感じた。
世界全体の鼓動を。
人々の声を。
星々の願いを。
そして現実へ戻る。
忘れられた聖域。
神殿最上部。
リアンはゆっくり目を開く。
周囲を眩い光が包んでいた。
「リアン!」
アルトの声。
視線を向ける。
仲間たちがいた。
皆傷だらけだ。
エリシアも。
サラも。
ノアも。
ヴァルドも。
そして。
ゼルファードも。
しかし状況は最悪だった。
神殿の上空。
巨大な終焉の門が完成しつつある。
レオスがその中心に立っていた。
黒い翼。
黒い瞳。
もはや人の姿ではない。
「遅かったですね」
レオスが笑う。
「ですがもう終わりです」
空が裂ける。
闇が溢れる。
世界中の空に亀裂が広がっていく。
レオスが両腕を広げた。
「終焉よ」
狂気に満ちた声だった。
「この世界を解放しろ」
その時。
リアンが前へ出た。
「させない」
静かな声。
しかし力強い。
レオスの笑みが消えた。
「継承者」
七つの星が空へ舞い上がる。
世界中の夜空が輝く。
まるで星々が集まってくるようだった。
アルトたちは息を呑む。
ゼルファードも目を見開いていた。
「終わらせない」
リアンは空を見上げる。
「世界も」
「未来も」
「誰かの願いも」
七つの星核が円を描く。
巨大な光の輪が生まれる。
終焉の門を上回るほどの光。
レオスの表情が初めて歪んだ。
「まさか」
リアンは右手を掲げる。
その瞳には決意が宿っていた。
「第三の道を作る」
光と闇が激突する。
世界を揺るがす最後の戦い。
継承者リアン・セレスティアと、
終焉に魅入られたレオス。
全ての運命を賭けた最終決戦が始まった。
第七話了




