第六話 世界の真実
光だった。
どこまでも続く白い光。
上も下も分からない。
時間も空間も存在しない世界。
リアンは一人立っていた。
「ここは……」
『始まりの場所だ』
声が響く。
振り返ると、そこには星王アストラルがいた。
だが以前とは違う。
その姿ははっきりとしている。
まるで本当に生きているようだった。
「アストラル」
『よく来た』
星王は静かに微笑む。
『第七の星核へ辿り着いた最後の継承者よ』
リアンは真っ直ぐ彼を見た。
聞きたいことが山ほどある。
「教えて」
その声は震えていた。
「世界って何?」
「星核って何?」
「ゼルファードは何をしようとしてるの?」
アストラルは目を閉じた。
長い沈黙。
やがて静かに語り始める。
『この世界は滅んだ』
リアンは息を呑む。
「え?」
『正確には、一度滅びかけた』
光が広がる。
映像が現れた。
知らない世界。
巨大な都市。
空を飛ぶ船。
無数の人々。
豊かな文明。
『今から六千年前』
『人類は終焉と呼ばれる存在を発見した』
映像の空が裂ける。
漆黒の闇。
世界を飲み込む巨大な亀裂。
『終焉は災害ではない』
『生命でもない』
『世界を無へ戻そうとする法則そのものだ』
リアンの背筋が寒くなる。
『人類は敗北した』
都市が崩壊する。
大陸が沈む。
空が砕ける。
無数の命が消えていく。
『だから我々は選んだ』
映像の中心に若き日のアストラルとゼルファードが立っていた。
『世界を守るため』
『世界そのものを封印することを』
七つの星が現れる。
それが星核だった。
『星核は鍵』
『結界』
『封印』
『そして檻』
「檻……」
リアンは呟く。
ルシアの言葉。
ゼルファードの言葉。
全てが繋がる。
『終焉は外にいる』
アストラルが言った。
『星核は世界を守っている』
『だが同時に閉じ込めてもいる』
映像が変わる。
七つの星核に囲まれた世界。
その外に広がる無限の闇。
『六千年間』
『人々は守られてきた』
『しかし代償もあった』
「ゼルファードは?」
リアンが尋ねる。
アストラルの瞳に悲しみが浮かぶ。
『彼は私の友だった』
映像の中で若き二人が笑っている。
『誰よりも優しく』
『誰よりも人を愛していた』
『だが彼は耐えられなかった』
映像が変わる。
封印された世界。
苦しむ人々。
終わらない争い。
繰り返される悲劇。
『世界を守るためとはいえ』
『人類を永遠の檻に閉じ込めることを』
リアンは静かに聞いていた。
『彼は解放を望んだ』
『私は存続を望んだ』
『そして我々は別れた』
アストラルは目を伏せる。
『どちらも正しかった』
『どちらも間違っていた』
「じゃあレオスは?」
その瞬間。
アストラルの表情が険しくなった。
『レオスは違う』
空間が震える。
『彼は絶望した』
『そして終焉へ魅入られた』
『解放ではない』
『破滅を望んでいる』
リアンは拳を握った。
今なら分かる。
ゼルファードは敵ではない。
少なくともレオスとは違う。
だが。
それでも。
「私はどうすればいいの?」
アストラルは静かに第七の星核を見上げた。
『選択しろ』
世界が輝く。
第七の星核が降りてくる。
『世界を維持するか』
『世界を解放するか』
『あるいは第三の道を見つけるか』
リアンは目を見開く。
第三の道。
そんなものがあるのか。
その瞬間。
遠くから声が聞こえた。
アルトの声。
エリシアの声。
サラの声。
仲間たちが戦っている。
現実世界で。
今も。
アストラルが微笑んだ。
『答えは既にお前の中にある』
『継承者よ』
『いや』
その瞳が優しく細められる。
『リアン・セレスティア』
第七の星核が彼女の前へ降り立つ。
眩い光。
温かな輝き。
世界そのものの鼓動。
リアンはゆっくり手を伸ばした。
「私は──」
光が世界を包み込む。
そして。
第七の星核が継承者を選んだ。
第六話了




