第五話 最後の星核
忘れられた聖域の空が震えていた。
七本の塔から放たれた蒼い光は一つに集まり、神殿上空へ巨大な光の柱を形成している。
その中心に浮かぶ結晶。
第七の星核。
世界最後の星核。
リアンの六つの紋章は激しく共鳴していた。
「これが……」
思わず息を呑む。
今までの星核とは次元が違った。
まるで世界そのものが形を持ったかのような存在感。
熱い。
苦しい。
そして、どこか懐かしい。
しかし。
レオスは第七の星核を見つめながら笑っていた。
「美しい」
その瞳には狂気が宿っている。
「ようやく辿り着きました」
終焉の力が黒い嵐となって渦巻く。
神殿の石畳が砕ける。
空間が悲鳴を上げる。
リアンは思わず一歩後退した。
強い。
これまで戦ったどんな敵よりも。
レオスは既に人間の領域を超えていた。
「レオス」
ゼルファードが静かに呼ぶ。
「最後に問う」
黄金の瞳がまっすぐ向けられる。
「引き返せ」
だがレオスは首を横に振った。
「遅すぎます」
冷たい声だった。
「あなたは決断できなかった」
「星王も決断できなかった」
「だから世界は歪んだまま続いた」
終焉の門がさらに広がる。
空が裂けていく。
「私は終わらせる」
レオスが手を掲げた。
「全てを」
その瞬間。
第七の星核へ黒い光が伸びた。
「だめ!」
リアンが飛び出す。
六つの星核が輝いた。
蒼い光が放たれる。
しかし。
間に合わない。
レオスの闇が星核へ届こうとした。
その時。
黒い閃光が走る。
轟音。
闇が吹き飛ばされた。
「ヴァルド!」
黒剣の将軍だった。
巨大な一撃を放ち、レオスの魔力をかき消したのだ。
だが代償も大きい。
ヴァルドの右腕から血が流れていた。
「邪魔です」
レオスが呟く。
次の瞬間。
無数の魔法陣が現れた。
数百。
いや千を超える。
聖域の空が紫色に埋め尽くされていく。
「全員下がれ!」
ゼルファードが叫んだ。
皇帝が叫ぶ姿を、リアンは初めて見た。
轟ッ!!
魔法が解放される。
世界そのものを焼き払うような光の奔流。
だが。
ゼルファードは前へ出た。
黄金の魔法陣が展開される。
七重の障壁。
神話級の防御術。
光と闇が正面から衝突した。
聖域全体が揺れる。
島が軋む。
空が裂ける。
それでも皇帝は退かなかった。
「リアン!」
ゼルファードが叫ぶ。
全員が驚いた。
リアンへ向かって叫んだのだ。
「第七の星核へ行け!」
「でも!」
「今しかない!」
黄金の瞳が揺れる。
「世界を選べるのはお前だけだ!」
リアンは息を呑んだ。
アルトを見る。
エリシアを見る。
ノアを見る。
サラを見る。
アイリスを見る。
全員が頷いた。
「行け!」
アルトが叫ぶ。
「私たちが止める!」
エリシアが続く。
サラも笑った。
「こんなところで終わる気ないわよ」
リアンは走った。
神殿の階段を駆け上がる。
第七の星核へ。
最後の光へ。
背後では激戦が続いている。
爆発。
剣戟。
咆哮。
だが振り返らない。
今は前だけを見る。
そして。
神殿最上部。
第七の星核の前へ辿り着いた。
光が優しく彼女を包む。
『継承者』
声が響いた。
聞き覚えがある。
星王アストラルだった。
そして。
今まで出会った全ての守護者たちの声が重なる。
『最後の選択の時だ』
世界が白く染まり始める。
リアンは光へ手を伸ばした。
その瞬間。
第七の星核が眩く輝いた。
世界の真実が。
ついにその姿を現そうとしていた。
第五話了




