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星詠みのリアン  作者: 雨月 玲
第三部 闇帝国の侵攻
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第三話 皇帝の進軍


 夜の雪原に冷たい風が吹き抜ける。

 リアンたちは言葉を失っていた。

 傷だらけのヴァルドが立っている。

 それだけでも異常だった。

 これまで無敵に見えた男が満身創痍だったのだ。

「誰にやられたの?」

 リアンが尋ねる。

 ヴァルドはしばらく沈黙していた。

 やがて低く答える。

「レオスだ」

 全員の顔色が変わる。

「あり得ない」

 アルトが即座に言った。

「レオスが将軍のお前に勝てるのか」

「以前なら無理だった」

 ヴァルドは拳を握る。

「だが今は違う」

 その瞳に初めて警戒の色が見えた。

「奴は終焉の力を取り込んだ」


 静寂が落ちた。

 アイリスも表情を曇らせる。

「やっぱり……」

「知ってるの?」

 リアンが振り返る。

 少女は頷いた。

「終焉は力じゃない」

「存在そのもの」

 意味がよく分からなかった。

 しかし危険だということだけは伝わる。

「レオスはそれを解放しようとしてる」

 アイリスは空を見上げた。

 黒い亀裂が広がっている。

「世界の外側から」


 ノアが震える声で言った。

「世界の外側って何なんです?」

 アイリスは静かに答える。

「今の世界は七つの星核によって守られている」

「でも同時に閉じられている」

 星王アストラル。

 ゼルファード。

 ルシア。

 皆が言っていた話だ。

 リアンは拳を握る。

「閉じられている理由は?」

「それを知るために」

 アイリスの蒼い瞳が輝く。

「聖域へ行くの」


 その時。

 突然。

 空が震えた。

 ゴォォォォォォォ―――。

 全員が顔を上げる。

 信じられない光景だった。

 遥か北の空。

 巨大な黒い城が浮かび上がっていた。

「なに……あれ」

 エリシアが息を呑む。

 城だった。

 空中要塞。

 闇に包まれた巨大な城が雲の上を進んでいる。

 ノアの声が震える。

「黒天城……」

「文献にしか存在しないはずの」

 ヴァルドが呟く。

「皇帝陛下の旗艦だ」


 リアンは息を止めた。

 要塞は聖域の方向へ向かっている。

 間違いない。

 ゼルファードも第七の星核を目指している。

「急ごう!」

 リアンが叫んだ。

「追い付かなきゃ!」

 アイリスが首を振る。

「普通には無理」

「え?」

「徒歩では間に合わない」

 確かにその通りだった。

 聖域まではまだ遠い。

 黒天城の方が圧倒的に速い。

 その時。

 アイリスが小さく微笑んだ。

「でも方法はある」


 少女は雪原の中央へ歩いていく。

 そして両手を広げた。

 蒼い光が大地へ広がる。

 次の瞬間。

 雪原全体が揺れ始めた。

「なに!?」

 サラが後退する。

 すると。

 地面の下から巨大な影が現れた。

 白銀の鱗。

 長い身体。

 美しい翼。

 全長百メートルを超える巨大な竜だった。

「竜!?」

 リアンが目を見開く。

 竜は静かに頭を下げる。

 アイリスがその首を撫でた。

「この子はシルヴァ」

「聖域の守護竜」

 竜は低く鳴いた。

 敵意はない。

 どこか優しい瞳をしていた。

「乗って」

 アイリスが言う。

「聖域まで連れて行ってくれる」


 アルトが苦笑する。

「最近は驚くことに慣れたと思ってたんだがな」

「私も」

 エリシアが頷く。

 ノアは目を輝かせていた。

「伝説の天空竜ですよ!?」

「今そこじゃない」

 サラが突っ込む。

 だが少しだけ空気が和らいだ。


 リアンは竜を見上げる。

 そして最後にヴァルドを見る。

「一緒に来る?」

 少しの沈黙。

 ヴァルドは空の黒天城を見上げた。

 やがて静かに言う。

「ああ」

 短い返事だった。

 だがその声には強い決意があった。

「俺も終わらせる」


 こうして。

 リアン。

 アルト。

 エリシア。

 ノア。

 サラ。

 アイリス。

 そしてヴァルド。

 七人は白銀の守護竜シルヴァの背へ乗り込む。

 巨大な翼が広がった。

 雪が舞う。

 竜が咆哮する。

 そして。

 月明かりの空へ飛び立った。

 目指すは忘れられた聖域。

 第七の星核。

 世界の真実。

 そして皇帝ゼルファード。

 全ての運命が交わる場所へ。

第三話了

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