↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星詠みのリアン  作者: 雨月 玲
第三部 闇帝国の侵攻
PR
32/39

第四話 忘れられた聖域


 白銀の守護竜シルヴァは夜空を駆けていた。

 巨大な翼が雲を切り裂く。

 はるか下には山脈や森が流れるように過ぎ去っていく。

 リアンは竜の背で立ち上がり、遠い北の空を見つめていた。

 そこには黒天城が見える。

 皇帝ゼルファードの空中要塞。

 巨大な黒い影が静かに聖域へ向かっていた。

「思ったより近い」

 アルトが険しい顔で言った。

 ヴァルドが頷く。

「あのままなら先に到着する」

「急げないの?」

 エリシアがアイリスへ尋ねる。

 アイリスはシルヴァの首を撫でた。

「これでも全力」

「でも間に合う」

 その言葉だけは断言した。


 やがて夜明けが近付く。

 その時だった。

 リアンの六つの星が一斉に輝き始めた。

「!」

 胸の奥が熱い。

 苦しいほどの共鳴。

 第七の星核だ。

 間違いなく近い。

「見て!」

 サラが前方を指差した。

 全員が顔を上げる。

 そして息を呑んだ。


 空の果て。

 巨大な光の輪が浮かんでいた。

 山より大きい。

 街より大きい。

 世界そのものの門のようだった。

 その中心に島がある。

 宙に浮く大陸。

 神殿群。

 滝。

 森林。

 まるで神話の世界そのもの。

「忘れられた聖域……」

 ノアが震える声で呟いた。

 何千年も伝説として語られてきた場所。

 世界の始まりの地。

 ついにその姿を現したのだった。


 しかし。

 聖域の様子は異常だった。

 各地で爆発が起きている。

 黒い煙。

 崩壊した神殿。

 そして。

 空には終焉の門が多数開いていた。

「もう始まってる!」

 リアンが叫ぶ。

 アイリスの表情が曇る。

「遅かった……」


 シルヴァが聖域へ降下する。

 巨大な広場へ着地した瞬間。

 全員が飛び降りた。

 足元の石畳には古代文字が刻まれている。

 だが今はそれどころではない。

 遠くで剣戟の音が響いていた。

 戦っている者がいる。

「行こう!」

 リアンが駆け出した。

 仲間たちも続く。


 広場を抜けた先。

 そこには巨大な神殿があった。

 七本の塔が天へ伸びている。

 そして神殿前の階段で。

 二人の男が対峙していた。

「皇帝陛下……!」

 ヴァルドが息を呑む。

 そこにいたのはゼルファードだった。

 黒い外套。

 黄金の瞳。

 相変わらず圧倒的な存在感。

 だが。

 彼の前に立つ人物を見てリアンは驚いた。

「レオス!」

 銀髪の魔導士。

 だが以前とは別人だった。

 全身を黒い紋様が覆っている。

 瞳は金色ではなく闇色に染まっていた。

 周囲には終焉の力が渦巻いている。

 まるで人間ではない。


 ゼルファードが静かに言った。

「戻れ、レオス」

 その声には怒りより悲しみがあった。

 しかしレオスは笑う。

「今さらですか」

「皇帝陛下」

 その笑みは狂気に近かった。

「私はようやく辿り着いたのです」

 終焉の門が背後で開く。

 凄まじい闇。

 聖域全体が震えた。

「この世界は間違っている」

 レオスが叫ぶ。

「だから終わらせる」


 リアンは息を呑んだ。

 その言葉。

 どこかで聞いた。

 若き日のゼルファードが星王へ言っていた言葉と似ている。

 だが何かが違う。

 ゼルファードはレオスを見つめていた。

「違う」

 皇帝が静かに答える。

「私は創り直そうとした」

「だが貴様は壊そうとしている」

 レオスの笑みが消える。

 空気が変わった。


 その瞬間。

 神殿全体が蒼く輝いた。

 轟音。

 七本の塔が一斉に光る。

 リアンの六つの星も共鳴する。

 そして。

 神殿最上部から一つの光が現れた。

 眩い輝き。

 世界中の星々を集めたような美しさ。

 第七の星核だった。

 ついに。

 最後の星核が。

 継承者の目の前へ姿を現したのである。

第四話了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。